ウェーブは天敵「スズメバチ」への威嚇行動
この驚くべきウェーブを作り出しているのは、主に東南アジアを生息地とする「オオミツバチ(学名: Apis dorsata)」です。
オオミツバチはその名の通り、日本にいるような一般的なミツバチよりも一回り大きく、それでいてスズメバチに匹敵するほど獰猛な性格をしています。
また彼らが作る巣も規格外で、大きなものだと幅2メートル、高さ1.5メートルにも達するのです。
さらに他のミツバチの巣と大きく違うのは、巣を覆う外壁のようなものがなく、中身が剥き出しになっていることです。
そのため、一堂に群がった何千匹ものオオミツバチが外に向かって思いっきり丸出しになっています。
丸出しということは、天敵や何らかの環境刺激から物理的に守られていないことを意味します。
ではオオミツバチはどうやって巣を守っているのかというと、その一番の方法がウェーブなのです。
オオミツバチのウェーブは専門的には「揺らぎ(shimmering)」と呼ばれています。
特にオオミツバチの最大の天敵は、彼らよりも凶暴で攻撃力の高いスズメバチです。
これまでの研究で、スズメバチが巣を襲撃しようと接近してきたときに、オオミツバチはウェーブを作り出して威嚇することがわかっています(Journal of Experimental Biology, 2022)。
1回のウェーブはわずか数百ミリ秒しか続かない非常に短いものですが、オオミツバチたちはこれを何度も繰り返すことで、まるで巣全体が巨大な生き物のごとく波打っているように見せるのです。
実際に実験観察では、オオミツバチのウェーブに直面したスズメバチはそれに困惑して、襲撃することなく進路を変えることが確認されています。
では、オオミツバチたちはどのようにしてウェーブを作り出しているのでしょうか?