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Credit:Generated by OpenAI’s DALL·E,ナゾロジー編集部
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蝶が「第2の頭」を進化させた理由とは?

2025.07.21 23:00:54 Monday

蝶の中には、一瞬「どっちが頭でどっちがお尻かわからない」ような種がいます。

これは翅(はね)の先っぽを頭と同じような形にしているためです。

つまりは、敵の目を欺くために進化させた“第二の頭”といえます。

とくにシジミチョウ科(学名:Lycaenidae)の仲間には、翅のほうに触角のような模様や目玉のような斑点、そして頭部を思わせる輪郭を備えた種が数多く存在します。

それはまるで、捕食者をだますための精巧なトリックアートです。

では、この「第二の頭」はどのようにして進化し、どんなメリットをもたらしてきたのでしょうか?

研究の詳細はインド科学教育研究所ティルヴァナンタプラム校(IISER)により、2025年7月9日付で科学雑誌『Proceedings of the Royal Society B』に掲載されています。

Many Butterflies Have a Second ‘Head’ – This Could Be Why https://www.sciencealert.com/many-butterflies-have-a-second-head-this-could-be-why
Correlated evolution of multiple traits gives butterflies a false head https://doi.org/10.1098/rspb.2025.0900

頭がふたつ?偽の頭を作るチョウの進化戦略

自然界では「命がけの騙し合い」が日常です。

捕食者に狙われる小動物たちは、ただ逃げるだけでなく、ときに相手の目を欺く“偽装戦略”をとります。

シジミチョウ科の多くのチョウが持つ「偽の頭(false heads)」もその一例です。

この“偽の頭”は、体の尾側にある模様や構造によって構成されています。

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シジミチョウの一種(捕食者からしたら一瞬どっちが頭かわからなくなりそう)/ Credit: ja.wikipedia

たとえば、

・触角のような形(偽触角)

・目玉に見える斑点

・頭部のような輪郭

・色彩のコントラスト

・線が一点に集まるような収束線

といった特徴が組み合わさることで、あたかも“後ろにもうひとつの頭がある”かのように見えるのです。

これにより、捕食者は頭だと思って狙った場所が実は後翅だった…という「見事な肩透かし」を食らうことになります。

この戦略のすごいところは、命にかかわる本物の頭を含む胴体部分を守りながら、羽の一部が裂けるだけで済むという点です。

たとえ襲われたとしても致命傷を避けられるため、生き延びて子孫を残すチャンスが格段に上がるのです。

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