
・クモに寄生して「ゾンビ化」させる新種のハチがエクアドルで発見された
・ゾンビ化したクモは、操られているかのごとくハチの幼虫のための「繭」を作り上げる
・このようなハチの寄生行動には他の例もあるが、これほどまでに複雑な行動をさせる例が観察されたのは初めてのこと
南米エクアドルのアマゾンの奥地にて、とてもホラーなハチの新種が発見されました。なんとそのハチは、自らの生存戦略のために近くに生息するクモを、意のままに操ることができる「ゾンビ」に変えてしまうというのです。
Behavioural modification of a social spider by aparasitoid wasp
ブリティッシュコロンビア大学の研究者らが発見したのは、Zatypota属の新種のハチ。そして、不幸にもゾンビに変えられてしまうのは「社会性クモ」としても知られるムレアシブトヒメグモです。彼らは大きなコロニーの中で組織を作って暮らしており、餌の捕獲や子育てを共同で行う珍しい種。バスケットゴール型の巣を作ることでも有名です。
研究者はあるときその巣の中で、不自然な動きをする「幼虫に寄生されたクモ」を発見します。そのクモはコロニーから距離をとり、シルクや葉でできた密度の濃い、隔離された別の「繭」を作っていました。そして研究者がそれを研究室へと持ち帰って中を確認してみたところ、驚くべきことにそこには「ハチ」がいたのです。
そのハチのおぞましい行為は、以下のプロセスを経て行われます。まず、メスのハチがクモの腹部に卵を産み落とします。そして卵が孵化すると幼虫が顔を出し、「ホスト」であるクモにぴったりと張り付きます。そこで幼虫はホストの体液を栄養として成長し、ゆっくりと体を乗っ取っていきます。そうして「ゾンビ化」したクモは、死に絶える前に幼虫のための「繭」を作り、幼虫は出来上がった繭に守られて羽化を待つことになるのです。

実は、ハチがクモに寄生して行動を変えてしまう例は他にもありますが、研究を行ったサマンサ・シュトラウス氏によれば、この新種の例は「とてもハードコア」であるとのこと。このハチほど完全にクモの体をハイジャックして、寄生されていなければ絶対しないであろう行動をさせてしまう例は他にないといいます。
どうしてこのようなことが可能であるのかは分かっていませんが、科学者たちは、ハチがホルモンを注入することにより、クモが「別のライフステージにいる」ということを意識させているのではないかと考えています。また、コロニーが大きいほど寄生バチのターゲットになりやすいことも分かっており、このハチが集団で行動する「社会性クモ」を狙っているのは、「ホスト」や「食べ物」が安定して供給される可能性が高いからだと考えられます。
体を乗っ取るだけでなく、相手を自らの奴隷に変えてしまうこのえげつない行為。虫や動物の世界には、まだまだ私たちの知らない残酷かつ興味深い事実が眠っているようです。
via: University of British Columbia / translated & text by なかしー




























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