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ついに超高エネルギー宇宙線の謎が解けたかもしれない

2025.07.14 17:05:49 Monday

宇宙から降り注ぐ超高エネルギーの宇宙線はしばしばニュースに上がります。

これまではそんな超高エネルギー宇宙線のほとんどは陽子(水素原子核)だと考えられていました。

しかしその常識が裏返る時が来たようです。

国際共同研究チームによって行われた最新の研究により、宇宙の謎の一つである超高エネルギー宇宙線には陽子以外のより重い元素がかなりの割合で含まれていることが明らかになりました。

研究では南極の氷の下に埋設されたニュートリノ観測施設IceCube(アイスキューブ)で約13年間にわたって得られたデータの解析が行われており、これまで広く支持されてきた「宇宙線はほぼすべて陽子である」というモデルは95%という高い信頼度で否定されたのです。

100年以上科学者たちを悩ませてきた宇宙線の正体に、ニュートリノという新たな視点で光が当てられたこの研究成果は、宇宙物理学にどのような影響をもたらすのでしょうか?

研究内容の詳細は『Physical Review Letters』にて発表予定です。

Search for extremely-high-energy neutrinos and first constraints on the ultrahigh-energy cosmic-ray proton fraction with IceCube https://journals.aps.org/prl/accepted/22071Y43Off1a48fe53f6e56a9c40ed30d232fa87

宇宙の謎に迫る鍵は「まっすぐ飛ぶ粒子」ニュートリノだった

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夜空を見上げて星々の美しさや宇宙の広大さに思いを馳せたことは誰しもあるでしょう。

しかし実はその宇宙から、毎秒何十億という目に見えない粒子が私たちの体を貫いていることを知っていますか?

これらの粒子は「宇宙線」と呼ばれ、中でも最もエネルギーが高い「超高エネルギー宇宙線(UHECR)」は、想像を絶する力を秘めています。

そのエネルギーはあまりにも巨大で、たった一粒子で、私たちが普段目にしている可視光の約100京倍(10¹⁸倍)以上ものエネルギーに達することがあります。

これは例えるなら、原子一粒がプロ野球選手が全力で投げるボールと同じエネルギーを持つことに匹敵するほど驚異的なものです。

しかし驚くべきことに、この途方もない宇宙線がいったい宇宙のどのような場所で生み出され、どのような成分から構成されているのか、現代の科学者たちもまだ完全には解明できていないのです。

超高エネルギー宇宙線が「陽子(水素の原子核)」で構成されているのか、それとも鉄のような「重い原子核」で構成されているのかをめぐっては、40年以上にわたり科学者たちの間で活発な議論が続けられてきました。

なぜこの論争が長く続いてきたかというと、宇宙線が地球にたどり着くまでの間に、多くの要因でその正体が曖昧になるからです。

まず宇宙線の多くは陽子のような電荷を持つ粒子であるため、宇宙空間に存在する磁場によって軌道を大きく曲げられてしまいます。

このため、元の発生源の位置を特定することが難しくなります。

さらに、地球に到達した宇宙線が大気と衝突すると、数多くの粒子が「空気シャワー」と呼ばれる現象を起こします。

地上の望遠鏡はこの空気シャワーを観測することで元の宇宙線の種類を推定しようとしていますが、空気中で起こる粒子反応は複雑で、その理論モデルには多くの不確実性が含まれています。

そのため、ある実験(南米アルゼンチンのピエール・オージェ観測所)は「鉄のような重い原子核が多い」という結果を示唆する一方、別の実験(米国ユタ州のテレスコープアレイ)は「陽子などの軽い原子核が主流である」という結果を示唆するなど、長年にわたり結果が一致しない状況が続いてきました。

こうした中、科学者たちが新たに注目したのが「ニュートリノ」という特別な素粒子です。

ニュートリノは宇宙を「直進」できる唯一のメッセンジャーと言われています。

これはニュートリノが電荷を持たず、物質や宇宙の磁場にほとんど影響を受けない性質を持っているためです。

つまり宇宙の果てで起こった現象から生じたニュートリノは、その現場の情報をほぼ完全な形で地球まで届けてくれるのです。

この性質を利用し、科学者たちは宇宙線の発生源や構成要素に関する手がかりを得ようとしました。

宇宙空間を高速で飛び回る宇宙線(高エネルギーの粒子)が、地球に向かってやって来る途中、宇宙空間を満たしているある特別な光と頻繁に衝突します。

その特別な光とは、「宇宙マイクロ波背景放射」と呼ばれるもので、ビッグバン(宇宙の誕生)直後に宇宙全体を埋め尽くしていた光が、現在まで冷えて残ったものです。

言わば、宇宙が誕生した頃の「名残りの光」が宇宙中を今も飛び交っているというわけです。

この宇宙マイクロ波背景放射と超高エネルギー宇宙線が衝突すると、「宇宙生成ニュートリノ(コスモジェニック・ニュートリノ)」という特殊なニュートリノが生成されることが理論的に予測されています。特に、宇宙線の主成分が比較的軽い陽子(水素の原子核)である場合には、この現象が頻繁に起こりやすくなります。

しかも、この陽子が地球から遠く離れた数十億光年以上も先の宇宙で生まれたものだとすれば、その長い旅路の途中で何度も背景放射と衝突を繰り返し、大量の宇宙生成ニュートリノを生み出して地球に到達するはずなのです。

つまり、もし超高エネルギー宇宙線の正体が陽子主体であるのなら、地球で観測される宇宙生成ニュートリノの量はかなり多くなると期待されていました。

ところが、もし宇宙線が陽子よりも重い原子核(例えばヘリウムや鉄など)で構成されていた場合には、話は大きく変わります。

こうした重い原子核は背景放射と衝突するときに、「ニュートリノを生成する反応」とは異なる「核が分解される反応」を起こしやすくなり、結果としてニュートリノの生成効率が大幅に下がってしまうのです。

また仮に宇宙線が陽子主体であったとしても、その発生源が地球から比較的近い(例えば数億光年程度)場合は、背景放射との衝突回数が少なく、ニュートリノの生成量も限定的になります。

つまり、宇宙生成ニュートリノを観測することができれば、超高エネルギー宇宙線の成分が陽子主体であるかそうでないかを区別することが可能なわけです。

このような背景から、南極に設置されたニュートリノ望遠鏡「IceCube」が、宇宙線の正体を突き止める重要な実験として大きな期待を集めました。

果たして、このニュートリノ望遠鏡はどのような答えをもたらしたのでしょうか――?

次ページ「100年の宇宙の謎」がついに解明?IceCubeが突き止めた超高エネルギー宇宙線の意外な正体

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