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Credit: canva
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ミツバチは女王に「クーデター」を起こし、政権交代を繰り返していた

2025.10.28 12:00:00 Tuesday

ミツバチの巣には、数万匹という単位のコロニーが形成されています。

そこでは数万匹の働き蜂たちが絶えず働き、巣を守り、そしてひときわ大きな存在感を放つ「女王蜂」が君臨しています。

女王蜂といえば、コロニーの中心、絶対的なリーダーとしてイメージされますが、実はその権力の座も永遠ではありません。

ときに働き蜂たちは、女王蜂に対してクーデターを起こし、新しい女王にすげ替える“政権交代”を実行するのです。

なぜミツバチたちは女王蜂を失脚させるのでしょうか?

研究の詳細は2025年10月14日付で科学雑誌『PNAS』に掲載されています。

UBC research reveals why honey bees overthrow their queen https://www.med.ubc.ca/news/ubc-research-reveals-why-honey-bees-overthrow-their-queen/
Elevated virus infection of honey bee queens reduces methyl oleate production and destabilizes colony-level social structure https://doi.org/10.1073/pnas.2518975122

女王蜂の「失脚劇」はなぜ起きる?

ミツバチの世界では「取り替え(supersedure)」と呼ばれる女王蜂の交代劇がごく当たり前に起きています。

これはコロニーの働き蜂たちが「女王蜂の産卵能力が落ちてきた」と気づいたとき、密かに新しい女王蜂を育てて政権交代を果たす現象です。

まるで歴史ドラマのように、一度は忠誠を誓った臣下が、女王の衰えを見極めてクーデターを起こす。そんなシビアな世界が巣の中で繰り広げられているのです。

カナダ・ブリティッシュコロンビア大学(UBC)の最新研究によれば、この“失脚”には「ウイルス感染」という見えざる敵が大きく関わっていることが分かってきました。

女王蜂がウイルスに感染すると、卵巣が小さくなって産卵能力が低下します。

しかもそれだけではありません。

働き蜂の忠誠心を保つ「メチルオレイン酸」という特殊なフェロモンの分泌量まで減ってしまうのです。

このフェロモンは、女王の健康状態を知らせる重要なサイン。

女王が元気なら巣全体に「私は健在」という匂いを発しますが、ウイルスにやられると、その香りが弱まり、「女王が弱っているぞ!」と蜂たちにバレてしまいます。

この“においの異変”こそが、働き蜂たちが「もうこの女王には任せておけない」と感じ、新たな女王育成に動き出す引き金なのです。

研究者は「健康な女王蜂は1日に850〜3200個もの卵を産み、フェロモンも豊富。しかしウイルス感染が進むと卵も減り、フェロモンも激減する。その変化がクーデターの合図になる」と解説します。

次ページ「フェロモン操作」でクーデターを防げる?

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