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マルハナバチの楽観的な内部状態は仲間に伝播する / Credit:Canva
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昆虫でも”ポジティブな気分”は仲間に伝染する

2025.12.08 11:30:44 Monday

「楽しそうな人といると気持ちが明るくなる」など、私たち人間では気分が他の人にも伝染します。

この現象は哺乳類や鳥類など多くの脊椎動物で確認されてきましたが、社会性のある昆虫でも同じようなことが起きるのでしょうか。

中国・南方医科大学(Southern Medical University)の研究チームは、マルハナバチの仲間同士で“ポジティブな内部状態”が伝わり、わずか30秒の短い交流でも観察者の判断が前向きに変化することを示しました。

この成果は2025年10月23日付の科学誌『Science』に掲載されています。

Bees ‘infect’ each other with optimism that spreads through the colony https://newatlas.com/biology/positivity-spread-bumble-bees/
Positive affective contagion in bumble bees https://doi.org/10.1126/science.adr0216

昆虫も楽観的になるのか

昆虫は人間のような表情を見せません。

そのため長い間、昆の行動は主に反射的かつ機械的に説明されることが多く、私たちが想像するような「気分」や「感情」に注目する研究は限られていました。

しかし2010年代以降、昆虫にも楽観的あるいは悲観的な方向へ傾くような内的状態が存在する可能性が示され始めました。

その有力な手がかりになっているのが、動物の内部状態を推測するための「判断バイアス(judgment bias)」という方法です。

判断バイアスは、人間で言えば曖昧な状況に置かれたときの反応の違いを見て気分の方向を推測するようなテストに近い発想です。

まず動物に、良い結果につながる刺激と、良くない結果を示す刺激を学習させます。

そのうえで両者の中間となる“曖昧な刺激”を提示し、どれくらい積極的に近づくかを見ます。

もし曖昧な刺激に対して素早く向かうなら楽観的(ポジティブ)であり、慎重になれば悲観的(ネガティブ)だと考えられます。

マルハナバチでは、2016年にこうした判断バイアスを用いた研究が報告され、予想外に砂糖滴を与えられた蜂が、曖昧な色の花により積極的に向かう “楽観状態” を示すことが知られていました。

この知見は、昆虫にも状況に応じて変化する内部状態がある可能性を示す重要な手がかりでした。

そこで今回の研究チームが掘り下げたのは次の問いです。

個体のポジティブな内部状態は、その場にいる仲間へも伝わるのでしょうか。

もし伝わるなら、昆虫の社会行動や集団の意思決定は、私たちの想像よりも繊細な“雰囲気の共有”に支えられているかもしれません。

この問いを明らかにするために、セイヨウオオマルハナバチ(Bombus terrestris)を対象に、1匹の蜂のポジティブ状態が、別の蜂の判断バイアスへ移るかどうかを検証することにしました。

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