・ツチハンミョウは寄生性の昆虫で、幼虫期に単独行動をする蜂を宿主として巣に寄生し羽化する
・幼虫は蜂のオスを引きつけるため、性フェロモンを偽造し好みの高さへ移動する
・作るフェロモンと移動する高さは、局地の蜂に対応したものに適応進化している
「ヘイ乗ってかない?」…とは言われていないでしょう。
強い毒を持ち、「触るだけでもヤバイ」といわれる昆虫ツチハンミョウ。人間にはとても厄介な昆虫ですが、実はとてもこずるいトリックを使えるようです。
カリフォルニア州立大学デービス校の研究者らによる最新の研究によると、この昆虫は、偽のフェロモンと「飛行高度」を利用したトリックを生息地にあわせて使い分け、上手くハチに寄生していることがわかりました。
http://www.pnas.org/content/early/2018/09/04/1718682115
多くの単独活動をするタイプの蜂は、フェロモンを手がかりに交配相手を探しますが、ツチハンミョウの幼虫はその蜂の生態を利用し、蜂のメスの性ホルモンを偽造してオスの蜂をおびき寄せることができます。そしてオスの蜂が近づいたら、その背中へつかまり、蜂がメスと出会うまで離れません。
オスとメスが交尾を始めたら、交尾の最中にメスへと乗り移り、最終的に蜂の巣に潜り込みます。まるで蜂のヒッチハイクです。巣の中では、メスが生んだ卵や蜂の幼虫や、花粉やはちみつを食べて育ちます。そして次の冬に成虫として出ていく準備ができるまで、居候するのです。
カリフォルニア州立大学デービス校の大学院生ソウル=ガーシェンツ氏と共同研究者は、地理的に離れた所に住んでいる近縁種の蜂に対する寄生行動の研究を行いました。一つはカリフォルニアのモハーベ砂漠に生息している“Habrapoda Pallida“。もう一種はオレゴンの海岸砂丘を生息地とする“H. miserabilis”です。
研究の結果、ツチハンミョウがメスの蜂によって作られるフェロモンを生み出していることを発見しました。面白いことに、「モハーベ砂漠の蜂」に寄生する「モハーベ砂漠の寄生昆虫」が発するフェロモンは、オレゴン海岸の雄蜂をひきつけませんでした。同様に、オレゴン海岸の雄蜂を標的とした幼虫が発したフェロモンをモハーベの雄蜂は無視しました。
この結果から、2種の雄蜂はどちらも、遠方の幼虫よりも当地の幼虫に誘惑されることがわかりました。それは、幼虫が偽造フェロモンを地元の宿主のフェロモンに対応するように調整しているからだと考えられています。
ツチハンミョウのトリックはこれだけではありません。2種の蜂は、配偶者を探すために異なった高さを飛び回ります。砂漠の蜂は35センチの高さ、海岸の蜂は10センチの高さです。この高さは蜂の種類に結びついており、オレゴン海岸の蜂をモハーベ砂漠に連れて行っても、10センチの高さを飛び回るのです。
なんと寄生昆虫は、こうした蜂の飛行高度傾向にも対応しています。幼虫は、フェロモンを発する前に、それぞれの蜂が好む高さまで登るのです。この例は、異なる宿主を持つ寄生生物が局地に適応するという、比較的速い進化の好例です。
生態的には非常に優秀なのでしょうが、人間からみると文字通り「虫のいい話」です。
via: ZME Science/ translated & text by SENPAI