なぜ猛毒ガエルを食べて平気なのか?
1978年、沖縄県・石垣島に農作物の害虫対策として人為的に導入されたのが、南米原産の「オオヒキガエル(学名:Rhinella marina)」です。
このカエルは体表や耳腺から強力な「強心配糖体(きょうしんはいとうたい)」という毒を分泌し、多くの捕食者を死に至らしめます。
実際、石垣島では在来のヘビがこの毒で中毒死した例も報告されています。
ところが同じ島に住むカンムリワシは、この猛毒ガエルを普通に捕まえて食べています。
しかも毒腺や皮膚を除くような行動も見せず、丸呑みにする個体さえいるのです。
なぜ彼らだけが無事なのでしょうか?

「カンムリワシが持つ特別な生理機能があるのではないか」という仮説は以前からありましたが、詳しい科学的検証はされていませんでした。
そこで研究チームは今回、毒に関係する特定のタンパク質の遺伝子配列に注目しました。
このタンパク質は細胞内のイオンバランスを保つ生命活動に不可欠な存在ですが、毒はこのポンプ機能を阻害することで致死的な効果をもたらします。
しかし一部の動物(ヤマカガシというヘビ)は、このポンプ機能を構成する遺伝子(ATP1A)に特定の“耐性変異”を持つことで、毒の作用を回避していることが知られていました。
カンムリワシにも同様の進化が起きている可能性があると考えられたのです。