鳥と協力関係を築き上げた蜂蜜ハンター族
モザンビーク北部のニアサ地域では古くから蜂蜜が食されてきました。
特に干ばつなどで作物の栽培が難しくなる年には、栄養豊富な食料源として大切にされています。
その中で、野生のミツバチの巣を探し出して蜂蜜を収穫するハンター集団が形成され、伝統的なハチミツ採集文化が発展してきたのです。
しかしながら、広大な森の中で蜂の巣を見つけるのは容易なことではありません。
蜂の巣は木の奥深くに隠されていることもあるため、自力で見つけるのは至難の業なのです。
ところが地元の蜂蜜ハンターたちは長年の経験から、ノドグロミツオシエ(学名:Indicator indicator、英語では「ハニーガイド」と呼ばれる)という小鳥が蜂蜜を好んで食べること、それから蜂の巣を見つけるのに優れていることを学びました。
そして蜂蜜ハンターたちは次第に、この鳥たちを追跡して、蜂の巣を効率的に見つけ出す手法を洗練させ始めます。
![画像](https://nazology.kusuguru.co.jp/wp-content/uploads/2025/02/Greater_Honeyguide_Indicator_indicator_45663851145_crop-431x600.jpg)
さらに驚くべきは、ノドグロミツオシエの方も人間と協力することにメリットがあることに気づき、蜂蜜ハンターたちと積極的にコミュニケーションを取り始めたことでした。
というのもノドグロミツオシエは確かに蜂の巣のありかを特定するのに長けていますが、体が小さくて非力なため、蜂蜜を採取するのは苦手だったからです。
彼らが蜂の巣に近づくと、当然ながら主であるミツバチたちが大群で襲いかかってくるため、ケガなしでは済みません。
しかし蜂蜜ハンターたちは蜂の巣を見つけると、煙を焚いてミツバチを気絶させる術を心得ていましたし、道具を使って簡単に幹を割り、蜂の巣を効率的に取り出すことができました。
そしてノドグロミツオシエたちは蜂蜜ハンターが採取した蜂蜜のおこぼれを安全にいただくことができたのです。
蜂蜜ハンターたちも蜂の巣を教えてくれたお礼として、地面に蜂の巣の断片をいくつも置いていくようになりました。
![画像](https://nazology.kusuguru.co.jp/wp-content/uploads/2025/02/120066_web-900x596.jpg)
ここから蜂蜜ハンターとノドグロミツオシエは明確な協力関係を築き始めます。
具体的には、蜂蜜ハンターが独特の呼び声を発すると、それを聞いたノドグロミツオシエたちも鳴き声を返しながら、木から木へと飛び移り、蜂の巣のありかへと導いていくのです。
蜂蜜ハンターたちはこの独特の呼び声を父親たちから代々受け継ぎます。
このように、自然界において人と動物が共通の利益を得るために協力する関係は極めて稀なこと。
まさにアフリカの蜂蜜ハンターは、ファンタジーに登場する「鳥使い」のような存在なのです。