怒れるハチほど、毒の質が高くなる
研究チームは、オーストラリア南西部の町ハーヴェイ(Harvey)近郊に設置されている計25個の飼育バチの巣箱を対象に調査しました。
同地は、西オーストラリアにのみ分布するユーカリの一種、「マリー(学名:Corymbia calophylla)」の木が自生する場所です。
飼育されているセイヨウミツバチは、マリーの花から蜜を集めてハチミツをつくります。
チームは、2020年1月21日〜3月6日にかけて、それぞれの巣箱のハチから毒を採取し、中に含まれるタンパク質を分析。
その結果、セイヨウミツバチの毒には、合計で99種類のタンパク質が含まれていることが特定されました。
そのうちの約3分の1は以前に同定されたものでした。
ハチ毒は、含まれるタンパク質の数が多ければ多いほど、毒の品質と効果が高くなります。
また、ハチ毒のタンパク質に影響する要因を探るべく、チームは、それぞれの巣箱に刺激を与えるデバイスを設置。
すると興味深いことに、デバイスに対し攻撃的に反応した、いわゆる「怒ったハチ」ほど、タンパク質がより豊富で密度の高い毒を生成したのです。
反対に、デバイスに対し消極的な反応を示した、「おとなしいハチ」は毒中のタンパク質の生成量が低いことが分かりました。
研究主任のダニエラ・スカッカバロッツィ(Daniela Scaccabarozzi)氏は、これについて「毒のタンパク質の生成量は、警報フェロモンの分泌に依存していると考えられます。
警報フェロモンとは、ハチに刺激を与えて積極的に針を刺すように誘引する化学物質のこと。
これは、ハチに攻撃性を誘発する遺伝子変化の結果であり、警報フェロモンのおかげで、毒の質も上がっているのでしょう」と説明します。
また、「怒り」以外にもハチ毒の質にかかわる要因がありました。