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Credit: canva
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高校生が授業中に「30万年前のマルハナバチ化石」を発見

2025.10.29 17:00:25 Wednesday

「教室の中で、太古の秘密に出会う」

そんなワクワクする瞬間が、実際に日本の高校生の手によって生まれました。

2024年10月、慶應義塾湘南藤沢高等部の理科の授業中、高校3年生の市川綾萌さんが、約30万年前の「マルハナバチ」の化石を発見

しかも女王バチ個体であることが、玉川大学・ 慶應義塾大学の研究で明らかになりました。

研究の詳細は2025年10月6日付で科学雑誌『Paleontological Research』に掲載されています。

高校生が授業中に世界的貴重なマルハナバチ化石を発見―化石は30万年前の全長24mmの大型女王バチ― https://www.tamagawa.jp/research/academic/news/detail_25281.html
A fossil bumblebee (Hymenoptera, Apidae, Bombini) from the Middle Pleistocene Shiobara Group in Nasushiobara, Tochigi, Japan https://doi.org/10.2517/prpsj.250013

授業中に発見された貴重な化石

2024年10月、神奈川県藤沢市にある慶應義塾湘南藤沢高等部の理科室で、一人の高校生が貴重な発見をしました。

市川綾萌さん(当時高校3年生)は、栃木県那須塩原市の「木の葉化石園」から提供された岩石ブロックの中に、見慣れぬ昆虫のシルエットを発見したのです。

この授業は理科のカリキュラムの一環で、教室内で実際に化石採集体験ができるユニークなもの。

指導を担当していた教諭は、その標本の保存状態の良さにすぐさま注目しました。

発見された化石は、30万年前の地層のもので、胸部・腹部・翅・脚の一部が鮮明に保存されていました。

特に、全長24ミリにも及ぶ大型の個体であったことから、女王バチであると考えられました。

【実際の画像がこちら

さらに翅に走る細かな脈(翅脈)や、腹部・脚に密集する長い毛など、マルハナバチ特有の特徴が明瞭に残されていたのです。

マルハナバチ(Bumblebee)は、ふかふかの毛に覆われた丸い体から「空飛ぶぬいぐるみ」とも呼ばれ、特にヨーロッパで人気の高い昆虫です。

花粉を運ぶ「花粉媒介昆虫」として、トマトやナスの人工授粉にも広く活用され、農業にも大きな貢献を果たしています。

日本国内でも15種が知られていますが、近年は世界的に数が減少し、将来的な絶滅が危惧されています。

実は、これまで世界で報告されたマルハナバチの化石は、わずか14種・標本数15個しかありませんでした。

しかも、いずれも3600万年前〜1000万年前(始新世〜中新世)の絶滅種であり、現代の種と直接つながる証拠はまったく見つかっていませんでした。

今回の化石は、それよりもはるかに新しい30万年前のもので、しかも現生種「トラマルハナバチ(Bombus diversus)」に非常によく似た特徴をもっていたのです。

この驚くべき発見により、市川さんが授業中に割った一つの石から、「現生種にきわめて近いマルハナバチの大型女王バチ化石」が初めて明らかになりました。

次ページ化石発見がもたらす学術的なインパクト

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