新種のタマバチを発見
新種のタマバチを発見 / Credit: Pedro Brandão-Dias et al., Systematic Entomology(2022)
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学生たち行きつけの酒場が学名の由来 新種のハチ「N. ヴァルハラ」

2022.01.27 Thursday

アメリカ南部にあるテキサス州ヒューストンで、新種のタマバチが発見され、新たに「ヌーロテルス・ヴァルハラ(Neuroterus valhalla)」と命名されました。

なにやら神話めいて聞こえますが、当のハチは見た目も行動もその名にふさわしいものではありません。

体長はわずか1ミリほどで、1年のうち11ヶ月を巣内に閉じこもって過ごします

では、なぜこの仰々しい名前が付けられたのでしょうか。

研究の詳細は、2022年1月10日付で科学雑誌『Systematic Entomology』に掲載されています。

New Tiny Non-Stinging Wasps Discovered; Researchers Name the Insect Species ‘Neuroterus Valhalla’ https://www.sciencetimes.com/articles/35760/20220125/new-tiny-non-stinging-wasps-discovered-researchers-name-insect-species.htm Biologists discover new insect species https://phys.org/news/2022-01-biologists-insect-species.html
Describing biodiversity in the genomics era: A new species of Nearctic Cynipidae gall wasp and its genome https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/syen.12521

産卵場所が世代ごとにコロコロ変わる

タマバチ科(Cynipidae)は非常に小さなハチのグループで、宿主となる木の中に営巣します。

彼らは産卵と同時に特殊な化学物質を分泌し、木を誘導して、卵の周りに地下室のようなスペースを形成させます

これにより、卵や子どもを保護したり、餌として与えるのです。

タマバチは現在、約1000種ほど知られており、木の枝の中に巣をつくる種もいれば、葉っぱの裏側や花に営巣する種もいます。

その際、それぞれの営巣場所にゴール(虫こぶ)ができることから、英名ではゴールワスプ(Gall wasp)と呼ばれます。

また、タマバチの成虫は一旦巣の外に出ると、3、4日しか生きられません。

大人になると餌も食べず、ただ交尾して巣をつくり産卵することだけを目的とします。

オークの枝にできたタマバチの虫こぶ
オークの枝にできたタマバチの虫こぶ / Credit: en.wikipedia

今回の新種、ヌーロテルス・ヴァルハラ(以下、N. ヴァルハラと表記)は、ヒューストンにあるライス大学(Rice University)の大学院生、ペドロ・ブランダオ=ディアス(Pedro Brandão-Dias)氏により発見されました。

ディアス氏は2018年の春、キャンパスの近くにある巨大なオーク木からN. ヴァルハラを採取しました。

同地はオークの木が広がる演習場であり、ディアス氏の所属する研究室が好んで使用しています。

一方、新種の記載に4年近くかかったのは、N. ヴァルハラが他種のタマバチと同様、年に2度卵を産むことが原因でした。

N. ヴァルハラが世代交代する際、産卵する場所を特定するのにかなりの時間と労力がかかったのです。

最初に見つかったのが2018年の2月末から3月初めにかけて、場所はオークの木の花からでした。

そして2019年になって、オークの別の部位から出現するタマバチの成虫が発見されました。こちらは、先のタマバチに比べて、体色が少し薄かったという。

DNA解析の結果、2つは同じ種の異なる世代で、新種のタマバチと判明したのです。

問題の学名は、演習場の近くにあり、学生の行きつけとなっている酒場の店名「ヴァルハラ(Valhalla)」からつけた、といいます。

ヌーロテルス(Neuroterus)の方は、タマバチの属名です。

N. ヴァルハラの生活環
N. ヴァルハラの生活環 / Credit: Barbara Rossi – Biologists discover new insect species(2022)

N. ヴァルハラの最初の世代は、オークの花の中で孵化した個体がわずか2〜3週間で成虫になり、また別のオークの枝の中に産卵すると見られます(上図の右側)。

しかし、第2世代はすぐに孵化することなく、枝の中で11ヶ月間も過ごし、翌年の3月頃に成虫として巣の外に出ていました(上図の左側)。

そして、第2世代が出て来たタイミングで花が咲いているとは限らないので、また別に産卵場所を変えていきます。

ちなみに、N. ヴァルハラのオス個体はまだ見つかっていないとのこと。

研究チームは現在、オスの捜索と同時に、昨年2月にヒューストンを襲った歴史的な寒波が、N. ヴァルハラに与えた影響について調査しています。

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