ピレスロイド系の殺虫剤はゴキブリに効くのか
私たちは、生命力が強くしぶといゴキブリと戦うために、殺虫剤を活用してきました。
一般消費者向けのゴキブリ用殺虫剤の主成分には、合成ピレスロイドが使用されています。
このピレスロイドは、昆虫類や両生類、爬虫類の神経細胞に作用する神経毒です。
ピレスロイドが昆虫たちの神経細胞膜に存在するナトリウムチャンネルと結合。
これにより、ナトリウムイオンが過剰に神経細胞内に流入し、神経の過剰興奮を引き起こすのです。
結果として昆虫たちの神経系の機能が乱れ、麻痺や死に至らせます。
一方で、哺乳類や鳥類に対する毒性は低く、私たち人間にとって比較的安全であることから、昔から殺虫剤として採用されてきました。
日本では、ゴキブリ用の殺虫剤以外にも、蚊取り線香などでピレスロイドが使用されています。
ちなみに、ゴキブリ用の殺虫剤にはいくつかのタイプが存在しており、ゴキブリの体に直接噴霧するものや、ゴキブリの通り道である床や壁に塗布するもの、エサに毒を混ぜ込んだものなどがあります。
成分としては同じピレスロイドが使用されているものの、製品によって様々な手法があるのです。
実際、日本では、ほとんどの人が、ゴキブリに直接吹き付けるタイプの殺虫剤を使用しているかもしれません。
しかし、逃げるゴキブリを狙ってスプレーしたり、ゴキブリが出た瞬間に対応したりすることは簡単ではありません。
そこで、床や壁など、ゴキブリの通り道に塗布するタイプのスプレーも登場するようになりました。
あらかじめ殺虫剤を塗布しておけば、そこを通ったゴキブリを駆除したり、寄せ付けないようにしたりできるというものです。
しかし、1990年ごろからピレスロイドに耐性を持つゴキブリが増え始め、これらピレスロイド系の殺虫剤に対する信頼性が揺らいできました。
ただでさえ、「壁・床」タイプの殺虫剤は、直接スプレーするタイプの殺虫剤に比べて効果が薄いように感じられるため、現在でも本当に効果があるのかと疑問に感じる人は少なくないでしょう。
そこで今回、ゴードン氏ら研究チームは、世界共通の室内害虫として知られる「チャバネゴキブリ(学名:Blattella germanica)」を対象に、ピレスロイド系殺虫剤の効果を試すことにしました。