化学言語の違いから新種を発見!
セイボウ科は、世界で3000種以上が知られている大きなグループです。
どの種も非常に美しいのですが、その普遍的な美ゆえに、見た目で種を見分けるのが難しいのも事実。
セイボウの研究はすでに200年以上の歴史がありますが、どの特徴が種固有のもので、どの特徴が種内のバリエーションに過ぎないのか、いまだに定まっていないのです。
「その中で有効な方法は、セイボウの『化学的な言語』を見究めることだ」と研究主任のフロド・ウーデゴール(Frode Ødegaard)氏は指摘します。
セイボウは、種ごとにフェロモンを使ってコミュニケーションを取るため、それぞれが独自の化学的な言語をもっています。
特に遺伝的に近縁な種は、交配を避けるため互いに大きく異なるフェロモンを使っているのです。
また、セイボウは、他種のハチやスズメバチの巣に卵を産み付ける寄生性の昆虫でもあります。
彼らの卵は急速に成長して宿主の卵より先に孵化し、宿主の親が用意したエサなどを食べてしまいます。
寄生虫として生きるには宿主にバレないことが肝心であるため、セイボウは宿主のフェロモンも習得してしまい、化学的な言語がより複雑に変化しているのです。
そこで研究チームは、ノルウェー南部・アグデル県に分布するセイボウのコロニーを対象にフェロモンによる化学的な言語の分析を開始。
コロニー内のセイボウはどれもソックリで、見た目ではどれも同じに見えます。
しかし、これまでにない微細なレベルで分析を行った結果、まったく異なる化学的な言語を使っている個体が発見されたのです。
ウーデゴール氏は「他種への寄生を伴う進化は急速に進展するため、遺伝的によく似た2つの種があっても別種に分類することが可能です。
そして今回の結果は、この個体が未記載の新種であることを意味する」と説明します。
新種の学名は、コロニーの他のセイボウ(Chrysis brevitarsis)に似ているので、「Chrysis parabrevitarsis(=C. parabrevitarsisの隣に立つもの)」と命名されました。
現時点でこの1匹しか知られていませんが、研究チームは今後、同種の仲間たちを探していく予定です。