- ミツバチに寄生する「ヘギダニ」やそれらが媒介する「ウイルス」によって、ハチが大量減少している
- ハチの腸内に遺伝子操作されたバクテリアを保有させることで、ダニおよびウイルスを効果的に死滅させることに成功
地球の植生にとって欠かせないミツバチは今、大量減少の危機に直面しています。
アメリカの最新データによると、昨年の冬だけで同国内のミツバチのコロニーが40%近く失われています。これは13年にわたる同じ調査の中で最も高い数値を記録しています。
その大きな原因となっているのが、「寄生虫」と「ウイルス」です。
今回、テキサス大学オースティン校は、ミツバチの大量死を防ぐため、寄生虫やウイルスを死滅させる画期的な方法を開発しました。
それが、遺伝子操作した腸内バクテリアをミツバチに持たせるというものです。
この方法により、一体どのような効果が得られるのでしょうか。
研究の詳細は、1月31日付けで「Journal Science 」に掲載されています。
https://science.sciencemag.org/content/367/6477/573
ミツバチを大量死させる2つの原因
ミツバチの集団死の原因は、主に「ヘギダニ(Varroa mites)」と「翅変形病ウイルス(deformed wing virus)」の2つです。
しかもこれらは同時にミツバチを襲います。
まず、ヘギダニがミツバチの背にしがみつき、ウイルスを拡散させます。ヘギダニは宿主をエサとするため、ミツバチが弱っていき、ウイルスに感染しやすくなるのです。
このウイルスに感染したミツバチは、翅が縮んで体が歪み、飛べなくなって、最終的には死に至ります。
ウイルスはミツバチが互いに接触することで感染するため、コロニー内に蔓延すれば大量死は免れられません。
そこで研究チームは、ダニおよびウイルスからミツバチを守る方法として、腸内バクテリアの遺伝子組み換えを行いました。
詳しくは後述しますが、遺伝子操作したバクテリアを体内に保有することで、ダニとウイルスの両方を死滅させることができるのです。
研究主任のナンシー・モラン教授は「微生物を遺伝子操作してハチの健康レベルを向上させる方法は、世界でも初めての試み」と話します。