女王と、はたらく姉妹たち。
小さな体で大きな社会をつくる。
- ナゾロジーの記事
- 65本
- 地球上のアリ
- 2京匹
- 日本のアリ
- 280種
アリは、ハチ目アリ科の昆虫で、女王アリと働きアリが大きな群れをつくってくらす社会性昆虫です。世界で13,800種以上、日本ではおよそ280種が知られ、地球上には約2京匹がいると推計されています。女王は最長30年ほど生きます。
図鑑データ
- 分類
- 昆虫 › ハチ目 › アリ科
- 学名
- Formicidae
- 英名
- ant(アント)
- 種の数
- 13,800種以上(推定では2万種以上)
- 大きさ
- 体長1〜30mmほど
- すみか
- 南極をのぞく全大陸。熱帯から寒い地域まで
- 日本では
- およそ280種
- 食べもの
- 小さな虫、植物の蜜、アブラムシの甘露、種、菌など
- 寿命
- 女王は最長30年ほど、働きアリは1〜3年、オスは数週間
- 増え方
- 卵 → 幼虫 → さなぎ → 成虫(完全変態)
- 地球上の数
- 約2京匹(2022年の推計)
アリとは
アリは、ハチ目(もく)アリ科に属する昆虫のなかまです。卵を産む女王アリと、たくさんの働きアリが大きな群れ(コロニー)をつくってくらす「社会性昆虫」の代表です。これまでに世界で13,800種以上が見つかっていて、推定では2万種以上いるとされます。日本では、およそ280種が知られています。
数もけた外れです。2022年に発表された推計では、地球上のアリはおよそ2京匹。全部を合わせた量は炭素にして約1200万トンで、野生の鳥とほ乳類を合わせたよりも多いとされています。
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大きさと体のつくり
体長は1〜30mmほどで、種によってかなりちがいます。南米にすむオソレアリのなかまには、4cmに達する種もいます。日本では、クロオオアリとムネアカオオアリがもっとも大きく、クロオオアリの大きな働きアリは体長13mm、ムネアカオオアリの女王では20mmに達するものもいます。
体は頭・胸・腹に分かれ、胸から6本の脚が出ています。アリならではの特徴が、胸と腹のあいだにある細いくびれ「腹柄節(ふくへいせつ)」です。昆虫の中でもアリだけがもつつくりで、体を大きく曲げられるため、巣の中のせまいトンネルでくらすのに役立っています。

- 触角:根もとの節が長く、「く」の字に折れ曲がっています。においや空気の流れ、振動を感じとり、仲間どうしで触れ合って合図を送るのにも使います。
- 大あご:食べものを運んだり、ものを動かしたり、巣をつくったり、敵にかみついたりする、じょうぶなあごです。
- 目:小さなレンズがたくさん集まった複眼と、頭の上の小さな単眼をもちます。動くものを見つけるのは得意ですが、細かい形を見分けるのは苦手です。単眼がない種や、複眼までなくなった種もいます。
- 針:もともとは卵を産む管(産卵管)が変化したもので、針をもつのはメス(女王アリと働きアリ)だけです。日本で家のまわりに見られるアリの多くは、針をもたないか、もっていてもあまり刺しません。
画像はイメージです
アリが壁をのぼれるのは、脚の先にあるかぎ爪を、表面に引っかけられるからです。
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ハチやシロアリとのちがい
アリは羽のない虫に見えますが、分類ではハチのなかまです。アリは針をもつハチの祖先から進化したグループで、スズメバチよりも、アリのほうがミツバチに近い親戚だと考えられています。ふだん羽が見えないのは、数がいちばん多い働きアリが、はじめから羽をもたないためです。
アリは白亜紀という大昔に、ハチの祖先から進化したと考えられています。体が小さくつぶれやすいアリは化石に残りにくいのですが、琥珀(こはく)の中に閉じこめられた化石が見つかっています。

一方、名前の似ているシロアリは、アリとはまったく別の、ゴキブリに近いなかまです。群れでくらすところは似ていますが、それぞれが別々に進化させたものです。また、英語で velvet ant(ベルベットアント)と呼ばれる虫は、アリにそっくりですが、羽のないハチのメスです。
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どこにいる? 日本のアリ
アリは南極をのぞくすべての大陸にすみ、熱帯から寒い地域まで、砂漠、草原、森林などさまざまな場所で見られます。もともとアリがいない大きな陸地は、南極のほかグリーンランドやアイスランド、ハワイ諸島などごく一部です。とくに数が多いのは、しめった熱帯です。
日本の身近なアリには、たとえば次のような種がいます。
- クロオオアリ:ほぼ全国にいる、国内最大級のアリ。開けた場所の地中に巣をつくり、5〜6月ごろに結婚飛行をします。
- クロヤマアリ:日当たりのよい草地などに、深さ1mほどになる巣をつくります。アブラムシの甘露や花の蜜、昆虫の死がいなどを食べます。
- トビイロシワアリ:体長2.5mmほどの小さなアリ。ほぼ全国にいて、西日本ではもっともふつうに見られます。
- アミメアリ:女王アリがおらず、働きアリが卵を産んで群れを保ちます。巣穴をつくらず、石のすき間などに集まって、ひんぱんに引っこします。
人の活動にまぎれて分布を広げるアリもいます。ヒアリや、南アメリカ原産のアルゼンチンアリは、日本では「特定外来生物」に指定されています。ヒアリのなかまの毒は痛みが強く、体質によってはアナフィラキシーを起こすこともあります。

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何を食べる?
アリの食べものの基本は、昆虫などの小さな動物です。それに加えて多くの種は、植物の蜜や、アブラムシが出す甘い液(甘露)をエネルギー源にしています。種によっては、植物の種を集めるもの、菌を育てて食べるものなど、食べものはさまざまです。

アリとアブラムシの関係はとくに有名です。アリが触角でアブラムシをたたくと、アブラムシは甘露を出します。アリはそのかわりに、アブラムシを敵から守ったり、別の場所へ運んだりします。

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中南米の熱帯雨林などにすむハキリアリは、切り取った葉を巣に運んで細かくし、巣の中の「菌の畑」に入れます。そこで育つ菌だけを食べてくらす、農業をするアリです。

アリの行列のひみつ
アリが行列をつくるのは、餌を見つけた働きアリが、巣に戻る道に「フェロモン」というにおいの道しるべをつけるからです。仲間はそのにおいをたどって餌まで行き、帰りにまたにおいをつけるので、道はどんどん強くなります。餌がなくなるとにおいはつけられなくなり、やがて消えていきます。
見つけた液体の食べものは、体の中の袋(そのう)にためて持ち帰り、口うつしで仲間や幼虫に分けます。この袋は「社会の胃」とも呼ばれます。
女王アリと働きアリ
アリの群れは、基本的にひとつの家族です。卵を産む女王アリと、その娘であるたくさんの働きアリ、そして新しい女王アリと、息子のオスアリからなります。働きアリはみなメスで、ふつうは卵を産みません。種によっては、頭の大きな「兵隊アリ」がいたり、女王が何匹もいたりします。

働きアリの仕事は、年齢とともに変わります。若いうちは巣の中で女王や卵、幼虫の世話をし、やがて巣を掘る仕事へ、さらに巣を守ったり外で餌を探したりする仕事へと移ります。外で餌を探しているアリの多くは、年をとったアリです。
けがをした仲間を助けるアリもいます。アフリカのマタベレアリでは、けがをした仲間を救護する「衛生兵」のような働きアリが確認されています。また、オオアリのなかまでは、仲間が脚の太ももの部分にけがをすると、その脚を切り落として感染を防ぐことが、2024年に報告されました。
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なかには、ほかの種の巣をおそって幼虫やさなぎをうばい、そこから生まれた働きアリに自分たちの世話をさせるサムライアリのようなアリもいます。
寿命と増え方
アリは、卵 → 幼虫 → さなぎ → 成虫と姿を変える「完全変態」の昆虫です。幼虫は自分ではほとんど動けず、働きアリに餌をもらって育ちます。
多くの種では、年に一度、羽のある新しい女王アリとオスアリが巣からいっせいに飛び立つ「結婚飛行」を行い、交尾します。時期は種や地域によってちがい、春から秋にかけて行われます。交尾を終えた女王は自分で羽を落とし、単独で巣穴を掘ったり木の皮のすき間にもぐったりして、卵を産み始めます。生まれた子が働きアリになると、群れが大きくなっていきます。

女王アリは、交尾で受け取った一生分の精子を体の中の袋にためておき、何年にもわたって使います。受精した卵からはメス(働きアリや新しい女王)が、受精していない卵からはオスが生まれます。
寿命は立場によって大きくちがいます。女王アリは最長30年ほど生きるのに対し、働きアリは1〜3年、オスアリは数週間しか生きません。女王の寿命は、同じくらいの大きさで群れをつくらない昆虫の100倍ほどと見積もられています。
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寒い地域のアリは、冬のあいだ活動をおさえた冬眠のような状態ですごします。熱帯のアリは一年中活動しています。
名前の由来と、人とのかかわり
英語の ant は、古い言葉で「かむもの」という意味の言葉から来ています。アリを研究する学問は「アリ学(myrmecology)」と呼ばれます。
アリは害虫を食べたり、土を掘り返して空気を通したりと、人の役に立つ働きもしています。中国南部で、ツムギアリを使ってかんきつ類の害虫をおさえてきたのは、生き物で害虫を防ぐ方法のもっとも古い例のひとつとされています。

一方で、家に入りこんで食べものに集まったり、かんだり刺したりするアリは、害虫として嫌われます。アブラムシを守るアリは、間接的に農作物の害にもなります。
アリを食べる地域もあり、タイでは「赤アリの卵」が食材として使われています。イソップ寓話の『アリとキリギリス』をはじめ、アリは多くの物語の主役にもなってきました。たくさんのアリが協力して問題をとくしくみは、コンピューターの計算方法(アリコロニー最適化)やロボットの研究にも取り入れられています。
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よくある疑問
- アリはハチのなかま?
- はい。アリはハチ目に属する昆虫で、針をもつハチの祖先から進化したグループです。スズメバチよりも、アリのほうがミツバチに近い親戚だと考えられています。
- 女王アリと働きアリの寿命は?
- 女王アリは最長30年ほど、働きアリは1〜3年、オスアリは数週間とされています。
- アリはなぜ甘いものに集まるの?
- 多くのアリにとって、植物の蜜やアブラムシの甘露などの甘い液は、大切なエネルギー源だからです。餌を見つけたアリがにおいの道しるべ(フェロモン)をつけるので、仲間がどんどん集まってきます。
- アリは冬眠するの?
- 寒い地域のアリは、冬のあいだ活動をおさえた冬眠のような状態ですごします。熱帯のアリは一年中活動しています。
- アリはどうして壁をのぼれるの?
- 脚の先にかぎ爪があり、これを表面に引っかけてのぼります。
- シロアリはアリのなかま?
- いいえ。シロアリはアリとはまったく別の、ゴキブリに近いなかまです。群れでくらすところは似ていますが、それぞれ別々に進化したものです。
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参考文献
- Schultheiss P ほか (2022) The abundance, biomass, and distribution of ants on Earth. PNAS
- Frank ET ほか (2024) Wound-dependent leg amputations to combat infections in an ant society. Current Biology
- Gotoh A ほか (2023) Near-anoxia induces immobilization and sustains viability of sperm stored in ant queens. Scientific Reports
- Wikipedia「アリ」(日本語版)
- Wikipedia「Ant」(英語版)
- Wikidata「Formicidae」(Q7386)
表紙の写真: Imuzak(Public domain) / Wikimedia Commons
ほかの写真のクレジットは、それぞれの写真のページにあります。
この図鑑は、参考文献の資料をもとに、ナゾロジー編集部がまとめています。












