アリから見えてきた「脳縮小」のヒント
アリとヒトとは遠い関係にありますが、どちらも高度な社会生活を営んでおり、親族を中心とした複雑な共同体を築いています。
また、社会の中で、さまざまな専門分野に特化した労働者が存在し、アリには、農家のように自分たちで作物を生産する種もあるのです。
主著者の一人で、ボストン大学(Boston University・米)のジェームズ・トラニエロ(James Traniello)氏は、こう述べます。
「私たちは、社会生活によって人類の脳容積が増減した理由をアリの中に求めることを提案します。
アリとヒトの社会は多くの面で違っており、社会的進化の過程も異なっています。
しかしアリは、集団での意思決定や分業、食べ物の栽培生産など、社会生活の重要な側面を私たちと共有しているのです。
こうした共通点は、脳容積の変化にかかわる要因を、幅広い視点から捉えることを可能にするでしょう」
そこで研究チームは、数種のアリの脳サイズ、構造、エネルギー使用の計算モデルとパターンを調査。
その結果、集団レベルでの認知と分業が、適応的な脳サイズの変化を促していることが示されました。
つまり、知識が共有されていたり、仕事が分担されている集団では、脳を小さくすることで、より効率的で協調的な社会が築けるということです。
チームはここから、「ヒトの脳も、知識を共有したり分配する集団的な知性によって、同じ変化をしたのではないか」と考えました。
それを証明するべく、原始人および現代人の頭蓋骨985個を対象に、時代ごとの脳容積の変化を分析。
すると、思わぬ事実が判明したのです。