キイロヒメアリはすべてメスで、オスは存在しない?
キイロヒメアリ(M. triviale)は、日本や中国、韓国を原産とする琥珀色のきれいなアリです。
面白いことに、本種の女王アリは、単為生殖によって未受精卵を産むため、子どもを増やすのにオスを必要としません。
実際、今回発表された研究でも、オスの個体はいまだ見つかっておらず、すべてメスであることが明記されています。
そのため、本種のアリは、おもに2つのカテゴリーに分けられます。
「不妊の働きアリ」と「繁殖力のある女王アリ」です。
本研究では、この2タイプのアリの違いを、最も初期のベビーの段階から理解することを目指しました。
そこでチームは、京都市近郊の雑木林からキイロヒメアリの巣をいくつか採取し、未熟なコロニーを実験室内の人工巣に移設。
数種の高解像度顕微鏡を使って、アリの幼虫を観察しました。
女王アリの赤ちゃんは「ドアノブのような突起」を生やす
2つのタイプはともに、成長するにつれて定期的に外骨格を脱ぎ捨て、新しい形態(1齢、2齢などと呼ばれる段階)に変化します。
観察の結果、女王アリも働きアリも最初は長方形の塊をしており、孵化後数日で口器が発達し、体に沿って小さなとげのある毛が生えました。
ところが、最終齢になると、女王アリの赤ちゃんは、働きアリとまったく違う姿に変貌したのです。
他の働きアリが細かな毛を生やしているのに対し、女王には毛がなく、代わりにドアノブのような出っぱりを生やしていました。
正式には「円形小突起(tubercles)」と呼ばれ、全部で37個が確認されています。
その姿は、まるでエイリアンのぬいぐるみのように可愛らしいものでした。
この特徴の違いで、大人の働きアリは、のちの女王を他の赤ちゃんと区別していると考えられます。
また、こうした女王特有の構造は、日本で見られる近縁種はもちろん、一般的なアリでも見つかっていません。
では、女王アリの突起は何のためにあるのでしょうか?