アリのお尻から突き出た新種の菌類
アリのお尻から突き出た新種の菌類 / Credit: OSU – Mushroom growing out of fossilized ant reveals new genus and species of fungal parasite(2021)
fungi

5000万年前のアリに寄生した「新種のキノコ」が琥珀から見つかる

2021.06.23 Wednesday

アリに寄生した最古のキノコが発見されました。

米・オレゴン州立大学(Oregon State University)によると、約5000万年前の琥珀中に、オオアリから生えでた子実体(菌類の複合構造)が確認されたとのこと。

さらに、調査の結果、このキノコは新属・新種の菌類と判明したようです。

研究は、6月5日付けで科学雑誌『Fungal Biology』に掲載されています。

Mushroom growing out of fossilized ant reveals new genus and species of fungal parasite https://today.oregonstate.edu/news/mushroom-growing-out-fossilized-ant-reveals-new-genus-and-species-fungal-parasite
Allocordyceps baltica gen. et sp. nov. (Hypocreales: Clavicipitaceae), an ancient fungal parasite of an ant in Baltic amber https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S1878614621000799

アリに寄生した菌類の最古の化石

この琥珀はヨーロッパのバルト海地域で採取されたもので、中に保存されていたオオアリは約5000万年前の個体と判明しています。

オオアリ属は一般に、樹木や腐った丸太、切り株などに巣を作るため、樹液に囚われて琥珀化することが珍しくありません。

また、オオアリ属は菌類の宿主になりやすく、特に、オフィオコルディケプス属(Ophiocordycepsという菌類によく寄生されます。

その内の1種は、アリが死ぬ直前に植物を噛むように仕向けます。

そうすることで、アリの頭や首からカップ状のアスコーマ(菌の子実体)を突き出して、菌の胞子が放出されやすい状態になるという。

オオアリに寄生した「オフィオコルディケプス属」の一種
オオアリに寄生した「オフィオコルディケプス属」の一種 / Credit: en.wikipedia

一方で、琥珀中に見つかった菌類は、オフィオコルディケプス属とは違っていました。

オフィオコルディケプス属はアスコーマをアリの頭か首から突き出しますが、これはお尻(直腸)から出ているためです。

調査の結果、この菌類は、子嚢菌門(しのうきんもん、Ascomycota)のボタンタケ目(Hypocreales)に属していました。

しかし、属・種はどれにも当てはまらず、未記載のグループであることが判明しています。

そこで研究主任のジョージ・ポイナー・ジュニア氏とイヴェス=マリ・マルティエ氏は、ギリシャ語で「新しい」を意味する「alloios」と、既知の属であるノムシタケ属(Cordyceps)を組み合わせ、新種「アロコルディケプス・バルチカ(Allocordyceps baltica、バルト海の新ノムシタケ)」と命名しました。

上から見た全体図
上から見た全体図 / Credit: OSU – Mushroom growing out of fossilized ant reveals new genus and species of fungal parasite(2021)

ポイナー氏は、新種について「オレンジ色の大きなカップ状のアスコーマと、胞子を外に出すためのフラスコ状の構造物である子嚢殻(しのうかく)が、アリの直腸から突き出ています。

菌の成長部分が腹部と首の付け根から出ており、他の菌類にはない発生段階が見られました」と説明します。

お尻から出た菌類の拡大図
お尻から出た菌類の拡大図 / Credit: OSU – Mushroom growing out of fossilized ant reveals new genus and species of fungal parasite(2021)
横から見たオオアリと菌類
横から見たオオアリと菌類 / Credit: OSU – Mushroom growing out of fossilized ant reveals new genus and species of fungal parasite(2021)

また「この標本は、アリから発生したボタンタケ目の最初の例であると同時に、アリに寄生した菌類の最古の化石記録でもあります。

アリは多くの寄生生物の宿主であり、その中には、発育や拡散に有利なようにアリの行動を操作するものもいます。

本研究の成果は、今後の研究で、アリと菌類の寄生関係の起源を解き明かす貴重な資料となるでしょう」と述べています。

コメントを書く

※コメントは管理者の確認後に表示されます。

人気記事ランキング

  • TODAY
  • WEEK
  • MONTH

Amazonお買い得品ランキング

菌のニュースfungi news

もっと見る

役立つ科学情報

注目の科学ニュースpick up !!