高速かつアクロバティックな狩猟方法が判明!
ユーリョピス・アンビリカタ(以下、クモと表記)がオーストラリアオオアリを主食にしていることは、以前から専門家の間で知られていました。
どちらの種もユーカリの木やその周辺に生息しており、クモは日中、樹皮の中に隠れて、夜になるとアリを狩りに外へ出ます。
アリの方も夜間になると、樹上に登って採食をします。両者が遭遇するのは、このときです。
しかし、クモが自分の2倍もあるアリをどのように仕留めているかは、これまでよくわかっていませんでした。
そこで研究チームは、高速度カメラを用いて狩りの一部始終を撮影し、それをスローモーションにして解析。
その結果、クモは、高速かつアクロバットな動きで、アリを無力化していることが判明しました。
まず、狩猟イベントは、クモが樹皮の上で待ち伏せし、アリが現れるのを待つことから始まります。
アリが下から登ってきて、十分な距離にまで近づいた瞬間、クモは勢いよく空中に飛び出し、宙返りをしながら、後ろ足を使って1本の糸をアリに付着させます。
ここまで、コンマ1秒もかかっていません。
そして、アリの背後に着地すると、今度はすばやくアリの周囲を回り始め、糸を絡めて獲物を捕縛していきます。
こうしてアリは完全に包囲され、まったく身動きが取れなくなっていたのです。
また、チームの計測によると、クモは静止状態から、わずか数ミリ秒で最高速度25.47センチ/秒に達していました。
宙返りをして獲物を捕らえる姿は、まさに”ムーンサルト”と呼ぶに相応しいものです。
さらに捕縛後は、アリの上に乗って毒を注入し、こと切れるのを待ちます。
そして、アリが死ぬと解体作業に入り、安全に食事ができる場所へ、いそいそと運んで行きました。
研究者が驚いたのは、狩りの成功率の高さです。
実験では、計60回の狩猟イベントを観察しましたが、うち51回で見事に獲物を仕留め、狩りの成功率は約87%をマークしました。
これは、ライオンやチーター、オオカミなどの代表的な捕食者の狩り成功率が、50%以下であることを考えると驚異的な数字です。
ちなみに、同じユーカリの木にいて、オーストラリアオオアリを狩ることのあるサシガメの一種(学名:Ptilocnemus lemur)では、成功率はわずか2.5%です。
いかに、クモのハンティング能力が優れているかがわかるでしょう。
また、研究チームによると、こうした狩りの方法は、他のどのクモでも報告された例がなく、本種が唯一とのことです。
チームは今後、このアクロバティックな狩猟スタイルをかの王にするクモの動きのメカニズムを探っていきたいと考えています。