Point
■人間は交通量が道路容量の4割を越えると渋滞し始めるが、アリは8割を越えてもまったく渋滞しない
■実験によると、アリは混雑しそうになる道を回避し、別ルートを探す
■アリが混雑しない1番の理由は、全員の目的が共通しているから
通勤ラッシュや人混みなど、「渋滞」は現代人の大きなストレス源のひとつ。
人間社会では、交通量が道路キャパシティの40%を越えると渋滞が発生し始めるといわれています。しかし、動物界には交通量が道路容量の80%を越えても、まったく渋滞しない生き物がいます。
それが人間にも身近な「アリ」です。
アリの交通整理力は非常に高く、集団行動の模範例と言えます。
今回、アメリカのトゥールーズ大学とアリゾナ大学の新たな研究により、アリの渋滞回避能力を支える「精神的なつながり」が発見されました。
研究の詳細は、10月22日付けで「eLife」に掲載されています。
https://elifesciences.org/articles/48945
混雑ルートはただちに回避
アリの優れた集団行動の一つに、「渋滞しそうなルートは即座に回避する」ことがあります。
2008年にドイツの研究チームが、ラボ内にアリ専用の小さな高速道路を特設し、食料の置いてある場所とコロニーの巣を繋いで実験を行いました。2点間には、インターチェンジも完備されています。
実験前は、人と同じようにインターチェンジ付近で渋滞が発生すると予想されていました。しかし、アリたちは、渋滞が発生しそうになると、一部が巣に戻って、出発しようとするアリたちに別のルートを探すよう誘導したのです。
また昨年には、ジョージア工科大学により、アリが狭いトンネル内での作業をいかに能率化するかについて実験が行われました。
トンネルは2匹のアリがかろうじて通れるほど狭いのですが、渋滞は起きませんでした。なぜなら、すでに仲間が働いているトンネルに遭遇すると、アリはすぐに後退して別のトンネルを探し始めたからです。
やはり「渋滞する道は通らない」が、集団行動の鉄則と言えるでしょう。