明るい緑の葉を背に、細い枝にとまる茶色い翅のセミ No.0036

ナゾロジー図鑑 ・ 生き物

セミ

Cicadoidea

夏の大合唱は、オスがメスを呼ぶ声。
何年も土の中で育ち、地上で1か月ほど生きるものもいる。

ナゾロジーの記事
17本
世界のセミ
3,000種以上
周期ゼミの大発生
13・17年ごと

セミは、カメムシ目のセミ上科に入る昆虫で、世界に3,000種以上がいます。幼虫は土の中で木の根の汁を吸って何年もすごし、地上で羽化すると、オスが大きな声で鳴いてメスを呼びます。日本ではアブラゼミやミンミンゼミ、クマゼミなどがおなじみです。

図鑑データ

分類
昆虫 › カメムシ目(半翅目)› セミ上科(セミ科・ムカシゼミ科)
学名
Cicadoidea(セミ上科)
英名
cicada(シケイダ)
漢字
蝉(もとの字は蟬)
種の数
世界に3,000種以上。ムカシゼミ科はオーストラリアの2種だけで、ほかはセミ科
大きさ
多くは体長2〜5cm。テイオウゼミは翅を広げると18〜20cm
体のつくり
はなれた2つの複眼と3つの単眼、短い触角、針のような口。うすい膜の翅が2対(4枚)
鳴き声
大きな声で鳴くのはふつうオス。腹部の発音膜(ティンバル)で音を出し、空洞の腹部(共鳴室)でひびかせる
すみか
南極をのぞくすべての大陸。熱帯・亜熱帯の森林を中心に分布する
日本では
アブラゼミ、ミンミンゼミ、クマゼミ、ヒグラシ、ツクツクボウシ、ニイニイゼミなど
食べもの
幼虫は木の根から、成虫は幹や枝から、おもに道管液を吸う
一生
卵 → 幼虫(土の中で数年)→ 成虫。さなぎにならない(不完全変態)。多くは2〜5年

セミとは(何類? 何科? 英語では?)

セミは、カメムシ目(半翅目)の「セミ上科」に入る昆虫のなかまです。カメムシと同じなかまで、ストローのような口を木にさして、汁を吸って生きています。近いなかまには、ヨコバイやアワフキムシがいます。

セミ上科は、セミ科とムカシゼミ科の2つの科に分かれます。ムカシゼミ科はオーストラリア南部とタスマニアに1種ずつ、あわせて2種しかいません。そのほかのセミはセミ科で、南極をのぞくすべての大陸に、3,000種以上が知られています。まだ名前のついていない種も多いと考えられています。

明るい緑の葉を背に、細い枝にとまる茶色い翅のセミ
木の枝にとまるアブラゼミ写真: The Nature Box(CC BY 4.0) / Wikimedia Commons

セミは、卵 → 幼虫 → 成虫と育ち、「さなぎ」の時期がありません(不完全変態)。幼虫は土の中で何年もすごし、地上に出てきて最後の脱皮(羽化)をすると、翅のある成虫になります。

英語では cicada(シケイダ)と呼びます。ラテン語の cicada がそのまま英語になった言葉で、もとは鳴き声をまねた言葉(擬音語)です。

セミはいつからいる?(化石)

セミ科とムカシゼミ科の祖先は、ジュラ紀かそれより前に分かれたと考えられています。ジュラ紀の中ごろ(約1億6500万年前)には、それぞれの系統につながる化石が見つかっています。はっきり今のセミ科のなかまと分かる古い化石としては、約5600万〜5900万年前(暁新世)のものが知られています。ミャンマーの白亜紀中ごろの琥珀からは、セミ科の祖先に近いなかまが見つかっていて、体のつくりから、鳴かなかったか、小さな音しか出さなかったと考えられています。

ジュラ紀から白亜紀のはじめには、セミに似た大きな昆虫「パレオンチナ科(ジャイアント・シケイダ)」もいました。名前にセミとつきますが、今のセミとは遠い親せきです。2024年に発表された研究では、ジュラ紀の終わりから白亜紀のはじめにかけて、このなかまの顔ぶれが入れかわり、より速く、小回りのきく飛び方ができる体に変わったことが示されました。同じころに現れた初期の鳥類にねらわれたことが、きっかけになった可能性があるといいます。

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大きさと体のつくり(羽は何枚? 透明なの?)

多くのセミは、体長が2〜5cmほどです。とても大きなセミとして知られるのが、マレーシアなどにすむテイオウゼミ(Megapomponia imperatoria)で、頭から腹の先までが7cmほど、翅を広げると18〜20cmになります。いっぽう日本には、イワサキクサゼミのように、翅の先までふくめて20mmほどの小さなセミもいます。

  • 頭:頭の左右に、大きな複眼が2つはなれてついています。複眼のあいだには、小さな単眼が3つ、三角形にならんでいます。触角は短い毛のようで、あまり目立ちません。口は長い針のような形(口吻)で、これを木にさして汁を吸います。
  • 翅(はね):うすい膜でできた翅が、前と後ろに2対、あわせて4枚あります。前の翅のほうが大きく、とまっているときは体の上に屋根のような形にたたみます。飛ぶときは、前の翅の後ろのふちと、後ろの翅の前のふちにある、かぎのような部分をつなげて、前後の翅をいっしょに羽ばたかせます。
  • 胸と腹:胸には、翅を動かす強い筋肉がつまっています。オスの腹部の中は大部分が空洞で、鳴き声をひびかせる部屋(共鳴室)になっています。メスの腹部は大きな卵巣で満たされ、腹の先には、木に卵を産みこむためのかたい産卵管があります。
木の幹にとまる、すき通った翅と黒っぽい体のセミを上から見たところ
ツクツクボウシのオス写真: Alpsdake(CC BY-SA 4.0) / Wikimedia Commons

セミの羽は透明?(透明でないセミもいる)

セミの翅は、すき通ったもの、くもったもの、色のついたものなど、種によってさまざまです。多くのセミは透明な翅をもち、たとえばクマゼミの翅は、すき通っていて、つけ根の近くの翅脈(すじ)が緑色です。いっぽうアブラゼミの翅は、前も後ろも不透明な茶色です。翅全体が不透明なセミは、世界でもめずらしいとされています。ニイニイゼミの前の翅は茶色のまだら模様で、木の幹にとまると樹皮にまぎれて見えにくくなります。

セミの前の翅の表面は、ろうでできたとても小さな円すい形の突起におおわれていて、水をはじきます。雨つぶは表面を転がり、よごれといっしょに落ちていきます。また、一部のセミの翅では、ナノメートルの大きさのこの突起が、とまった細菌の膜を引きさいて殺すことが実験で確かめられています。

白い背景の上の、茶色い翅をたたんだセミの標本
アブラゼミの標本写真: Tanja Popp(CC BY-SA 4.0) / Wikimedia Commons

木の幹にとまる、灰色と茶色のまだら模様の小さなセミ
木の幹にとけこむニイニイゼミ写真: Σ64(CC BY 3.0) / Wikimedia Commons

飛ぶのは下手?

セミは、ふつう飛ぶ力が高く、羽音を立てながらかなりの速さで飛びます。ただ、とまれそうだと判断した場所に手あたりしだいに突っこんでいく習性があるため、壁や枝にぶつかりながら飛ぶこともよくあります。また、セミはジャンプが得意ではなく、歩いたり走ったりするのもあまりうまくありません。数cmより遠くへ動くときは、たいてい飛んで移動します。

なぜ鳴く? どこから音が出る?(鳴き声のしくみ)

セミの大きな鳴き声は、オスがメスを呼ぶための声です。メスはふつう鳴きません。鳴き声は種ごとにちがい、同じ種の相手だけを呼び寄せられるようになっています。オスは、敵につかまったときなどにも、とぎれとぎれの乱れた声を出します。メスが近くに来ると、呼ぶ声とは別の、静かな求愛の声を出す種もいます。

音を出すのは、オスの腹部のつけ根の左右にある「発音膜(ティンバル)」です。太鼓の皮のような膜(発音膜)を筋肉で引いてへこませ、筋肉がゆるむと膜がすばやくもとにもどります。この動きで音が出ます。膜には、弾力のあるたんぱく質(レシリン)がふくまれています。これをとても速くくり返すことで、カチカチという音がつながった声に聞こえるのです。音は、気管が広がってできた腹部の大きな空洞(共鳴室)でひびいて、大きくなります。ヒグラシのオスの腹部は、共鳴室が大きく発達していて、光がすけるほどです。

オスのおなか側には「腹弁(ふくべん)」という板があります。腹弁も、鳴くための器官の一部です。クマゼミのオスには大きな橙色の腹弁があり、ツクツクボウシのオスの腹弁は、大きな縦長の三角形をしています。

ごつごつした木の幹にとまる、黒い体と透明な翅のセミ
クマゼミ(京都)写真: Syrio(CC BY-SA 4.0) / Wikimedia Commons

セミの声は、とても大きくなることがあります。120デシベルに達する種もいて、昆虫の出す音の中でもとくに大きな部類です。すぐ近くで聞くと、人の耳がずっと聞こえにくくなるおそれがあるほどです。セミ科のセミは、オスにもメスにも、音を聞くための膜(鼓膜)があります。オスは鳴いているあいだ、自分の鼓膜が働かないようにして、耳をいためないようにしています。

人の耳には、セミの声がどこから聞こえてくるのか、正確には分かりにくいことがよくあります。音の高さがほぼ一定で、とぎれずに続き、何匹もがあちこちで鳴くためです。

鳴く時間帯は種によってちがう

日本のセミは、種によって鳴く時間帯がだいたい決まっていて、種を見分ける手がかりになります。ニイニイゼミは一日中、クマゼミとミンミンゼミは午前中、アブラゼミとツクツクボウシは午後、ヒグラシは朝と夕方によく鳴きます。夏とはいっても、真昼の暑い時間に鳴くセミは少なく、すずしい朝や夕方のほうが多くの種類の声が聞かれます。ニイニイゼミ、アブラゼミ、クマゼミ、ミンミンゼミなどは、数が多い時期や、街灯などで明るい場所では、夜に鳴くこともあります。

ツクツクボウシの鳴き声の研究

ツクツクボウシのオスは、「ジー…ツクツクツク…オーシ! ツクツクオーシ!」と鳴き始め、「ツクツクオーシ!」を十数回くり返しながらだんだん速くなり、「ウイヨース!」を何回かくり返して、最後に「ジー…」と鳴き終わります。和名も、この鳴き声の聞きなしがもとになっています。

2023年に発表された研究では、ツクツクボウシのオスに、なかまの鳴き声の中心部分の前半と後半を別々に聞かせる実験をしました。すると、オスは前半をふくむ音を聞いたときに、はっきり多く鳴き返しました。前半と後半で、いちばん強く出ている音の高さ(周波数)はほぼ同じだったため、オスどうしは近い距離で、音の時間的なパターンを手がかりにしているのかもしれません。

2025年には、オスどうしのかけ合いを調べた研究も発表されました。ツクツクボウシのオスは、短く、速いテンポでくり返す声(タイプI)と、長めで、ゆっくりくり返す声(タイプII)の2種類を使います。実験室で何匹かのオスの声を分析すると、あるオスがタイプIの声を出すと、すぐあとに別のオスがタイプIIの声を出すこと、ときには2匹で声のタイプを入れかえることが分かりました。ただし、相手の声に自分の声を重ねるための作戦だという考えは、23匹のうち2匹にしかあてはまらず、このかけ合いの役割はまだ分かっていません。

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セミの声を人が利用しようという研究もあります。2025年には、セミの鳴くための筋肉に電気で刺激をあたえて鳴かせ、スピーカーのように使う方法が発表されました。

日本のセミの種類と季節(何月から何月まで?)

セミは、熱帯や亜熱帯の森林を中心に分布していますが、寒い地方の森林や草原にすむものもいます。日本にも、北海道から南の島々まで、いろいろなセミがすんでいます。身近な6種を紹介します。

  • アブラゼミ:翅の先までの長さが56〜60mmほどで、クマゼミより少し小さく、ミンミンゼミと同じくらいの大きさです。茶色の不透明な翅が特徴です。北海道から屋久島まで分布し、日本でもっとも身近なセミの一つです。成虫は7月から9月上旬ごろに多く、午後の日がかたむくころから日没後のうす明るい時間まで、「ジリジリジリ…」と大きな声で鳴きます。
  • ミンミンゼミ:「ミーンミンミンミンミー…」という鳴き声で知られます。黒い体に水色や緑色の模様があり、日本のセミとしてはあざやかな色をしています。東日本では平地の森林や都市の緑地にも多くいますが、西日本では都市にはほとんどおらず、少し標高の高い山地にすんでいます。成虫は7月〜9月上旬ごろに出ます。
  • クマゼミ:体長4〜5cmの大型のセミで、背中はつやのある黒色、翅は透明です。「シャシャシャ…」「センセンセン…」と聞こえる大きな声で、おもに午前中に鳴きます。成虫は7月上旬〜9月上旬ごろに出て、とくに7月下旬〜8月上旬のいちばん暑いころに多くなります。南方系のセミで、西日本の平地では都市でもふつうに見られます。
  • ヒグラシ:体は赤茶色で、頭や胸に緑色の部分がある中型のセミで、日本の固有種です。日の出前や日の入り後のうす暗いときに「カナカナカナ…」と高い声で鳴き、「カナカナ」とも呼ばれます。晩夏のイメージがありますが、成虫は(地域にもよりますが)6月下旬ごろから出て、ほかのセミより早く鳴き始めます。
  • ツクツクボウシ:体長30mm前後のセミで、「ツクツクオーシ」と聞こえる鳴き声が特徴です。成虫は7月から出ますが、ほかのセミが少なくなる8月下旬〜9月上旬ごろに声がよく目立つようになり、本土では夏の終わりを知らせる昆虫とされています。
  • ニイニイゼミ:体長20〜24mmの小型で丸っこいセミで、生きているときは全身に白っぽい粉をふいています。翅を半分開いて「チー…ジー…」とくり返し鳴きます。成虫は(地域にもよりますが)6月下旬ごろから出て、ほかのセミより早く鳴き始めます。

白っぽい木の枝にとまる、黒地に青緑色の模様があるセミ
ミンミンゼミ写真: Alpsdake(CC BY-SA 4.0) / Wikimedia Commons

こけのついた白っぽい木の幹にとまる、赤茶色の体に緑の模様があるセミ
鳴いているヒグラシのオス写真: Alpsdake(CC BY-SA 4.0) / Wikimedia Commons

セミは夏だけ? 何月から何月まで?

日本では、成虫が出てくるのはおもに夏です。ただし、ハルゼミのように春に出てくるセミや、チョウセンケナガニイニイのように10月〜11月の秋に出てくるセミもいます。また近年は、東京などの都市部や九州などで、10月に入ってもわずかにセミが鳴いていることが珍しくなくなりました。

北や東へ広がるクマゼミ

クマゼミは、関東地方で数を増やしています。昆虫学者の沼田英治さんの2019年時点の見方では、関東でクマゼミが見られる北の限界は、50年前の神奈川県から、東京都内や茨城県まで北上しました。原因としては、温暖化や、木を植えるときに卵や幼虫がいっしょに運ばれたことが考えられています。セミの幼虫は土の中で何年もすごすため、植えた木の根に幼虫がまじっていると、何年もクマゼミが羽化し続けることになります。

セミの初鳴きと気象庁

気象庁は1953年から、季節の変化に応じた生き物のようすを目や耳で確かめて記録する「生物季節観測」を行ってきました。セミでは、アブラゼミとヒグラシが全国共通の観測種目で、ニイニイゼミ、ミンミンゼミ、クマゼミ、ツクツクボウシなども、各地の気象台が選んで観測していました。しかし2021年1月からは、気象庁の観測は植物の6種目9現象だけになりました。その後、気象庁は、気象庁と国立環境研究所が事務局となって、全国の市民の手も借りて調査を続ける努力をすると表明しました。

何を食べる?(幼虫も成虫も木の汁)

セミは、幼虫も成虫も、植物の汁を吸って生きています。幼虫は土の中で木の根に、成虫は木の幹や枝に、針のような口をさしこみます。成虫は何も食べないと思われがちですが、実際には木の汁を吸っています。

吸っているのは、おもに木の「道管液」です。道管は、根から吸い上げた水が通る管で、その中の液はほとんどが水です。栄養がとても少ない食べものですが、セミの幼虫は木の根からこれを吸って育ちます。なお成虫については、糖分の多い「師管液」を吸っているとする説もあります。

うすい汁だけで育つために、セミは体の中に共生する微生物の助けを借りています。セミと共生する細菌「スルキア」と「ホジキニア」は、必須アミノ酸などを作る働きに特化していて、セミが植物の汁で生きられるようにしています。2018年に発表された研究では、日本のセミ24種を調べたところ、すべての種がスルキアをもっていましたが、ホジキニアが残っていたのは一部の種だけでした。残りの15種は、ホジキニアのかわりに、酵母のような菌類を共生させていました。この菌類は、セミに寄生する冬虫夏草のなかま(オフィオコルディケプス属)と近い関係にあり、もとは寄生していた菌が、くり返しセミの共生相手に入れかわってきたと考えられています。

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セミのおしっこ(逃げるときにかけられる液)

セミをつかまえようとして逃げられたとき、液体をかけられることがあります。これは、吸った木の汁の余分な水分などを体の外に出しているもので、敵をねらってかけているわけではありません。そのため、飛び立つときだけでなく、木の汁を吸っているあいだにもよく出しています。

セミは、水分の多い道管液をたくさん吸うため、大量の液を出します。2024年に発表された研究によると、体重わずか2gほどのセミが、とても小さな穴から、液をひとつながりの流れ(ジェット)として勢いよく出していました。それまでの考え方では、おしっこをジェットとして出せるのは、体重3kgより大きな動物にかぎられるとされていました。セミの出す液の速さは最大で秒速3mに達し、調べられた動物の中では、ゾウやウマなどの哺乳類をふくめてもっとも速いとされています。

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セミに近いなかまで、体長が数mmのヨコバイ(シャープシューター)も、道管液だけを吸って生きています。道管液は95%が水で、栄養がとても少ない食べものです。2023年に発表された研究で、このヨコバイは、おしりの先にある小さな突起で、液を1滴ずつはじき飛ばしていることが分かりました。突起の動きのタイミングを水滴のゆれに合わせることで、水滴を突起そのものより速く飛ばせます。小さな虫にとっては、ジェットで出すより、この方法のほうが少ないエネルギーですむと考えられています。

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一生と寿命(土の中で何年? 成虫は1週間?)

どこに卵を産む? どこで生まれる?

交尾を終えたメスは、枯れ木に産卵管をさしこんで卵を産みます。移動しながら次々に産むので、卵を産まれた枯れ木は、表面が線のようにささくれ立ちます。アメリカの周期ゼミでは、メスが若い枝の樹皮にV字形の切れこみを作り、1か所に20個ほど、あわせて600個以上の卵を産みます。

ニイニイゼミのように早い時期に出てくるセミの卵は、その年の秋にかえりますが、多くのセミの卵は、次の年の梅雨のころにかえります。生まれたばかりの幼虫は半とうめいの白色で、枯れ木の表面に出て最初の脱皮をしたあと、地面に落ちて土の中にもぐります。

幼虫は、太いかまのような前脚で木の根にそって穴をほり、口を根にさして汁を吸って育ちます。すんでいるのは、ふつう地面から15〜61cmほどの深さです。土の中で数回脱皮し、アブラゼミでは4回脱皮します。土の中にもモグラやケラ、ゴミムシなどの天敵がいて、「冬虫夏草」と呼ばれる菌類に体をおかされて死ぬ幼虫もいます。たとえば「セミタケ」は、日本では土の中のニイニイゼミの幼虫にとりつき、地上に棒のような形の子実体(キノコの部分)をのばす菌です。

土の中で何年すごす?

多くのセミの一生は2〜5年です。毎年夏に見られるセミも、1年で育つわけではありません。毎年少しずつ成虫が出てくる、ふつうのセミの一生は、分かっているものでは2〜10年ほどです。幼虫として土の中ですごす期間は種によってちがい、多くは数年ですが、長い種では17年にもなります。昆虫としてはとても長生きです。

羽化(夕方に地上へ)

土の中の若い幼虫は全身が白く、目も退化していますが、最後の段階の幼虫になると体が茶色くなり、大きな白い複眼ができます。羽化が近づくと、地面の近くまで縦穴をほって、地上のようすをうかがうようになります。

晴れた日の夕方、幼虫は地上に出て、近くの木などに登っていきます。羽化のあいだは身を守れず、スズメバチやアリにおそわれることもあるため、多くは暗くなってから羽化を始めます。日がしずむと、木の幹や葉につめを立て、背中が割れて白い成虫が顔を出します。夜のあいだに翅をのばし、敵が現れる朝までには飛べる状態になるのです。翌朝には体がかたまって色がつきますが、オスはすぐには鳴けず、数日は小さな音しか出せません。

黒い背景に、枝の上で幼虫の殻から出て翅をのばしていくセミの9枚の連続写真
周期ゼミの羽化(連続写真)写真: G. Edward Johnson(CC BY 4.0) / Wikimedia Commons

2026年に発表された研究では、アメリカの周期ゼミの幼虫が、地上に出たあと、暗いものに向かって進む性質(走暗性)を使って木を見つけていることが分かりました。幼虫は、出てきた方角や時刻に関係なく、ぽつんと立つ木に向かってまっすぐ歩き、歩いた距離は最短の道のりより15%長いだけでした。目を一時的にかくされた幼虫は、あちこちさまよい、木にはほとんどたどり着けませんでした。

羽化したあとの抜け殻は、木の幹などにしがみついたまま残ります。抜け殻の形は種によってちがい、たとえばニイニイゼミの抜け殻は小さくて丸っこく、全身に泥をかぶっています。

白い台の上の、茶色いセミの抜け殻と金属の定規
セミの抜け殻写真: Eavesdropper6735(CC BY 4.0) / Wikimedia Commons

成虫の寿命は1週間?

セミの成虫は「1〜2週間しか生きない」と長くいわれてきました。しかし2000年代ごろから野外での調査が進み、1か月ほど生きる成虫もいることがわかってきました。2005年の大阪での調査では、30日生きたクマゼミのメスが見つかりました。2019年には、岡山県笠岡市の高校生が独自の方法で調べ、アブラゼミが最長32日間、ツクツクボウシが最長26日間、クマゼミが最長15日間生きたことを確かめて話題になりました。

「1〜2週間」という俗説が広まったのは、成虫を飼うのがむずかしく、飼ってもすぐに死んでしまうことが多いためと考えられています。また野外では、多くのセミが寿命を迎える前に、鳥などに食べられてしまいます。セミの成虫は、オスもメスも、土から出て数週間のうちに死にます。自然の中での成虫の寿命は、2か月に満たないとされています。

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セミの天敵

セミは、鳥や哺乳類、コウモリ、ハチ、カマキリ、クモ、ムシヒキアブなど、たくさんの動物に食べられます。日本では、スズメバチのなかまのモンスズメバチが、幼虫を育てるえものとして、おもにセミの成虫をとらえることで知られています。北日本では、ヒグマが地面をほって、羽化前のセミの幼虫を食べます。鳴き声を手がかりにセミを探すハエ(ニクバエのなかま)もいます。

身を守るため、多くのセミは樹皮にそっくりな色や模様をしています。とまっているときは、半分すき通った翅を体の上にたたんで木にぴったりつけるので、見つけにくくなります。敵におそわれそうになると、死んだふりをする種もいます。

13年・17年ごとに大発生する「周期ゼミ(素数ゼミ)」

北アメリカの東部には、13年または17年ごとに、同じ地域でいっせいに成虫が地上に出てくるセミがいます。マジシカダ属(Magicicada)の7種で、「周期ゼミ」と呼ばれます。13も17も素数(1とその数でしか割り切れない数)なので、「素数ゼミ」とも呼ばれます。17年ゼミが3種、13年ゼミが4種いて、17年ゼミは北部に、13年ゼミは南部にすんでいます。

周期ゼミは、一生のおよそ99.5%を幼虫として土の中ですごします。13年目か17年目の春、4月下旬から6月上旬にかけて、深さ20cmほどの地温が17.9℃をこえると、夕方に幼虫がいっせいに地上に出てきます。多いときには、1平方メートルあたり370匹にもなります。成虫は赤い複眼をもち、体長は2.4〜3.3cmほどです。成虫が活動するのは4〜6週間ほどで、オスは集まって合唱し、その音はすぐ近くで100デシベルに達することもあります。

白い壁にとまる、赤い目と黒い体、オレンジ色の翅脈をもつセミ
17年ゼミ(第13集団)写真: Joelmills(CC BY-SA 3.0) / Wikimedia Commons

なぜ素数の年なの?

なぜ13年と17年なのかについては、いくつかの考えがあります。1つは、天敵と出会いにくくするためという考えです。たとえばセミの周期が12年だったら、3年や4年の周期で発生する寄生虫とは、毎回同じ年に出会ってしまいます。13年なら、3年周期の相手とは39年に1度、4年周期の相手とは52年に1度しか重なりません。また、いっせいに大量に出てくることで、天敵が食べきれないほどの数になり、1匹1匹が食べられる危険が下がると考えられています。

もう1つは、吉村仁さんが唱えた、氷河期と結びつけた考えです。周期のちがう集団どうしが交雑すると、子どもの周期が乱れて、大発生の年からずれてしまいます。そのため、ほかの周期と重なりにくい素数の周期のセミが生き残った、と説明しています。2015年に発表された研究では、コンピューターで1匹1匹の成長をまねたモデルを使い、寒い環境では、幼虫の期間がとても長くなって成虫の数がへり、交尾の相手を見つけにくくなることで、同じ年にそろって出てくる性質が進化しうることが示されました。

周期ゼミが、土の中で何年たったかを数える方法も研究されています。幼虫は、木が葉を落としてまた葉を出す1年ごとの変化を、吸っている汁の変化から感じとっているようです。1年のうちに2回、葉を落としてまた出させた木で育ったセミは、17年ではなく16年で地上に出てきました。

2024年は221年ぶりの「同時発生」

周期ゼミは、地上に出る年によって「年次集団(ブルード)」に分けられ、今も残っているのは15集団です(記録では、ほかに2集団が絶滅しました)。2024年には、17年ゼミの第13集団と、13年ゼミの第19集団が、1803年以来221年ぶりに同じ年に出てきました。ただし、2つの集団の分布が重なるのは、イリノイ州のごく一部だけでした。次にこの2集団がそろうのは、2245年です。

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周期的に大発生するセミは、ほかにもインド北東部の Chremistica ribhoi(4年ごと)や、フィジーの Raiateana knowlesi(8年ごと)が報告されています。

セミをあやつる菌「マッソスポラ」

周期ゼミには、マッソスポラ(Massospora cicadina)という菌がとりつきます。この菌に感染したセミは、生きたまま腹部の後ろの節が取れて、そこに白い胞子のかたまりが現れます。感染したセミは子孫を残せなくなりますが、生きて動き回りながら胞子をまき散らします。マッソスポラのなかまには、ほかにも、それぞれ決まった種のセミにとりつくものが知られています。

2018年に発表された研究では、胞子を作る段階(ステージI)の菌に感染したオスが、本来は交尾を受け入れるメスだけが出す「翅をはじく合図」を出すことが報告されました。この合図にさそわれたオスが交尾しようと近づくことで、胞子がほかのセミに広がると考えられています。2019年には、マッソスポラに感染した周期ゼミから、アンフェタミンのなかまの「カチノン」が、別のマッソスポラに感染したセミからは、キノコにふくまれる幻覚物質「シロシビン」が見つかりました。こうした物質が、セミの行動を変えているのかもしれません。

緑の葉の上にとまる、腹部の後ろが白っぽいかたまりになった黒いセミ
マッソスポラに感染した周期ゼミ写真: G. Edward Johnson(CC BY 4.0) / Wikimedia Commons

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名前の由来と人とのかかわり

「蝉」という漢字

セミは漢字で「蝉」と書きます。もとの字は「蟬」で、「蝉」はそれを略した形です。音読みは「セン」で、クマゼミの「センセンセン…」と聞こえる鳴き声が「蝉」の語源になったという説もあります。

セミの抜け殻は、古い言葉で「空蟬(うつせみ)」と呼ばれ、この世に生きる身を表す「現身(うつしみ)」と結びつけて考えられてきました。地上に出ると短いあいだに死んでいくセミは、日本では古くから、無常を感じさせる「もののあはれ」の代表でした。『源氏物語』では、光源氏が、ある女性が衣をそっとぬぐようすを、セミが殻をぬぐようすに重ねて、女性をセミにたとえています。

俳句のセミ(閑さや岩にしみ入る蝉の声)

セミは俳句によく詠まれ、種類によって春・夏・秋をあらわします。たとえばヒグラシは秋の季語です。

よく知られるのが、松尾芭蕉が1689年に出羽国(今の山形市)の立石寺(山寺)で詠んだ「閑さや岩にしみ入る蝉の声」(しずかさや いわにしみいる せみのこえ)です。1926年、歌人の斎藤茂吉がこの句のセミを「アブラゼミ」だと書いたことから、セミの種類をめぐる論争が起こりました。小宮豊隆は、句を詠んだ時期にはアブラゼミはまだ鳴いていないことなどから、「ニイニイゼミ」だと主張しました。茂吉は実地の調査などをもとに、1932年に誤りを認め、ニイニイゼミだったと結論づけました。

再生のしるし、食べもの、薬

中国では、地中から出てきて飛び立つセミは、生き返りや再生のしるしとされてきました。玉をセミの形にほった飾りが新石器時代から作られ、西周のころには、身分の高い人が亡くなると、この「玉蟬」を口に入れてほうむる習わしが生まれました。古代ギリシャのアリストテレスも、セミを再生と不死の象徴としてあつかっています。

茶色い布の上に置かれた、セミの形にほられた白っぽい玉
漢の時代の玉蟬写真: Gary Lee Todd(CC0) / Wikimedia Commons

中国や東南アジア、アメリカの一部、沖縄などには、セミを食べる習慣があります。中国の河南省では、羽化する直前に土から出てきた幼虫をとらえ、素揚げにして塩をふって食べます。北アメリカの先住民オノンダーガの人々にとって、17年ゼミは伝統的な食べものです。ただしアメリカの食品医薬品局(FDA)は、セミなどの昆虫はエビやロブスターなどの甲殻類と近い関係にあることから、甲殻類アレルギーの人はセミを食べないよう注意をよびかけました。

セミの抜け殻は、中国では古くから「蟬蛻(せんたい)」(蟬退とも書く)という生薬として使われてきました。かゆみを止めたり熱を下げたりする作用があるとされ、日本でも、蟬退をふくむ漢方薬(消風散)が使われています。

害虫になる? なぜ駆除しないの?

セミは、人をかんだり、毒針で刺したりする虫ではありません。ただ、まれに人の腕を木の枝とまちがえて口をさそうとし、少し痛むことがあります。セミに毒はなく、セミやその口が病気をうつすという証拠もありません。

セミは大きな農業害虫ではありませんが、被害を出すこともあります。日本では、とくにナシやリンゴの果樹園で、果実の汁を吸ったり、果実の袋の上から卵を産んで傷をつけたりする害虫として知られています。クマゼミは、光ファイバーのケーブルを枯れ枝とまちがえて卵を産み、断線させることがあり、NTT西日本の地域では、2005年と2006年にそれぞれ1,000件近い被害が報告されました。周期ゼミが大発生する年には、メスが卵を産みこんだ若い枝が枯れることがあります。

いっぽうで、殺虫剤でセミを駆除すると、ほかの生き物に害が出るおそれもあります。17年ゼミの第10集団が大発生したとき、ワシントンD.C.の近くでは、野鳥の異常な行動や不審な死が相次ぎました。専門家は、人々がセミにまいた殺虫剤の成分が死がいに残り、それを食べた野鳥の神経がおかされた可能性があると考えています。バージニア州の野生生物資源局は、セミへの殺虫剤の散布をやめることが大切だと説明しています。

よくある疑問

セミは何類? 何科? 英語では何という?
セミは昆虫で、カメムシと同じカメムシ目(半翅目)に入ります。分類では「セミ上科」というグループで、セミ科とムカシゼミ科(オーストラリアの2種だけ)に分かれ、ほとんどのセミはセミ科です。英語では cicada(シケイダ)と呼びます。
セミはなぜ鳴くの? どこから音を出している?
大きな声で鳴くのはオスで、メスを呼ぶためです。音は、腹部のつけ根の左右にある発音膜(ティンバル)を筋肉ですばやくへこませて出し、空洞になった腹部(共鳴室)でひびかせて大きくしています。敵につかまったときにも鳴きます。
セミの寿命は? 成虫は本当に1週間で死ぬの?
成虫は1〜2週間しか生きないといわれてきましたが、野外の調査で1か月ほど生きるものもいることがわかってきました。寿命は種や環境によってちがいます。2019年の高校生の調査では、アブラゼミが最長32日間生きました。飼うのがむずかしいことや、野外では多くが鳥などに食べられることから、短いと思われてきたようです。
セミは何年、土の中にいるの?
多くのセミの一生は2〜5年で、その大部分を幼虫として土の中ですごします。幼虫の期間は種によってちがい、長い種では17年にもなります。アメリカの周期ゼミは、13年または17年ごとにいっせいに地上に出てきます。
セミは何を食べる? 幼虫は何を食べているの?
幼虫も成虫も、針のような口を木にさして植物の汁を吸っています。幼虫は土の中で木の根から、成虫は幹や枝から、おもに道管液(根から吸い上げられた、ほとんどが水の液)を吸います。栄養が少ないため、体の中の共生微生物の助けを借りています。
セミは何月から何月まで鳴いている?
日本では、ニイニイゼミやヒグラシが6月下旬ごろから鳴き始め、アブラゼミ、ミンミンゼミ、クマゼミは7月から9月上旬ごろに多く、ツクツクボウシは8月下旬〜9月上旬ごろに目立ちます。春に出るハルゼミや、10月〜11月に出るチョウセンケナガニイニイもいます。
セミの羽は何枚? 透明なの?
セミの翅は前と後ろに2対、あわせて4枚です。多くのセミの翅はすき通っていますが、アブラゼミの翅は不透明な茶色で、翅全体が不透明なセミは世界でもめずらしいとされています。ニイニイゼミの前の翅は茶色のまだら模様です。
セミは害虫? なぜ駆除しないの?
セミに毒はなく、人をかむこともありません。ただ、まれに人の腕を木の枝とまちがえて口をさそうとし、少し痛むことがあります。大きな農業害虫でもありませんが、果樹園では害虫とされることがあり、クマゼミが光ファイバーのケーブルに卵を産んで断線させることもあります。殺虫剤をまくと、死がいを食べた野鳥に害が出るおそれも指摘されています。

ナゾロジーで読む17本

  1. 01 ツクツクボウシのオスは相手の鳴き声の直後に「合の手」を入れると判明
  2. 02 セミの命はなぜ「七日」と思われてきたのか――日本文化と近代教育から読み解く
  3. 03 「動物たちのおしっこの法則(イグノーベル賞)」にセミだけ従っていなかった
  4. 04 セミをゾンビ化させる恐怖の菌「マッソスポラ」はオスにメスの振りをさせて同性も襲う
  5. 05 「セミはなぜ何年も土の中で過ごすのか?」昆虫の特殊な進化の裏に潜む秘密【ナゾロジー×産総研 未解明のナゾに挑む研究者たち】

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同じ昆虫

参考文献

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  9. Kodama T, Kasuya E, Tatsuta H (2023) Difference in the responses of male cicada Meimuna opalifera to the two parts of conspecific calling song. Entomological Science
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  12. Wikipedia「セミ」(日本語版)
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  27. Wikidata「セミ上科 Cicadoidea」(Q1947892)

表紙の写真: The Nature Box(CC BY 4.0) / Wikimedia Commons
ほかの写真のクレジットは、それぞれの写真のページにあります。
この図鑑は、参考文献の資料をもとに、ナゾロジー編集部がまとめています。