鱗粉でいろどられた4枚の翅で、
花から花へ、ときには海をこえて旅をする。
- ナゾロジーの記事
- 25本
- 日本のチョウ
- 約250種
- 大西洋をこえたヒメアカタテハ
- 4,200km以上
チョウは、鱗粉におおわれた4枚の翅をもつ昆虫で、ガと同じチョウ目のなかまです。世界に1万7600〜2万種ほど、日本には約250種がいます。卵・幼虫・さなぎ・成虫と姿を変え、海をこえて渡るものもいます。
図鑑データ
- 分類
- 動物界 › 節足動物門 › 昆虫綱 › チョウ目(鱗翅目) › アゲハチョウ上科
- 学名
- Papilionoidea(アゲハチョウ上科)
- 英名
- butterfly(バタフライ)
- 漢字
- 蝶
- 種の数
- 世界に1万7600〜2万種ほど(資料によってちがう)。日本に約250種
- 大きさ
- 前翅の長さ9〜16mmほどのヤマトシジミから、メスがはねを広げると25〜28cmになるアレクサンドラトリバネアゲハまで
- 体のつくり
- 頭・胸・腹に分かれ、あしは6本。鱗粉におおわれた翅が4枚。口はストローのような口吻、触角の先はこん棒のようにふくらむ
- すみか
- 南極大陸をのぞく世界の陸地。森、草原、高い山など
- 食べもの
- 成虫は花の蜜、樹液、くさった果物など。幼虫はおもに植物の葉(種ごとに食べる植物がほぼ決まっている)
- 一生
- 卵 → 幼虫 → さなぎ → 成虫(完全変態)
- 成虫の寿命
- 種によって1週間ほどから1年近くまで。モンシロチョウは2〜3週間ほど
- 日本の国蝶
- オオムラサキ(1957年に日本昆虫学会が選定)
チョウとは(何類? 何科?)
チョウは、4枚のはねをもつ昆虫です。分類では「チョウ目(鱗翅目=りんしもく)」というグループに入り、その中の「アゲハチョウ上科」にまとめられる生き物を、チョウと呼びます。チョウ目には、チョウのほかに、ガ(蛾)がふくまれます。チョウは、ガのなかまから進化してきたグループです。
チョウは7つの科に分けられます。アゲハチョウ科、シロチョウ科、シジミチョウ科、タテハチョウ科、セセリチョウ科と、日本にはいないシジミタテハ科、シャクガモドキ科です。身近なナミアゲハはアゲハチョウ科、モンシロチョウはシロチョウ科、国蝶のオオムラサキはタテハチョウ科のチョウです。
世界で知られているチョウの種の数は、資料によって1万7600〜2万種ほどです。日本では、約250種が知られています。

2023年に発表された研究では、約2,300種のチョウの遺伝子を調べて、チョウの大きな系統樹をつくりました。その結果、チョウは約1億年前に、今のアメリカ大陸のあたりで生まれたと推定されました。最初のチョウの幼虫は、マメ科の植物を食べていたと考えられています。
チョウの体はこわれやすく、化石はあまり多くありません。古いものとしては、デンマークの約5500万年前の地層から見つかったセセリチョウのなかまの化石があります。日本でも、兵庫県の鮮新世の終わりから更新世のはじめの地層から、はねを広げると84mmほどになる大きな新種のチョウの化石が見つかっています(2025年の報告)。
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チョウとガのちがい
チョウとガを分ける、はっきりした決まりはありません。ガは「チョウでないもの」としか言えないグループで、チョウとガに分けるのは、生き物の系統にそった分け方ではないのです。それでも、多くのチョウには次のような特徴があります。
- 触角:見た目でいちばん役に立つのが触角です。チョウの触角は細長く、先がこん棒のようにふくらみます(セセリチョウは、先がまた細くとがって、かぎのように曲がります)。ガの触角は、くしのような形や糸のような形のものが多くいます。
- 活動する時間:チョウのほとんどは昼に活動します。ガは夜に飛ぶものが多いですが、昼に飛ぶガもいます。
- 止まり方:チョウの多くは、止まるときに翅を背中の上で閉じて立てます。ガの多くは、翅を平らに広げるか、体にそって折りたたみます。
- さなぎ:チョウのさなぎは、ふつうまゆに包まれていません。ガには、まゆをつくってその中でさなぎになるものが多くいます。
日本にいるチョウ目の昆虫は約6000種で、そのうちチョウと呼ばれるのは約250種、ほかはすべてガです。世界全体でも、知られているガの種の数は、チョウの8倍以上にもなります。
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体のつくりと特徴(翅・鱗粉・あし)
チョウの体は、ほかの昆虫と同じように、頭・胸・腹の3つに分かれています。
- 頭:大きな2つの複眼と、1対の触角があります。触角の先には、においを感じるしくみが集まっています。口は、ストローのように細長い「口吻(こうふん)」です。使わないときは、くるくると巻いてしまっておきます。
- 胸:3つの節があり、それぞれに1対ずつ、合わせて6本のあしがあります。ただし、タテハチョウのなかまは前あしが短く退化していて、あしが4本しかないように見えます。翅は、胸の2つ目と3つ目の節についています。
- 腹:10の節に分かれていて、腸や、子どもを残すための器官が入っています。

チョウのはねは「翅(はね)」とも書きます。翅は前と後ろに2枚ずつ、合わせて4枚です。前翅のふちには太い翅脈(しみゃく)があって、翅を丈夫にしています。前翅と後翅は、かぎでつながってはいませんが、重なった部分がこすれ合って、そろって動きます。
翅の表面は、屋根の瓦のように重なった小さなうろこ「鱗粉(りんぷん)」でおおわれています。鱗粉は、体の毛が形を変えたもので、1つの細胞からできていて、根もとからはがれやすくなっています。グループの学名 Lepidoptera(鱗翅目)も、ギリシャ語の「うろこ」と「翼」を組み合わせた言葉です。

大きさは、種によって大きくちがいます。世界最大のチョウとして知られるのは、パプアニューギニア東部の森にすむアレクサンドラトリバネアゲハで、メスがはねを広げると25〜28cmほどにもなります。一方、日本の道ばたなどでよく見られるヤマトシジミは、前翅の長さが9〜16mmほどの小さなチョウです。
翅の色のひみつ(なぜきれい?)
チョウの翅の色は、1枚1枚の鱗粉がつくっています。色のでき方には、大きく2つあります。
- 色素の色:黒や茶色はメラニン、黄色は尿酸のなかまやフラボンという色素によるものです。
- 構造色:モルフォチョウの青や、虹色に光る色などは、色素ではなく、鱗粉や毛のとても細かいつくりが光をはね返して生まれます。これを「構造色」といいます。中南米のモルフォチョウの、金属のように光る青い翅がその例です。

多くのチョウの、あざやかな色やもようには、毒があることを天敵に知らせたり、オスとメスが相手を見つけたりする役わりがあります。チョウの翅の色は、いわば目で見る「合図」なのです。
真っ黒な翅にも、ひみつがあります。2020年の研究では、いろいろなチョウの「超黒色」の鱗粉を調べました。一部のアゲハチョウのなかまでは、光の反射が0.2%近くしかありません。真っ黒な鱗粉の中には、すき間が多く表面積の大きい細かいつくりがあり、光を吸収して、表面での反射をおさえていました。研究者は、まわりの色をより目立たせるためではないかと考えています。
反対に、翅がすき通っているチョウもいます。グラスウィング(Greta oto)というチョウの透明な部分では、鱗粉が細い毛のような形で数も少なく、翅の膜の表面にある、ろうでできたとても小さな柱が、光の反射をおさえていることが分かりました(2021年の研究)。
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すぐれた感覚(チョウの能力)
チョウは目がよく、多くの種は、人には見えない紫外線を見ることができます。モンシロチョウの翅は、紫外線で見るとオスとメスで色がちがい、モンシロチョウはこのちがいでオスとメスを見分けているとみられています。
味を感じるしくみは、口のそばと、あしの先にあります。あしの先のしくみは、ふれたものの味だけを感じます。ナミアゲハのメスは、前あしの先で葉をたたくようにして、植物から出る化学物質を確かめ、幼虫が食べられる植物かどうかを見分けてから卵を産みます。音を聞く器官をもつチョウや、音を出すチョウもいます。
どこにいる?(日本には約250種)
チョウは、南極大陸をのぞく世界中にすんでいます。大きな砂漠のまん中や、万年雪におおわれた標高6,000m以上の高い山をのぞけば、森や草原、高い山など、陸のほとんどの環境で見られます。種の数がとくに多いのは中南米で、7,700種ほどが知られています。
日本で見られるおもなチョウには、次のようなものがいます。
- モンシロチョウ:白い前翅に黒い紋があるシロチョウ科のチョウ。キャベツなどの畑のまわりで、3月ごろから10月ごろまで見られます。日本へは、江戸時代より前に外国から入ってきたと考えられています。
- ナミアゲハ:黒地に黄白色のもようが入る大きなアゲハチョウ。人家のまわりでよく見られ、幼虫はミカンやサンショウなどミカン科の葉を食べます。「アゲハ」「アゲハチョウ」とも呼ばれます。
- ヤマトシジミ:オスの翅の表が青い、小さなシジミチョウ。幼虫がカタバミを食べるため、道ばたや畑のまわり、人家の近くでよく見られます。
- ツマグロヒョウモン:メスの前翅の先が黒く、白い帯が入るタテハチョウ。本州では1980年代まで近畿地方と、それより西でしか見られませんでしたが、しだいに北へ広がり、今では関東地方や、東北地方の一部にもすみついています。地球温暖化や、幼虫が食べるパンジーの栽培が広まったことが影響しているとみられます。幼虫は、黒い体に赤いすじと、とげのような突起をもつケムシですが、さわってもやわらかく、刺したり毒をもったりはしません。
- オオムラサキ:日本の国蝶。オスの翅には、あざやかな青色の部分があります。雑木林にすみ、クヌギやコナラなどの樹液に集まります。

チョウのすむ場所は、気候の変化に合わせて動いています。2026年に発表された研究では、105の国と地域から、1,758種のチョウのすむ範囲が変わった記録を集めました。すると、80%の種ですむ範囲が広がっていて、すむ範囲の変化の79%は、気候変動や異常気象と関係していました。一方で、27%の種では、すむ範囲がせまくなっていました。
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人のくらしの変化も、チョウに影響します。日本の18の地域で、人が住まなくなった集落と、人が住んでいる集落のチョウをくらべた研究では、寒い気候を好み、ひらけた場所を使う種ほど、人がいなくなるとへる傾向がありました(2022年)。また、針葉樹の植林地の中を通る送電線の下の帯状の土地が、チョウにとって大切なすみかになっていることを示した研究もあります(2021年)。
何を食べる?(成虫は蜜、幼虫は葉)
成虫のおもな食べものは、花の蜜です。蜜からは、飛ぶためのエネルギーになる糖をとります。ほかにも、花粉、木の樹液、くさった果物、動物のふん、死がいの汁、しめった砂や土にとけたミネラルなどから栄養をとるチョウがいます。成虫は、口吻を使って液体を吸います。
水たまりやしめった地面に集まって水を吸う行動は、ナトリウムなどのミネラルをとるためと考えられています。多くの種では、これをするのはオスだけで、集めた栄養は、交尾のときにメスへの「贈りもの」になるという研究もあります。汗にふくまれる塩分にひかれて、人の体にとまることもあります。

中南米のドクチョウのなかま(Heliconius)は、口吻に集めた花粉も食べます。卵をつくるのに使うアミノ酸のうち、幼虫のときの食べものからとるのは20%だけで、残りは成虫になってから花粉などでおぎないます。そのため幼虫の期間が短くてすみ、成虫は数か月も生きます。場所の記憶にたよってえさを探すドクチョウのなかまでは、記憶や学習にかかわる脳の部分「キノコ体」が、近いなかまの中でもとくに大きくなっています(2023年の研究)。
幼虫は、ほとんどが植物の葉を食べます。どの植物を食べるか(食草)は、種ごとにほぼ決まっています。たとえばモンシロチョウはキャベツなどのアブラナ科、ナミアゲハはミカン科、オオムラサキはエノキの葉を食べます。2023年の研究でも、チョウの多くの種は、1つの科の植物しか食べない「スペシャリスト」であることが示されました。
ただし、シジミチョウのなかまには、変わった食べものの幼虫がいます。アブラムシを食べるゴイシシジミや、アリの卵や幼虫を食べるゴマシジミなどです。
飛び方と渡り(どうやって飛ぶ?)
チョウは、体に比べて大きな翅を羽ばたかせて飛びます。ほかの多くの昆虫と同じように、チョウが生み出す、体を持ち上げる力は、空気が一定に流れることを前提にした、ふつうの空気力学だけでは説明できません。タテハチョウのなかま(Vanessa atalanta)を風洞で調べた研究では、翅のふちにできるうず、羽ばたきでできた空気の流れの利用、翅を打ち合わせてからぱっと開く「クラップ・アンド・フリング」など、いくつものしくみを、すばやく切りかえながら使っていることが分かりました。
チョウのひらひらとした飛び方にも、意味があります。毒やほかの種のまねで身を守るしくみをもたないチョウは、ほかの種よりも、がたがたと予測しにくいコースで飛びます。これで、鳥などにつかまりにくくしていると考えられています。
チョウは、体温がある程度上がらないと飛べません。すずしいときは、体の向きを変えて翅に日光を当て、体を温めます。この日光浴は、すずしい朝によく見られます。
海をこえる「渡り」
季節に合わせて、長いきょりを渡るチョウもいます。
- アサギマダラ:長いきょりを移動することで知られる日本のチョウ。秋に日本本土から南西諸島や台湾へ南下するものが多く、翅に印をつけて放す調査で、渡りの道すじが調べられてきました。2011年には、和歌山県で放されたチョウが、83日後に約2,500km離れた香港でつかまりました。1日に200km以上移動したものも確認されています。
- オオカバマダラ:北アメリカのロッキー山脈より東のものは、秋にメキシコのミチョアカン州の山の森まで渡り、冬をこします。移動するきょりは4,000kmほどにもなります。越冬地では、集まったチョウの重みで枝がしなることもあるといいます。
- ヒメアカタテハ:世界の広い範囲にすむチョウ。イギリスのヒメアカタテハは、最大6世代をリレーしながら、熱帯アフリカと北極圏の間を往復する、約1万4000kmの渡りをしています。2024年の研究では、西アフリカから南アメリカのフランス領ギアナまで、大西洋をこえて4,200km以上を、5〜8日で飛んだチョウがいたことが示されました。この旅は、貿易風に助けられなければできなかったと考えられています。

オオカバマダラやヒメアカタテハの渡りは、何世代もかけて行われ、1匹が全部の道のりを飛ぶわけではありません。渡るチョウは、時刻に合わせて向きを補正する「太陽コンパス」で方角を知ります。かたよった光(偏光)を見分けることもできます。
ときには、ものすごい数のチョウがいっせいに移動することもあります。2019年3月には、大雨で砂漠の植物がよく育ったあと、何百万匹ものヒメアカタテハが、アメリカのカリフォルニア州南部を横切って移動しました。イギリスのヒメアカタテハの秋の渡りは高い空で行われるため、人の目にふれることが少ないことも分かっています。
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身を守るくふうとアリとのかかわり
チョウは、卵から成虫まで、鳥やクモ、ハチ、アリ、カマキリなど、たくさんの天敵にねらわれます。とくに、卵や幼虫、さなぎにとりつく寄生バチの影響は大きく、成虫になれるのはごくわずかだといわれます。モンシロチョウの幼虫では、野外で半数以上に、アオムシコマユバチという小さなハチが寄生しています。チョウは、さまざまな方法で身を守っています。
- 毒と目立つ色:アサギマダラの幼虫は、毒の強いアルカロイドをふくむ植物を食べ、その毒を体にとりこんで身を守ります。幼虫・さなぎ・成虫のあざやかな色は、毒をもつことを敵に知らせる「警戒色」と考えられています。北アメリカのオオカバマダラの成虫も、黒・オレンジ・白のまだらもようで、幼虫のときに食べたトウワタの毒をもつことを知らせています。
- そっくりさん(擬態):毒のないチョウが、毒のあるチョウにそっくりになって身を守ることもあります。インド北部から東南アジアにすむカバシタアゲハは、毒のあるアサギマダラによく似た翅をもっています。日本のツマグロヒョウモンのメスも、毒のあるカバマダラに似ているとされます。
- かくれる:沖縄などにすむコノハチョウは、翅を閉じると、裏側がかれ葉にそっくりです。ナミアゲハの若い幼虫は、黒っぽい体に白い帯が入り、鳥のふんにそっくりの姿をしています。
- 目玉もようとニセの頭:翅の目玉もよう(眼状紋)は、鳥などの攻撃を、体の大事な部分からそらすと考えられています。シジミチョウのなかまの多くは、後翅のはしに細い尾(ニセの触角)や点のもようがあり、そこが頭のように見えます。
- くさいにおい:アゲハチョウのなかまの幼虫は、刺激を受けると、頭と胸の間から「臭角(しゅうかく)」という角を出し、強いにおいで敵を追いはらいます。

ただし、コノハチョウが本当にかれ葉に化けて身を守っているのかについては、ちがう考えもあります。コノハチョウは、樹液などに来たときは翅を広げて、青とオレンジの表側を見せているからです。

シジミチョウの「ニセの頭」については、2025年に、928種のシジミチョウを調べた研究が発表されました。ニセの触角、点のもよう、目立つ色、頭のような形が、いっしょに進化してきたことが分かり、敵の攻撃をそらすためのしくみだという考えを支える結果になりました。
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アリとともにくらすチョウ
シジミチョウのなかまを中心に、アリと深くかかわり合ってくらす幼虫がいます。幼虫はアリに甘い汁を与え、アリは幼虫をある程度守ります。幼虫は、地面などを伝わる振動や、化学物質の信号で、アリと連絡をとります。
日本のクロシジミの幼虫は、2齢の後半になると、クロオオアリの巣の中でアリに育てられます。ヨーロッパなどにすむシジミチョウの一種、ラージブルー(Phengaris arion)の幼虫は、アリをだまして巣に運びこませ、巣の中でアリの卵や幼虫を食べてしまいます。
2026年の研究では、2種のアリと9種のチョウの振動の信号を調べました。アリと強く結びついたチョウの幼虫は、アリと同じように、規則正しい複雑なリズムの信号を出していました。アリとのつながりが弱い種や、つながりのない種では、リズムはもっと不規則か、単純でした。
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一生と寿命(卵・幼虫・さなぎ・成虫)
チョウは、卵→幼虫→さなぎ→成虫と、姿を大きく変えながら育ちます。これを「完全変態」といいます。
- 卵:メスは、幼虫が食べる植物の上に卵を産みます。卵は、すぐに固まる特別なのりで葉にはりつけられます。多くのメスは、100〜200個の卵を産みます。卵の期間は種や気温によってちがい、モンシロチョウでは1週間ほどです。
- 幼虫:見た目などによって、アオムシ、イモムシ、ケムシなどと呼ばれます。幼虫はほとんどの時間を、食べものを探して食べることに使い、脱皮をくり返して大きくなります。モンシロチョウの幼虫は、暖かい時期には、約2週間の間に4回脱皮して、体長4cmほどになります。
- さなぎ:育ちきった幼虫は、さなぎになる場所を探して歩き回り、糸で体を固定してから、最後の脱皮をしてさなぎになります。チョウのさなぎは、ふつうまゆに包まれていません。アゲハチョウやシロチョウのなかまは、おしりの先と、胸にかけた糸の帯で体を支える「帯蛹(たいよう)」、タテハチョウのなかまは、おしりの先だけでぶら下がる「垂蛹(すいよう)」になります。
- 成虫:さなぎの皮がわれて成虫が出てくると、ちぢんでいた翅に体液を送りこんでのばし、乾くのを待ってから飛び立ちます。それまでの間は、敵にとても弱い時間です。


なぜさなぎになるの?
チョウの幼虫と成虫は、体のつくりもくらし方も大きくちがいます。幼虫の体は、食べて大きくなることに向いていて、成虫の体は、飛んで移動し、相手を見つけて卵を産むことに向いています。さなぎは、この2つの体をつなぐ、体の大改造の時期です。さなぎの中では、幼虫の組織や細胞の多くがこわされ、その材料から成虫の体が組み立て直されます。
ただし、さなぎの中が全部どろどろの液体になるわけではありません。消化管は形を保ったまま育ち、どろどろに見える部分にも、組織のつくりがあるとされます。また、幼虫と成虫で食べものやくらす場所が分かれているため、親と子が同じ食べものを取り合わずにすむことも、完全変態の利点と考えられています。
寿命は?
成虫の寿命は、種によって1週間ほどから1年近くまでさまざまです。モンシロチョウの成虫はふつう2〜3週間、ヤマトシジミは2週間ほどです。オオカバマダラも、繁殖する季節の成虫は、ふつう2〜5週間ほど生きます。
一方、長生きするチョウもいます。2026年の研究では、花粉を食べる中南米のドクチョウのなかま(Heliconius)が、近いなかまのチョウの約3倍長生きし、種によっては最長で1年近く生きることが示されました。年をとるにつれて体がおとろえる速さも、ゆっくりでした。
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1年に何回成虫が現れるかも、種によってちがいます。オオムラサキは年に1回だけで、6〜7月に現れます。モンシロチョウは日本では年に4〜5回ほど発生し、暖かい地域では年に7回のこともあります。寒い場所のチョウには、卵から成虫まで育つのに何年もかかるものもいます。冬のこし方もいろいろで、モンシロチョウやナミアゲハはさなぎで冬をこし、オオムラサキは幼虫のまま、木の根もとの落ち葉の中などで冬をこします。
オスとメスの割合が、大きく変わることもあります。2024年の研究では、キチョウのなかま(Eurema hecabe)のある集団で、母から子へ受けつがれる共生細菌「ボルバキア」が急に広がり、メスの割合が、わずか4年で93.1%になったことが報告されました。
名前の由来と人とのかかわり
「蝶」は中国から入ってきた名前(漢語)です。ハエ、ハチ、トンボ、セミなど、多くの虫の名前が昔からの日本語(大和言葉)であるのに対し、チョウとガは漢語の名前で呼ばれています。昔の日本では、チョウやガは「かはひらこ」「ひひる」などと呼ばれていました。
英語では butterfly(バタフライ)です。この言葉の由来ははっきりしませんが、黄色いヤマキチョウのオスがバターのような色をしているからという説や、バターをつくる季節(春から夏)に草地を飛び回るからという説があります。
チョウは昔から、絵やもようによく使われてきました。花札の「牡丹に蝶」や、平氏の家紋としても知られる「揚羽蝶」の紋などがあります。左右に大きく広がった形を、チョウが翅を開いた姿にたとえて、「蝶ネクタイ」「蝶番(ちょうつがい)」「蝶結び」などと呼ぶこともあります。
チョウは、昆虫採集の世界でも、とても人気のある昆虫です。採集とは、死んだチョウを標本にして残すことで、昔は人気の趣味でしたが、今では写真をとったり、記録したり、育てて野に放したりすることに変わってきています。チョウの翅の構造色の研究は、より効率のよい発光ダイオード(LED)や、有害な色素を使わない塗料の開発にも役立てられています。
国蝶オオムラサキ
日本の国蝶はオオムラサキです。日本昆虫学会が、1957年に正式に国蝶に選びました。オオムラサキは前翅の長さが50〜55mmほどの大きなタテハチョウで、あざやかな青色の部分をもつのがオスです。メスはオスより一回り大きく、翅は地味な色をしています。環境省のレッドリストでは準絶滅危惧に指定されていて、雑木林が手入れされなくなったことや、幼虫が食べるエノキのなかまが減ったことなどが原因とされています。

害虫として、花粉の運び手として
幼虫が畑の作物を食べるため、害虫とされるチョウもいます。日本では、モンシロチョウがキャベツなどアブラナ科の野菜、アゲハチョウのなかまがミカンのなかま、キアゲハがニンジンなどセリ科の植物の害虫とされています。一方で、成虫は、花の花粉を運ぶ大切な役目もしています。ハチほど多くの花粉は運べませんが、そのかわり、花粉をより遠くまで運ぶことができます。
数がへっているチョウ
世界の多くの地域で、チョウが減っていることが報告されています。アメリカでは、2000年から2020年の間に、チョウの数が22%減りました。おもな原因は、すむ場所が失われたことや農薬、気候変動だとされています。北アメリカのオオカバマダラも、越冬地の森がたくさん切られたことなどで、数を減らしています。アレクサンドラトリバネアゲハは絶滅のおそれがあり、ワシントン条約で国どうしの商取引が禁止されています。
チョウの写真12枚
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よくある疑問
- チョウは何類? 何科?
- チョウは昆虫です。昆虫の中の「チョウ目(鱗翅目)」というグループのうち、「アゲハチョウ上科」にまとめられるなかまをチョウと呼びます。アゲハチョウ科、シロチョウ科、シジミチョウ科、タテハチョウ科、セセリチョウ科、シジミタテハ科、シャクガモドキ科の7つの科に分けられます。同じチョウ目のうち、チョウ以外のものはガ(蛾)と呼ばれます。
- チョウのはねは「羽」?「翅」?
- チョウのはねは「翅(はね)」とも書き、ふだん「羽」と呼んでいるものと同じです。成虫には前翅と後翅が2枚ずつ、合わせて4枚あり、表面は鱗粉や毛でおおわれています。
- チョウの寿命は? 何日生きる?
- 成虫の寿命は、種によって1週間ほどから1年近くまでさまざまです。身近なモンシロチョウの成虫はふつう2〜3週間、ヤマトシジミは2週間ほどです。花粉を食べる中南米のドクチョウのなかまのように、成虫が数か月から1年近く生きるものもいます。卵・幼虫・さなぎの時期を合わせると、一生はもっと長くなり、さなぎや幼虫のまま何か月も冬をこす種もいます。
- チョウはどう数える?
- チョウは「1頭(とう)、2頭」と、「頭」で数えることがあります。
- チョウは何の象徴?
- チョウは世界の多くの地域で、たましいと結びつけて考えられてきました。古代ギリシャ語で「チョウ」を表すプシュケー(psȳchē)という言葉は、もともと「たましい」や「心」という意味です。ギリシャではたましいや不死の象徴、キリスト教では復活の象徴とされ、生まれ変わりの象徴とする文化もあります。日本でも、お盆のころの黒いチョウには仏が乗っている(栃木県)など、チョウを死者のたましいと結びつける言い伝えが各地に残っています。
ナゾロジーで読む25本
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- 01 気候変動で「世界中のチョウが大移動」を始めていると判明
- 02 ”老化を遅らせる”蝶、近縁種の「3倍」長生きすると判明
- 03 アリを騙して「女王扱いさせる」蝶の幼虫、秘密は”リズム”だった
- 04 【世界初】3400万年前の「エンペラーバタフライ」の貴重な化石を発見
- 05 蝶が「第2の頭」を進化させた理由とは?
- 06 地元の博物館にある「名もない蝶の化石」―実は新種で250万年前のものだった
- 07 わずか4年で島中が「メス化」!宿主をメス化する細菌ボルバキアが広まる過程を世界初観測
- 08 大陸間移動する蝶を発見!大西洋4200キロを昆虫がどうやって横断するのか?
- 09 「カメの涙」に集まる幻想的なアマゾンの蝶たち。その理由とは?
- 10 謎に包まれていた蝶の起源が判明!「蝶は1億年前に北アメリカで誕生した」
- 11 人の去った廃村から「チョウが姿を消している」ことが判明!
- 12 媚薬を作るために「幼虫の生き血を吸う」チョウがいると判明
- 13 高圧線に樹木が引っかからないよう伐採を続けた結果、送電線下がチョウの楽園になっていた
- 14 「透明な羽をもつチョウチョ」ガラスのような羽の作り方が明らかに
- 15 チョウとガはどこが違う? 見分けるポイントとは
- 16 黒蝶の翅は99.9%光を吸収する超吸収ナノ構造を持っていると判明
- 17 異世界の生き物? ヒラヒラ舞う幻想的な蝶
- 18 刺繍のプロが欠けた蝶の羽を修復、空を飛べるように
- 19 種の分岐は何が条件で起こるのか?
- 20 なぜ「青バラ」は存在しないのか? 生物が“青い色素”を作るのが難しい理由
- 21 空は本当に青でしょうか?「動物たちが見る世界の色」を再現するカメラ
- 22 モルフォ蝶と同じ「構造色で色付けする新しいインクジェット技術」(富士フイルム)
- 23 紫外線が見えるシャコ! 動画が止まって見えるハエ! さまざまな環境に特化した動物たちの「不思議な目」
- 24 蝶に「幼虫の頃の記憶」はあるの?
- 25 なぜ青い生物は少ないのか?
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参考文献
- Kawahara AY ほか (2023) A global phylogeny of butterflies reveals their evolutionary history, ancestral hosts and biogeographic origins. Nature Ecology & Evolution
- Aiba H, Takahashi Y, Saito K (2025) New species of fossil butterfly (Nymphalidae: Limenitidinae) from the Upper Pliocene to Lower Pleistocene Teragi Group, Hyogo Prefecture, Japan. Paleontological Research
- Davis AL, Nijhout HF, Johnsen S (2020) Diverse nanostructures underlie thin ultra-black scales in butterflies. Nature Communications
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表紙の写真: harum.koh(CC BY-SA 2.0) / Wikimedia Commons
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