微細構造で発色する「構造色」
物質そのものの色は、色素がもつ「可視光の吸収・反射」効果によって生じています。
例えば、赤色の物質は光に含まれる赤色の波長だけを反射し、それ以外の波長を吸収。
そのため私たちの目に届くのは赤色の波長だけであり、結果として「赤色」に見えるのです。
同様の原理で、すべての波長を反射するものは白色になり、すべての波長を吸収するものは黒色になります。
しかし、私たちが「色」を認識しているものの中には、この色素以外の原理で生じているものがあります。
それが「構造色」です。
構造色とは、光の波長レベルの微細構造によって生じる発色現象であり、その構造によって特定の波長だけが強調・反射されることで生じます。
自然界で見られる構造色の代表的な例としては、タマムシ、モルフォ蝶、貝殻などがあります。
例えばモルフォ蝶は、実際に青い色素を持っているわけではありませんが、その表面の構造によって青く輝いて見えるのです。
また構造色は、その微細な構造が壊れない限り、鮮やかな色を保つことができます。
一般的な顔料で生じる「退色」とは無縁なのです。
この構造色については、人工的に再現して利用する方法も研究が進められていて、2018年には外板に青の構造発色を利用した「LEXUS」が販売されたり、また2020年も構造色で絵画を再現するという研究が発表されたりしています。
そして今回、富士フイルムが顔料を含まず構造色だけで色を作り出すインクジェット技術を完成させたのです。