幼虫と成虫で大きく姿を変える蝶ですが、その「記憶」には変化があるのでしょうか?
先行研究では、蝶の幼虫と成虫には、どちらも「学習能力」と「記憶力」があることが確認されています。
しかし幼虫の頃の記憶が成虫になっても受け継がれているのかについては、わかっていませんでした。
そんな素朴な疑問に答えるべく、ジョージタウン大学の研究者チームが研究を実施したところ、成虫した蝶に幼虫の頃の記憶があることが判明したのです。
https://www.npr.org/templates/story/story.php?storyId=88031220
蝶の成長過程は、卵→幼虫→さなぎ→成虫と段階を踏んでいきます。ちなみに、さなぎの中身は「ドロドロとした液体」でいっぱい。想像すると少し気持ち悪いですが、その「液体」から成虫の姿になるための器官を作ったり、容姿を形成したりするのです。
また、そのような過程を経て成虫になることをメタモルフォーゼ (変態) といいます。
研究チームは、ネイル商品などに含まれる「酢酸エチル」を用いて、幼虫に回避行動を起こすよう学習させました。
基本的に、蝶は酢酸エチルの臭いに反応しません。しかし、幼虫に酢酸エチルの臭いを嗅がせながら「電気ショック」を与えることで、酢酸エチルの臭いを避けるように誘導。この学習による回避行動を起こした幼虫は、全体の78%にのぼりました。
そして、成虫になって酢酸エチルを嗅がせたところ、全体の77%が回避行動をとっていたことが判明。さらに興味深いことに、幼虫の頃に回避行動を取った蝶と成虫になって回避行動を示した蝶が、ほとんど同じであることもわかりました。
これは、幼虫のときに経験した臭いの記憶が成虫になっても引き継がれていることを示しています。さらに、記憶や神経システムはそのままに保たれたままメタモルフォーゼしていることが推測されます。
同じ個体なので当たり前と言えば当たり前なのかもしれませんが、さなぎの中で行われている変化は未だ謎に満ちており、文字通りベールに包まれています。ミステリアスな魅力を放つ「蝶」の生態すべてが解明されるのは、まだまだ先のこととなりそうです。