送電線下には多種多様なチョウが存在していた
近年、日本では人為的に維持されてきた草地や若齢の人工林が減少しています。
これには戦後の自然資源の利用頻度の低下、林業の低迷などが関係しています。
そんな中、約9万kmにも及ぶ日本の送電線付近では、定期的な樹木の伐採が行われてきました。
樹木と送電線の接触を防ぐためには、樹木を伐採せざるを得ないのです。
こうした人間の介入と変化は、草地や林を生息場所とする生物に影響を与えると考えられます。
そこで研究チームは、送電線付近の生物であるチョウの数や多様性を調査することにしました。
今回の調査では、以下の4つの環境について調査されました。
- a:送電線下
- b:幼齢の人工林(植栽直後)
- c:林道(人工林内の道路)
- d:壮齢の人工林(植栽から時間が経過している)
このそれぞれの環境に対して、チョウを次の3つに分類しその数が調べられました。
- 草地性種:草原を生息場所とするチョウ
- 荒地性種;人里周辺を生息場所とするチョウ
- 森林性種:森林を生息場所とするチョウ
その結果、合計62種2123個体のチョウを確認。
そして草地性種と荒地性種のチョウの種類と個体数は、いずれの季節も「送電線下」「幼齢の人工林」「林道」「壮齢の人工林」の順に多い結果となりました。
また森林性種のチョウの種類と個体数は「送電線下」「幼齢の人工林」で多く確認されました。
つまり、人間が介入したそれぞれの環境の中では、チョウがもっとも多いのは「送電線下」という結果になったのです。
しかし、なぜこのような結果になったのでしょうか?