人の肌にとまり、頭を下げて血を吸う、黒と白のしま模様の蚊 No.0020

ナゾロジー図鑑 ・ 生き物

蚊

Culicidae

血を吸うのは、卵を育てるメスだけ。
ふだんはオスもメスも、花の蜜を吸っています。

ナゾロジーの記事
37本
多くの蚊の体長
3〜6mm
日本にいる蚊
約100種

蚊は、ハエと同じハエ目のカ科の昆虫で、日本には約100種がいます。血を吸うのは卵を育てるメスだけで、ふだんはオスもメスも花の蜜などを吸っています。マラリアやデング熱などの感染症を運ぶため、世界中で対策が研究されています。

図鑑データ

分類
昆虫 › ハエ目(双翅目)› カ科
学名
Culicidae(カ科)
英名
mosquito(モスキート)
和名・漢字
カ(蚊)
なかま
世界に3,600種以上(資料によって数に幅がある)、日本に約100種
大きさ
多くは体長3〜6mm。最大のオオカのなかまは体長18mmほど
すみか
南極大陸といくつかの島をのぞく、世界中の陸地
日本でよく刺す蚊
ヒトスジシマカ(昼・屋外)、アカイエカ(夜・屋内にも入る)
食べもの
オスもメスも花の蜜や植物の汁。メスは卵をつくるために血も吸う(吸わない種類もいる)
育ち方
卵 → 幼虫(ボウフラ)→ さなぎ(オニボウフラ)→ 成虫(完全変態)
寿命
成虫は種類や季節で大きくちがう(成虫のまま冬をこす種類では数か月)
人とのかかわり
マラリア、デング熱、日本脳炎などの感染症を運ぶ

蚊とは(ハエのなかま? 何類?)

蚊は、ハエやアブと同じ「ハエ目(双翅目〈そうしもく〉)」に入る昆虫で、分類では「カ科」というグループにまとめられます。日本語の標準的な名前(和名)は「カ」で、漢字では「蚊」と書きます。ここでは、カ科の蚊をまとめて「蚊」として紹介します。

世界には3,600種以上の蚊がいるとされ(資料によって数に幅があります)、日本からは約100種が知られています。ふつうは、マラリアを運ぶハマダラカのなかま(ハマダラカ亜科)と、ヤブカやイエカなどをふくむ、それ以外の多くの蚊(ナミカ亜科)の2つのグループに分けられます。

人の肌にとまり、頭を下げて血を吸う、黒と白のしま模様の蚊
人の血を吸うヒトスジシマカ写真: James Gathany(アメリカ疾病予防管理センター)(Public domain) / Wikimedia Commons

蚊というと血を吸う虫のイメージがありますが、血を吸うのはメスだけです。オスもメスも、ふだんは花の蜜や植物の汁を吸ってくらしています。メスが血を吸うのは、卵をつくる栄養をとるためです。メスでも血を吸わない種類もいます。

英語では mosquito(モスキート)といいます。スペイン語とポルトガル語で「小さなハエ」という意味のことばです。

ユスリカとのちがい

蚊とよくまちがえられる虫に、ユスリカがいます。ユスリカには、蚊のような長い口(口吻〈こうふん〉)がありません。止まり方もちがい、ユスリカは前あしを前にのばして止まりますが、蚊は前あしを外側に広げて止まります。ヒトスジシマカは、止まるときに後ろあしをはね上げます。

大きさと体のつくり(痛くない針と羽音)

蚊の多くは、体長3〜6mmほどの小さな虫です。日本でよく見るヒトスジシマカは体長4〜5mm、アカイエカは5〜6mmほどです。体重はわずか2〜2.5mgほどしかありません。いちばん大きいのはオオカのなかまで、体長18mm、はねを広げた長さが24mmほどになるものもいます。

赤い方眼の紙の上にとまる、長い口と白黒のしまのあしをもつ蚊
方眼紙の上のヒトスジシマカ写真: Exonie(CC BY 4.0) / Wikimedia Commons
  • 体:細長い体に、長いあしが6本あります。体の色は、ふつう灰色か黒っぽい色です。
  • はね:はねは2枚で、表面には小さなうろこ(鱗片〈りんぺん〉)があります。後ろのはねは小さく退化して、「平均棍(へいきんこん)」という器官に変わっています。
  • 触角:オスとメスで形がちがいます。
  • 口:長くのびた口(口吻)は、血を吸うための細い針の束です。オスは甘い液しか吸わないので、口のつくりはメスほど特別ではありません。

蚊に刺されても痛くないのはなぜ?

メスの口吻は、さやの役目をする「下唇(かしん)」が、6本の細い針の束をつつんだつくりになっています。血を吸うときは、下唇が弓のように曲がって皮ふの外に残り、中の針だけが皮ふに入っていきます。とても鋭い針の先を前後に動かして、のこぎりのように皮ふを切り進むため、ふつうの針で刺すときの1000分の1ほどの力ですみ、痛みをほとんど感じさせません。

白黒の電子顕微鏡写真。うろこのような模様におおわれた、先のとがった管
電子顕微鏡で見た蚊の口吻写真: Judyta Dulnik(CC BY-SA 4.0) / Wikimedia Commons

痛くないのは、おもに針の束がとても細いためです。そのうえ、2021年に発表された研究では、蚊の頭部をすりつぶした液に、痛みを感じるセンサー(TRPV1とTRPA1)のはたらきをおさえる作用があることが、マウスの実験などで分かりました。刺すときに出す唾液の成分も、痛みを感じにくくしているのかもしれません。

ナゾロジーでくわしく蚊に刺されても痛くない理由がついに明らかに! 唾液中の「痛みを消す成分」を特定

皮ふに口吻を刺すと、蚊は唾液を送りこんでから血を吸いはじめます。唾液には、血が固まるのをふせぐ成分がふくまれていて、血を吸いやすくしています。

羽音と飛び方

蚊は、1秒間に数百回もはばたきます。オスでは1秒間に450〜600回という記録があります。この速いはばたきが「プーン」という羽音になります。羽音の高さは、種類によってちがいます。

飛ぶ速さは時速1.5〜2.5kmほどです。風には弱く、風が通りぬける場所や、かくれる植物の少ない場所には、あまりいません。

日本の蚊の種類とすみか(どこにいる?)

蚊は、南極大陸といくつかの島をのぞく、世界中の陸地にすんでいます。蚊がいないとされてきたアイスランドでも、2025年に蚊が見つかりました(2026年の夏には見つかっていません)。暖かくしめった熱帯では一年中活動する種類もいますが、温帯や寒い地域の蚊は、冬は休眠などをしてすごします。

日本でよく見かけるのは、次のような蚊です。東京都新宿区で2003〜2020年に捕まえた蚊の調査では、64.4%がヒトスジシマカ、35.1%がアカイエカ(またはよく似たチカイエカ)でした。

  • ヒトスジシマカ:黒い体に白いしま模様の蚊で、「ヤブカ」とも呼ばれます。胸の背中側に、白い線が1本通っています。おもに昼間、とくに朝と夕方に、庭や公園などの屋外で血を吸います。東京や神奈川では、5〜11月ごろに見られます。
  • アカイエカ:灰色がかった茶色から赤茶色の蚊です。名前のとおり家の中に入ってきやすく、おもに夜に血を吸います。北海道から九州まで、ふつうに見られます。
  • チカイエカ:アカイエカと見た目では区別できない、近いなかまです。ビルの地下や地下鉄の構内などの水たまりで育ちます。血を吸わなくても卵を産むことができ、冬でも活動します。
  • コガタアカイエカ:水田や池、沼などで育つ蚊で、日本脳炎のウイルスを運びます。
  • シナハマダラカ:ハマダラカのなかまで、水田や池、沼などで育ちます。昔の日本で、マラリアを運んでいた蚊です。
  • トウゴウヤブカ:海岸の岩のくぼみにできた潮だまりなど、塩分のふくまれた水で育ちます。
細かい網目の上にとまる、茶色っぽい体の蚊
イエカのなかまのメス写真: ImagePerson(CC BY 4.0) / Wikimedia Commons

北へ広がるヒトスジシマカ

ヒトスジシマカは、年平均気温が11℃以上の地域に定着するとされ、気温が上がるにつれて、すむ範囲を北へ広げています。東北地方では少しずつ分布が北へ広がり、2015年に青森市で初めて見つかって、2016年には青森市に定着したことが確かめられました。

ヒトスジシマカは、もともと東アジアの蚊です。古タイヤにたまった雨水にまぎれたボウフラ(幼虫)などを通じて、北アメリカやヨーロッパなどにも広がり、「世界の侵略的外来種ワースト100」にもふくまれています。ヨーロッパでも、南部の広い範囲にすみつき、北へと広がっています。

一方、世界でデング熱をよく運ぶネッタイシマカは、熱帯や亜熱帯にすむ蚊です。日本では、沖縄県で1970年に石垣島で記録されたのを最後に姿を消しました。ただ、成田空港などで、飛行機といっしょに入ってきたネッタイシマカが見つかることがあり、2012〜2017年には6年続けて確認されています。

家のまわりでは、どこにいる?

おとなの蚊は、葉の多い植物があり、日かげで乾いておらず、風がさえぎられた場所にひそんでいます。近くに幼虫の育つ水場があり、血を吸う相手がよく来る場所ほど、たくさんいます。手入れされていない草むらなどは、蚊のかくれ場所になります。

アカイエカは、ヒトスジシマカよりも家の中に入りこみやすい蚊です。家の中へは、おもに窓や戸から入ってきます。窓や戸の網戸、寝るときにつる蚊帳(かや)は、蚊が入ってくるのをふせぐための道具です。

移動する距離は、種類によってちがいます。ヒトスジシマカは1日に数m、多くても100mほどしか移動しませんが、アカイエカは1日に200m〜1kmほど移動します。コガタアカイエカは、ふつう1日に1kmほどの範囲で動きますが、和歌山県の潮岬から南へ500kmの海上で採集された例もあり、風に乗って運ばれたと考えられています。

何を食べる? なぜ血を吸う?

蚊は、オスもメスも、花の蜜やアブラムシが出す甘い液、植物の汁などを吸ってエネルギーにしています。

メスは、それに加えて動物の血を吸います。血にふくまれるタンパク質などの栄養を使って、卵をつくるためです。多くのメスは、たっぷり血を吸ったあと2〜3日休んで血を消化し、卵を育てて産みます。そしてまた血を吸い、卵を産むことをくり返します。ヒトスジシマカは、卵を産むたびに血を吸い、一生のうちに3〜4回、数十個ずつ卵を産みます。

青い背景の前にとまる、茶色い蚊。頭の先に、ふさふさした毛のついた触角がある
イエカのなかまのオス写真: Volkmar Becher(CC0) / Wikimedia Commons

オスは血を吸いません。メスでも、血を吸わなくても卵を産める種類(チカイエカなど)や、一生血を吸わない種類(オオカのなかまなど)がいます。

血を吸う相手は、種類によって好みがあります。人をふくむ哺乳類や鳥のほか、ヘビなどの爬虫類や、カエルなどの両生類から血を吸う種類もいます。

蚊は何に寄ってくる?

メスの蚊は、いくつもの手がかりを使って、血を吸う相手をさがします。

  • 息の二酸化炭素:はく息にふくまれる二酸化炭素に引き寄せられます。二酸化炭素を感じると、においや見た目で相手をさがす行動のスイッチが入ります。
  • 体のにおい:いちばん大切な手がかりは、皮ふから出るにおいです。においの多くは、汗や皮脂を皮ふの細菌が分解してできます。調べられた蚊の一種では、触角にある72種類のにおいの受容体のうち、少なくとも27種類が、汗にふくまれる物質を感じとることが分かっています。
  • 体温と汗:まわりより温度の高い所に向かう習性があり、汗をかいた肌にも寄ってきます。汗にふくまれる乳酸も、蚊を引き寄せる物質です。
  • 色:黒っぽいものや、まわりとの色の差がはっきりしたものに引き寄せられます。

刺されやすい人がいるのはなぜ?

同じ場所にいても、よく刺される人と、あまり刺されない人がいます。2022年に発表された研究では、人の皮ふのにおいに蚊がどれだけ集まるかを調べ、とくに蚊に好かれる人と好かれない人がいることを確かめました。このちがいは、何年たっても変わりませんでした。蚊に好かれる人の皮ふからは、「カルボン酸」という物質がたくさん出ていました。

ナゾロジーでくわしく「蚊に刺されやすい人、刺されにくい人がいる理由」の原因物質を特定!

好かれる人は、蚊の種類によってもちがうようです。2026年に発表された研究では、119人について、ネッタイシマカ、ヒトスジシマカ、ネッタイイエカの3種がどの人に集まりやすいかを調べました。すると、3種それぞれで好む人の順番がちがっていました。また、ネッタイシマカだけは、女性よりも男性にやや多く集まりました。

ふだんの行動も関係するかもしれません。オランダの音楽フェスティバルで465人を調べた2025年の研究(専門家の審査を受ける前の論文)では、ビールを飲んだ人のほうが、飲まなかった人よりも、蚊(ハマダラカ)が多く寄ってきました。このほか、体温が高い人や汗かきの人、運動したあとの人も、刺されやすいとされています。

血液型については、O型の人が刺されやすいとする研究もあります。ただ、蚊の行動に影響しそうな、血液型による物質は知られておらず、はっきりしたことは分かっていません。

刺されるとなぜかゆい? なぜはれる?

蚊が血を吸うときに送りこむ唾液には、血を固まりにくくしたり、血管を広げたりするタンパク質がふくまれています。この唾液の成分に体がアレルギー反応を起こすことで、刺された所が赤くはれて、かゆくなります。

アレルギー反応には、2つのタイプがあります。

  • すぐに出る反応(即時型):刺された直後から、かゆみや赤み、じんましんなどが出て、数時間でおさまります。
  • あとから出る反応(遅延型):刺されて1〜2日たってから、かゆみや赤み、ぶつぶつ、水ぶくれなどが出て、数日〜1週間ほどでおさまります。何日もかゆみが続くのは、おもにこちらの反応です。

どちらの反応が出るかは、年齢とともに変わります。一般に、赤ちゃんや小さな子どもには遅延型の反応だけが出て、子どもから若者のころには両方が出ます。おとなになると即時型の反応だけになり、お年寄りではどちらも出なくなるとされます。ただし、刺された回数や体質によって、人による差がかなりあります。

まれに、蚊の唾液のタンパク質に体が強く反応しすぎる「蚊アレルギー」の人もいます。

刺されたらどうする?

軽いかゆみなら、市販のかゆみ止めの塗り薬でもよいとされます。赤みやかゆみが強いときは、ステロイドの塗り薬が使われます。多くは1〜2週間以内によくなりますが、症状が強いときは皮ふ科を受診しましょう。

かゆいからといってひっかくと、傷に細菌が入って「とびひ(伝染性膿痂疹〈でんせんせいのうかしん〉)」になることがあるので、注意が必要です。

刺されないためには、外では肌を出さない服装をし、ディートやイカリジンをふくむ虫よけ剤を、むらなく塗るのが効果的です。ディートは、小さい子どもには使える回数などに決まりがあります。

蚊が運ぶ感染症(マラリア・デング熱・日本脳炎)

蚊は、病気の原因になるウイルスや原虫(小さな寄生虫)などを運ぶことがあります。病原体をもつ人や動物の血を吸った蚊の体の中で病原体がふえ、その蚊が別の人を刺したときにうつるのです。蚊やダニなどの生き物が運ぶ感染症で、世界では毎年70万人以上が亡くなっています。

どの病気を運ぶかは、蚊の種類によっておおよそ決まっています。

  • マラリア:マラリア原虫が起こす病気で、ハマダラカのメスが運びます。2024年には、世界で推定2億8,200万人がかかり、61万人が亡くなりました。患者と死者の95%はアフリカ地域で、アフリカ地域で亡くなった人の約75%は5歳未満の子どもです。ふだんの接触で人から人へうつることはありませんが、輸血や汚れた注射針でうつることはあります。
  • デング熱:デングウイルスが起こす病気で、おもにネッタイシマカやヒトスジシマカなどのヤブカのなかまが運びます。世界の人口の約半分が感染のおそれのある地域にくらし、毎年1億〜4億件の感染が起きていると推定されます。多くは症状が出ないか軽くすみますが、重くなって亡くなることもあります。
  • 日本脳炎:日本脳炎ウイルスが起こす病気で、日本ではおもにコガタアカイエカが運びます。ウイルスは、蚊とブタや野鳥の間でめぐっています。世界では、年に約68,000人が発症すると推計され、脳炎を起こした人では、亡くなる割合が30%にのぼることもあります。ワクチンがよく効きます。
  • そのほか:黄熱、チクングニア熱、ジカウイルス感染症、ウエストナイル熱なども、蚊が運ぶウイルスの病気です。リンパ系フィラリア症という寄生虫の病気も、蚊が運びます。
人の肌に口の針を刺し、体をななめに持ち上げて血を吸う、茶色い蚊
血を吸うシナハマダラカ写真: James Gathany(アメリカ疾病予防管理センター)(Public domain) / Wikimedia Commons

日本でも流行していた

マラリアは、かつては日本でも「瘧(おこり)」と呼ばれ、北海道から九州まで各地で見られました。大正時代から少しずつへり、昭和10年ごろには、富山・石川・福井・滋賀・愛知の「マラリア五県」と呼ばれる地域に限られるようになりました。日本でマラリアを運んでいたのは、シナハマダラカです。今では、サッシや網戸、エアコンが広まったことで、シナハマダラカに血を吸われる機会は大きくへりました。

デング熱も、1942〜1945年に、長崎や神戸、大阪などで大きく流行したことがあります。2014年の夏には、海外ではなく国内で蚊に刺されてデング熱にかかった人が、関東を中心に162人出ました。東京の代々木公園では、捕まえた蚊からウイルスが見つかり、公園が一時閉鎖されました。今の日本でデング熱を運ぶおそれがあるのは、おもにヒトスジシマカです。

病原体が蚊を呼び寄せる?

2022年に発表された研究では、デングウイルスやジカウイルスに感染したマウスに、ヤブカのなかまの蚊がより多く寄ってくることが分かりました。感染すると皮ふの細菌のバランスが変わり、「アセトフェノン」というにおい物質が多く出るようになるためです。デング熱の患者でも、健康な人よりアセトフェノンが多く出ていました。ウイルスが、においを使って蚊を呼び寄せていると考えられます。

ナゾロジーでくわしくウイルスは蚊が自分たちを媒介していると知って利用していた!

一生と寿命(ボウフラからおとなへ)

蚊は、卵 → 幼虫 → さなぎ → 成虫と姿を変える「完全変態」の昆虫です。卵から、さなぎまでは、おもに水の中や水ぎわですごします。暑い時期には、卵からおとなになるまでが5日ほどですむこともありますが、1か月ほどかかることもあります。

どこで生まれる?(卵と発生源)

メスは、池や沼、水たまりなど、流れのない水やその近くに卵を産みます。卵の産み方は、種類によってちがいます。

  • イエカのなかま:たくさんの卵をくっつけて、水面にボートのような「卵舟(らんしゅう)」をうかべます。
  • ハマダラカのなかま:水面に1個ずつ卵を産みます。
  • ヤブカのなかま:水ぎわのしめった所などに、1個ずつ卵を産みます。ヒトスジシマカの卵は、水がなくなっても乾燥にたえることができ、水につかるとかえります。

幼虫が育つ水場(発生源)も、種類によってちがいます。ヒトスジシマカは、竹の切り株や墓の花立て、放置されたバケツや植木鉢の受け皿、古タイヤ、雨水ますなど、小さくて比較的きれいな水たまりで育ちます。池や水田のような広い水場や、川のような流れのある水では育ちません。アカイエカは、下水溝や排水ますなど、もう少し広くて有機物の多い水で育ちます。コガタアカイエカやシナハマダラカは、水田や池、沼、湿地で育ちます。

そのため、身のまわりの蚊をへらすには、水のたまった容器などをかたづけて、幼虫が育つ水たまりをつくらないことが大切です。

水面から下向きにぶら下がる、たくさんの細長い茶色の幼虫
水面にぶら下がるボウフラ写真: James Gathany(アメリカ疾病予防管理センター)(CC BY 2.5) / Wikimedia Commons

ボウフラとオニボウフラ

蚊の幼虫は「ボウフラ」と呼ばれます。体全体を使って、棒を振るように泳ぐことから、「棒振り(ぼうふり)」がなまってボウフラになりました。漢字では「孑孒」と書きます。

ボウフラは、水の中の藻や細菌、有機物などを食べ、何回か脱皮して大きくなります。おしりの近くにある呼吸管を水面に出して空気を吸うため、ときどき水面に上がってきます。ハマダラカの幼虫には呼吸管がなく、体を水面と平行にうかべて息をします。

ヒトスジシマカの場合、卵の期間は2〜3日から数か月で、夏なら幼虫の期間は7〜10日、さなぎの期間は3〜5日ほどです。

さなぎは「オニボウフラ」と呼ばれます。胸からのびた呼吸のための管が、鬼の角のように見えるからです。さなぎは何も食べませんが、ほかの昆虫のさなぎとちがって、腹を動かして活発に泳ぎます。おとなの蚊は、水面にういたさなぎから出てきて、飛び立ちます。

水面の下にうかぶ、丸い体から尾が下にのびた茶色のさなぎ
蚊のさなぎ(オニボウフラ)写真: ProjectManhattan(CC BY-SA 3.0) / Wikimedia Commons

寿命と冬ごし

おとなの蚊の寿命は、種類や季節、気温、湿度などによって大きくちがい、成虫のまま冬をこす種類では、数か月生きるものもいます。ヒトスジシマカでは、寿命は1か月以上とする資料もあります。

冬のすごし方も、種類によってちがいます。ヒトスジシマカは、乾燥にたえる卵のすがたで冬をこします。アカイエカやコガタアカイエカ、ハマダラカのなかまは、成虫のまま冬をこします。建物の中や木のうろなどにかくれて冬をこす種類もいます。一方、ビルの地下などにすむチカイエカは、冬でも活動します。

多くの蚊は、気温が15℃ほどより高くなると血を吸いはじめ、26〜31℃くらいでいちばんさかんに血を吸うといわれます。35℃をこえるような暑さになると、物かげなどでじっとして、あまり活動しなくなります。

蚊を食べる生き物(天敵)

ボウフラは池などでとてもふつうに見られる生き物で、水の中の多くの動物の大切な食べものになっています。トンボやイトトンボの幼虫(ヤゴ)、ミズスマシやアメンボなどの水生昆虫、カダヤシなどの魚、カエル、カメ、カモなどの鳥が、ボウフラを食べます。メダカもボウフラを食べるので、ボウフラ退治に使われることがあります。おとなの蚊は、トンボやクモ、ツバメなどの鳥、コウモリなどに食べられます。

蚊を食べる蚊もいます。オオカのなかまの幼虫は、ほかの蚊の幼虫を食べて育ちます。2022年の研究では、高速度カメラで、オオカのなかま(Toxorhynchites amboinensis)の幼虫が、腹の中の圧力を使って頭をいきおいよくつき出し、えものの幼虫をとらえるようすが撮影されました。

木の皮の上にとまる、長いあしと下に曲がった口をもつ大きな蚊
血を吸わない大きな蚊、オオカのなかま写真: Graham Wise(CC BY 2.0) / Wikimedia Commons

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人とのかかわり(蚊帳・蚊取り線香・蚊をへらす研究)

人は昔から、蚊に刺されない工夫をしてきました。寝床のまわりを細かい網でかこむ蚊帳(かや)は、古代から世界中で使われ、日本では江戸時代には一般の人びとの日用品になっていました。網の目は1mmほどです。今の日本ではあまり使われなくなりましたが、熱帯の国々では今もよく使われています。殺虫剤を加えた蚊帳は、マラリアなどの感染をへらす方法として、世界保健機関(WHO)などが配っています。

緑色の網の蚊帳の中で、着物の女性が手紙を読んでいる浮世絵
歌麿「蚊帳の中の文読み美人」写真: 喜多川歌麿(CC0) / Wikimedia Commons

白い網の蚊帳がつるされた寝床の横に立つ、小さな子ども
アフリカで使われる蚊帳写真: President's Malaria Initiative(撮影: Africare)(Public domain) / Wikimedia Commons

日本では、ヨモギの葉などをいぶした煙で蚊を追いはらう「蚊遣り火(かやりび)」も、広く行われていました。蚊取り線香は、1890年(明治23年)に、和歌山県出身の上山英一郎が、除虫菊の粉を線香に練りこんでつくったのが始まりです。

金属の台に立てられた、緑色のうず巻き形の蚊取り線香
けむりを出す蚊取り線香写真: trini(CC BY 2.1 jp) / Wikimedia Commons

俳句では、「蚊」も「孑孑(ぼうふら)」も夏の季語です。また、蚊が吸った血から、人のDNAを調べることもできます。名古屋大学の研究グループの実験(2017年発表)では、蚊が人の血を吸ってから48時間後まで、その人のDNA型を調べることができました。

蚊をへらす新しい方法

殺虫剤は蚊をへらす大切な道具ですが、殺虫剤が効きにくい蚊が世界中で増えていて、マラリアなどの対策の心配のたねになっています。そこで、新しい方法が研究されています。

  • 遺伝子組み換え蚊:子どもがおとなになる前に死ぬ遺伝子を組みこんだ、ネッタイシマカのオスを放す方法です。ブラジルの町では、こうしたオスを毎週約45万匹、27か月にわたって放しました。ところが2019年の研究で、組み換えた系統の遺伝子の一部が、野生の蚊の集団に入りこんでいたことが分かりました。ごくまれに生きのこった雑種の子が、自然の中で子孫を残していたのです。
  • 遺伝子ドライブ:組みこんだ遺伝子が、ふつうよりずっと速く集団に広がるようにする技術です。2018年の研究では、オスとメスの体のつくり分けにかかわる遺伝子(doublesex)のメス用の部分をこわす遺伝子ドライブを、マラリアを運ぶガンビエハマダラカに組みこみました。かごの中の実験では、7〜11世代でこの遺伝子がすべての蚊に広がり、卵の数がへって、集団がいなくなりました。病気を運ぶ蚊を野外でへらす方法として、提案されています。
  • ボルバキア:ボルバキアという細菌に感染したネッタイシマカは、デングウイルスに感染しにくくなります。インドネシアのジョクジャカルタで、この蚊を放した地区と放さなかった地区をくらべた研究(2021年)では、デング熱を防ぐ効果は77.1%、デング熱による入院を防ぐ効果は86.2%でした。
  • 人の血を蚊の毒にする薬:寄生虫の薬イベルメクチンを飲んだ人の血を吸うと、蚊が死にます。ケニアで28,932人を対象にした研究(2025年発表)では、この薬を3か月続けて月1回飲んでもらうと、別の薬を飲んだ地区とくらべて、5〜15歳の子どものマラリア感染が26%少なくなりました。

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蚊がいなくなったらどうなる?

病気を運ぶ蚊をなくせれば、多くの命が守られます。一方で、蚊は生態系の中で役わりももっています。ボウフラは水の中の多くの生き物のえさになり、おとなの蚊も鳥やコウモリなどに食べられます。また、花の蜜を吸いに来る蚊は、キク科やバラ科、ラン科などの花の受粉を助けています。ツレサギソウのなかま(Platanthera)のランのように、おもにヤブカのなかまが花粉を運ぶ植物もあります。蚊をなくしたときに生態系にどんな影響が出るかについては、心配する声もあります。

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よくある疑問

蚊はなぜ血を吸うの? オスも吸う?
血を吸うのはメスだけで、卵をつくるための栄養(おもにタンパク質)をとるためです。オスもメスも、ふだんは花の蜜や植物の汁を吸ってくらしています。メスでも、オオカのなかまのように、一生血を吸わない種類もいます。
蚊に刺されやすい人はいるの? 血液型は関係ある?
います。皮ふから出るにおいが大きく関係していて、2022年の研究では、蚊に好かれる人の皮ふから、カルボン酸という物質が多く出ていました。体温が高い人や汗かきの人も、刺されやすいとされます。血液型については、O型の人が刺されやすいとする研究もありますが、はっきりしたことは分かっていません。
蚊に刺されるとなぜかゆい? 何日もかゆいのはなぜ?
蚊が送りこむ唾液の成分に、体がアレルギー反応を起こすためです。刺されてすぐに出て数時間でおさまる反応(即時型)と、1〜2日たってから出て数日〜1週間ほど続く反応(遅延型)があり、何日もかゆいのは、おもに遅延型の反応です。どちらが出るかは、年齢や体質、刺された回数によってちがいます。
蚊の寿命はどのくらい?
おとなの蚊の寿命は、種類や季節、気温などによって大きくちがい、成虫のまま冬をこす種類では、数か月生きるものもいます。ヒトスジシマカでは、1か月以上とする資料もあります。成虫のまま冬をこす種類もいます。
ボウフラは何日で蚊になる?
ヒトスジシマカの場合、夏なら幼虫(ボウフラ)の期間が7〜10日、さなぎ(オニボウフラ)の期間が3〜5日ほどで、おとなの蚊になります。暑い時期には、卵からおとなになるまでが5日ほどですむ蚊もいます。
蚊は何月までいる? 冬はどうしているの?
東京や神奈川では、ヒトスジシマカは5〜11月ごろ、アカイエカは4〜11月ごろに見られます。冬は、ヒトスジシマカは乾燥にたえる卵で、アカイエカやコガタアカイエカは成虫のままでこします。ビルの地下などにすむチカイエカは、冬でも活動します。
蚊はどこで生まれて、どこにひそんでいるの?
幼虫(ボウフラ)は、水のたまった所で育ちます。ヒトスジシマカは、放置された容器や古タイヤ、竹の切り株、雨水ますなどの小さな水たまりで、アカイエカは下水溝などで育ちます。おとなの蚊は、葉の多い植物があって、日かげで風の当たらない場所にひそんでいます。
蚊が媒介する感染症には何がある?
マラリア、デング熱、日本脳炎、黄熱、チクングニア熱、ジカウイルス感染症、ウエストナイル熱、リンパ系フィラリア症などがあります。マラリアだけでも、2024年に世界で推定61万人が亡くなりました。日本でも2014年に、国内で蚊に刺されてデング熱にかかる人が162人出ました。

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  1. 01 蚊にも「血の好み」がある、南フロリダの3種で確認
  2. 02 地球上のすべての「蚊」を根絶したらどうなるのか?
  3. 03 ニンニクが「蚊の交尾行動」を妨害すると判明
  4. 04 夏フェスで判明!蚊に狙われやすい人の意外な行動
  5. 05 蚊の唾液がウイルス感染を加速させている――病原体が蚊を選ぶ要因

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参考文献

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表紙の写真: James Gathany(アメリカ疾病予防管理センター)(Public domain) / Wikimedia Commons
ほかの写真のクレジットは、それぞれの写真のページにあります。
この図鑑は、参考文献の資料をもとに、ナゾロジー編集部がまとめています。