Point
■イェール大学が、遺伝子操作したオスの蚊を野生のメスと交配させることで、子孫繁栄を妨害する実験結果を報告
■27ヶ月に及ぶ実験期間のうち、最初は蚊の減少が見られたものの、18ヶ月後にはもと通りの数に戻っていた
■さらに、強い殺虫耐性を持つハイブリッド種が誕生したと報告されている
アメリカのイェール大学が数年前から行なっていた、「蚊を遺伝子操作して個体数を減らす」という実験の結果が発表されました。
https://www.gizmodo.jp/2016/11/mosquito-genocide.html
最初の数ヶ月は予測通り蚊が減少しましたが、18ヶ月後にはもと通りに戻ったといいます。さらに、遺伝子操作したオスと野生のメスとのハイブリッド種が誕生したことで、蚊の殺虫耐性が強まった可能性もあるようです。
研究の詳細は、9月10日付けで「Nature Scientific Reports」に掲載されています。
https://www.nature.com/articles/s41598-019-49660-6
実験は失敗。個体数は元通りに
ジカウイルスやマラリアといった病原菌を広める危険な生物として知られる蚊。特に昨今は地球温暖化で蚊の生息範囲が広まり、病気の感染地域も以前より大きくなっています。
こうした状況を鑑みて、専門家たちは蚊の遺伝子をハッキングし、子孫繁栄を妨害する方法を研究していました。
イェール大学のジェフリー・パウエル氏はその仕組みについて、「オスの個体に致死的な遺伝子を組み込むことで、交配時にメスの体内に侵入し、子孫を宿すことができなくなる」と説明しています。
ブラジルのジャコビノで実施されたテストでは、ラボ内で遺伝子組み換えしたオスを、約45万匹ずつ週に1度野生に放ち、これを27ヶ月間に渡って続けました。
トータルで数千万の遺伝子操作されたオスが野に解き放たれたことになります。
リリース後、6ヶ月、12ヶ月、27ヶ月、30ヶ月の間隔で追跡調査を行いました。試験前は、ジャコビノに生息する蚊の85%を減らすことができると予測されました。
実際、最初の数ヶ月間は予定通りメスの子孫繁栄率が下がりましたが、18ヶ月後には元どおりの個体数に逆戻りしていたのです。
パウエル氏は、「おそらくメスが遺伝子組み換えされたオスと交配しない方法を見つけたのだろう」と推測しています。