- 蚊をマラリアから守る不思議なマイクロスポリディアMBという菌類が発見された
- マイクロスポリディアMBは蚊にとって代謝と免疫力を高めてくれる益虫
- マラリアに対して蚊と共闘する未来が来るかも知れない
マラリアは人類が抱える最も深刻な感染症です。毎年2億人以上の人間に感染し、40万人以上の犠牲者(6割は五歳未満)を出しています。
そのため人類の多くの努力がマラリアを媒介する、蚊を殺すことに注がれてきました。
しかし今回、国際的な研究チームにより、蚊を殺すのではなく蚊をマラリア感染から守る予防法が考案されました。
蚊がマラリアに感染していなければ、蚊に刺される人間もマラリアに感染しないからです。
その鍵となったのは、蚊にとって益虫であるマイクロスポリディアMB(微胞子虫)とよばれる微生物でした。
最もマラリアが蔓延している地域ですら、マイクロスポリディアMBに感染していた蚊の体内には、マラリアの病原体が発見されなかったのです。
しかもマイクロスポリディアMBは蚊の卵巣に寄生するために、人間の関与なしに、世代を超えて蚊の体内に存在し続けることができます。
もし全ての蚊をマイクロスポリディアMBに感染させることができれば、人類はマラリアを永遠に終息させることができるかもしれません。
ですがマイクロスポリディアMBは、どうやって蚊をマラリア感染から守っていたのでしょうか?
不思議な寄生生物が蚊の体内にいた
マラリアのもたらす犠牲者は極めて多く、そのほとんどが子供です。
そのため人類は長年に渡りマラリアとマラリアを媒介する蚊を根絶させるための研究を続けてきました。
しかし研究を進めるうちに、研究者たちは不思議な現象に気付きました。
マラリアの蔓延が最も深刻な地域ですら、マラリアに感染していない蚊が最大9%も存在していたのです。
研究者たちは、蚊がマラリア感染から逃れる理由を探るため、未感染である蚊の体内を詳しく調べました。
その結果、感染を逃れている蚊の体内からは共通して、マイクロスポリディアMB(微胞子虫)と呼ばれる微生物が発見されました。
マイクロスポリディアMB(微胞子虫)は単一真核細胞からなる菌類ですが、寄生生活が長く続いたせいで真核生物であるながらミトコンドリアを失ってしまったという、極めて不思議な生物です。
またマイクロスポリディアMBは、蚊の卵巣への寄生を通して卵の中に潜み、世代を超えて蚊の体内で存在し続けることも判明しました。