血を吸うのは「産卵前のメス」だけ
蚊は約1億7000万年前の恐竜時代にあたるジュラ紀に出現し、いくつかのグループに分かれながら進化を続けてきました。
現生するグループには、吸血性のない「ホソカ科(Dixidae)」「ケヨソイカ科(Chaoboridae)」、カエルの血を吸う「チスイケヨソイカ科(corethrellidae)」、そして人やその他の動物の血を吸う「カ科(Culicidae)」がいます。
私たちに最も身近なカ科には、世界に約3000種類が存在し、うち日本には約100種がいます。
蚊は吸血によって病原菌を媒介する危険な生物であり、マラリア・デング熱・黄熱などの伝染病の原因となっています。
特にアフリカなどの熱帯地域では年間50万人の死者が出ており、人類を最も死に至らしめている生物です。
その一方で、血を吸うのは「産卵前のメスだけ」であるのをご存知でしょうか?
蚊は人を含め、牛や豚、馬、ニワトリの血を吸っていますが、それらはすべて「交尾後のメス」なのです。
蚊の主なエネルギー源は糖分であり、オスもメスも普段は花の蜜を吸って暮らしています。
しかし産卵前になると、メスはたくさんの卵を産むために糖分だけでなくタンパク質などの栄養が必要となります。
そうした貴重な栄養源を持っているのは人間や動物なので、産卵前のメスは危険を承知で私たちの血を吸いにやってくるのです。
そのため、メスの蚊の口吻(こうふん)は、動物の皮膚を突き刺せるように鋭利で頑丈なものとなっています。
これと対照的に、オスの蚊の口吻は皮膚を突き刺せるほど強くないため、そもそも動物の血が吸えません。
彼らはメスと違い、花の蜜を吸って平和に暮らしているのです。
ところが新たに見つかった化石は、オスの蚊もかつて吸血能力を備えていたことを物語るものでした。