蚊の分類、生態
蚊は、ハエ目、カ科に所属する昆虫です。現在約3,000種が確認されていますが、日本には約100種が存在しています。
卵→幼虫→蛹→成虫と4段階の成長をし、蛹期があるため『完全変態』とよばれる成長方式をしています。卵からは約10日間ほどで成虫となります。
蚊は水中に卵を生み、幼虫である『ボウフラ』の間は水中で過ごします。
蚊の発生対策に、水場を減らすこと(雨水の溜まりやすい廃タイヤを処分するなど)が有効なのはこのためです。
また、多くの昆虫類の成虫は2対4枚の翅を持ちますが、蚊はハエと同様2枚のみの翅を持ちます。
そして、蚊と聞くと全種が吸血するようなイメージをお持ちではないでしょうか? しかし実はそうでもないのです。
日本にいる約100種の蚊のうち、吸血するのはヒトスジシマカ(ヤブカ)、アカイエカ、チカイエカなどの20種類のみです。
更に、それらの蚊もいつも吸血するわけではありません。
普段は植物由来の液(樹液、果汁、花の蜜など)を吸っており、吸血するのは産卵を控えた4~10月のメスだけです。
気温15℃以上で活動し、25~30℃で活動が活発になるため、冬期は活動を抑えていたり、そもそも卵で過ごす蚊もいます。
『蚊が花の蜜を吸う』というイメージには、ギャップを感じる人も多いのではないでしょうか?
ちなみに、蚊は一回の吸血で蚊自身の体重(約2mg)とほぼ同量の血を吸血するため、吸血後は身体が重くなり、飛行速度が落ちます。
そのため素早く飛び回るイメージのある蚊ですが、吸血後は退治しやすいタイミングとなります。
手で叩き潰すことに成功したとき、手のひらに血がつくことが多いのはこのためでしょう。
また、人間以外の動物を吸血する蚊も古くから存在しています。
古い例では約2億年前(ジュラ紀)の地層から蚊の化石が発見されています。
映画『ジュラシック・パーク』では、琥珀の中から発見された蚊が吸血したサンプルから、恐竜を復活させる描写もありました。
(※実際にはDNAが壊れるほど古い時代であるため、同手法での恐竜復活は難しいです)
『蚊=人間の血を吸う虫』というイメージが定着しているため、意外に感じる方も多いのではないでしょうか?
なぜ吸血するのか?
では、なぜ特定の種の産卵を控えた4~10月のメスだけ、吸血するのでしょうか?
それは、産卵に必要な栄養源を吸血によって得ているためです。
産卵をするためには、準備期間(卵巣を発達させるなど)~産卵まで膨大なエネルギーを必要とします。そのエネルギー源である糖質、蛋白質などを吸血によって得ているのです。
『吸血で栄養を得ている』と聞くと、まるでドラキュラのようなイメージが湧いてきます。
しかし、私達人間も妊娠期間には特定の栄養を必要とすることが知られているため、出産のためだと分かれば『蚊のお母さんも栄養を必要としているんだ』と、ちょっとは親近感が沸くかもしれません。
吸血する対象の動物は、どうやって見つけるのか?
『血が吸いたい!』と思ったお母さん蚊は、どうやってその動物を見つけるのでしょうか。それは、標的が持つ次の3つの情報を頼りにしています。
①体温
②発生する炭酸ガス(呼吸時に出る二酸化炭素など)
③におい(汗など)
夜などの暗闇でも刺されるのも、当然だったようです。
また、一説では『血液型』により刺されやすさが違うとも言われますが、それには科学的根拠がありません。
しかし、以下の3つの説は、上述の①②③に沿っており、科学的に根拠があります。
1.男性の方が刺されやすい
→女性より汗をかきやすく、体臭も多いため
2.飲酒後は刺されやすい
→新陳代謝が増し、体温上昇、発汗量、呼吸量が増えるため
3.肌や服の色が濃い方が刺さされやすい
→熱を集めるため、体温上昇、発汗量、呼吸量が増えるため
4.足が臭う人ほど刺されやすい
→足に存在するバクテリアが、汗を分解して発する酸性の臭いに寄ってくるため
つまり『飲酒をしない、色白でおしとやかな女性』は刺されにくいと言えるかもしれません。
また、ネッタイシマカなどの一部の蚊は、人間をメインに吸血します。
「人間の汗に含まれる老廃物『乳酸』や、『足に存在するバクテリアが汗を分解したもの』の臭いをかぎわけている」とも考えられていますが、未だ研究中です。
他の動物より、私達は蚊にとって何かわかりやすい匂いを発しているのかもしれません。