なぜ昆虫は海に「戻れない」のか?
そもそも「昆虫」はどのように誕生したのでしょうか?
その起源は他のすべての動植物と同じく「海」で始まりました。
昆虫の祖先はもともと海にいた「ムカデエビ」という甲殻類だとされています。
ムカデエビはその名の通り、ムカデのように細長い体とエビのような硬い殻を持ち合わせていました。
今から4億年以上前、このムカデエビの一部が陸上に進出し、そこから長い年月をかけて昆虫へと進化したのです。

昆虫の簡単な定義は、体が頭・胸・お腹の3つに分かれていて、胸の部分から左右に3本ずつ、計6本の足が生えていること。
そして私たちヒトのように内側から体を支える骨(内骨格)がなく、体表面を覆う外骨格のみで体を支えていることです。
そのため、昆虫は中がふわトロでやわらかく、外がパリッと硬いたこ焼きみたいな生き物になっているのですが、これは彼らが海にいた甲殻類の祖先から進化したためです。
エビやカニを食べても、中に魚のような硬い骨はありませんよね。
となると昆虫は海にいた甲殻類から進化したわけですから、海に戻るには少しばかり退化すればいいだけのような気もします。
現に海から陸に上がって、また海に戻った生物の例はあります。
イルカやクジラがそうです。
イルカやクジラの祖先はもともと海にいて、一度陸に上がって4本足となり、そこからまた海に舞い戻り、長い年月をかけて4本足をヒレへと変化させました。
ただこれを「退化」と呼ぶのは不適当であり、「適応進化」と呼ぶ方が相応しいでしょう。
なので、昆虫も海に戻るにはイルカやクジラのように適応進化すればいいのですが、これがムリゲー状態になっているのが現況です。

一応ですがウミアメンボのように、確かに海に住んでいる例外的な昆虫はいます。
しかしウミアメンボは海表面を漂っているだけであり、海中に潜ると死んでしまうので、完璧に海に適応しているかというと疑問です。
またユスリカやゲンゴロウの中にも海水で生きていけるものがいますが、彼らがいるのは浜辺の小さな海水だまりのような場所です。
ただ「ゾウアザラシシラミ」という、アザラシの体に寄生して深い場所まで潜れる昆虫もいますが、これは異例中の異例であり、昆虫全体としてはやはり海には適応できていません。
それはなぜなのか、現時点で最も有力な説を見てみましょう。