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Credit:Canva . ナゾロジー編集部
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実際にデング熱ウイルスに「被験者を感染」させて新薬の効果を検証!

2023.11.02 Thursday

医学に身を捧げてくれました。

米国に本社を置くジョンソン・エンド・ジョンソン(ヤンセン)によって、デング熱に対して予防と治療の両方の効果が期待される新薬「JNJ-1802」の有効性を確かめるため、人間の被験者を使った実験が行われました。

実験では、長期保存状態にあった、1970年代にインドネシアで発生したデング熱株由来のウイルス(DENV-3)が被験者たちに注射され、人為的な感染が起こされました。

ただ感染した被験者たちのうち新薬「JNJ-1802」を与えられたのは半数だけであり、残りの半数の被験者たちにはプラセボ(偽薬)が投与され、比較が行われました。

新薬「JNJ-1802」はデング熱の治療や予防にどの程度効果があったのでしょうか?

今回はまず最初のページでデング熱の爆発的な感染拡大、2ページ目ではデング熱ウイルスが持つ「ワクチン殺し」と言える厄介な性質を解説し、3ページで新薬「JNJ-1802」の試験で行われた人間を使った実験を紹介したいと思います。

研究内容の詳細は2023年10月20日に『ジョンソン・エンド・ジョンソン(ヤンセン)』から発表された報告書にて公開されています。

Janssen Announces Promising Antiviral Activity Against Dengue in a Phase 2a Human Challenge Model https://www.jnj.com/janssen-announces-promising-antiviral-activity-against-dengue-in-a-phase-2a-human-challenge-model
Blocking NS3–NS4B interaction inhibits dengue virus in non-human primates https://www.nature.com/articles/s41586-023-05790-6

世界人口の半数がデング熱の危機に晒されている

遠くない将来、日本もデング熱の流行する地域に含まれるかもしれません
遠くない将来、日本もデング熱の流行する地域に含まれるかもしれません / Credit:WHO

デング熱は蚊(ネッタイシマカ)を媒介にしたウイルスによって引き起こされ、毎年3億9000万人が感染し、そのうちの4分の1にあたる1億人が発症しています。

症状はウイルス株によってさまざまであり、軽度のインフルエンザに似た症状しか起こさない場合もありますが、発症者の5%は重症デング熱と呼ばれる危険な状態に陥ってしまします。

重症デング熱の患者に対してに病院でのケアが行われた場合、死亡率は2~5%であるとされていますが、治療せず放置した場合の死亡率は15%に達することが知られています。

(※適切な治療に加えて「早期発見」が行われた場合、死亡率は1%未満に低下させることが可能です)

また現在、気候変動の影響によってネッタイシマカの生息地の急激な拡大が起きており、世界人口の半分にあたる40億人が暮らす地域に重なりつつあります。

(※過去50年間でデング熱の発生率は30倍に増加しており、地域によってはここ数年で患者数が何倍も増加したことが報告されています)

そのためデング熱は2019年にWHO(世界保健機関)によって、最も健康に脅威となるトップ10の1つに指定されました。

しかし残念なことに、現時点においてデング熱 / 重症デング熱に対して特異的な治療薬(専用の薬)は存在せず、開発されたワクチンの効果も限定的で、逆に害となってしまう場合もありました。

次ページワクチン接種が重症化の原因になってしまうメカニズム

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