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パーキンソン病は脳ではなく、実は腎臓が原因の病気かもしれない

2025.06.29 13:00:06 Sunday

手が震える、動きが鈍くなる、転びやすくなる。そんな症状があらわれる病気として知られるのがパーキンソン病です。

多くの人がこの病気を「脳の病気」として理解してきました。実際、これまでは脳の中にあるドーパミンを作る神経細胞が減ることが原因とされ、脳の変性に注目が集まってきました。

しかし、最新の研究は、この常識にゆさぶりをかけるものです。

中国・武漢大学人民医院(Renmin Hospital of Wuhan University, Wuhan, China)を中心とする国際研究チームは、腎臓が血液中の異常なたんぱく質の排出に関与しており、それが処理されずに神経を通じて脳に伝わる可能性を発見しました。

この研究の詳細は、2025年1月23日付けで科学雑誌『Nature Neuroscience』に掲載されています。

Scientists uncover kidney-to-brain route for Parkinson’s-related protein spread Scientists uncover kidney-to-brain route for Parkinson’s-related protein spread https://www.psypost.org/scientists-uncover-kidney-to-brain-route-for-parkinsons-related-protein-spread/
Propagation of pathologic α-synuclein from kidney to brain may contribute to Parkinson’s disease https://doi.org/10.1038/s41593-024-01866-2

脳の病気に「腎臓」が関係するという意外性

パーキンソン病では、内に「α-シヌクレイン(alpha-synuclein)」というたんぱく質が異常にたまることが知られています。

このたんぱく質が固まってできたものが「レビー小体(Lewy bodies)」と呼ばれ、神経細胞を傷つけることでさまざまな症状を引き起こすと考えられています。

パーキンソン病中脳黒質神経細胞にみられるレビー小体/Credit:脳科学辞典

従来、α-シヌクレインは「脳の中」で発生するか、「腸から迷走神経を通って脳に届く」とされる説が主流でした。

しかし近年、腎機能が低下した高齢者にパーキンソン病が多いという傾向が疫学的に指摘されてきました。

そこで研究チームは、腎臓とα-シヌクレインの関係を詳しく調べることにしました。

彼らはまず、亡くなった人の腎臓組織を調べ、パーキンソン病またはレビー小体型認知症と診断されていた11人中10人の腎臓に、異常なα-シヌクレインの集積があることを発見しました。

また、慢性腎不全の患者でも高頻度にこのたんぱく質の蓄積が見つかったのです。

そこで、マウスを使った実験を行ったところ、腎機能が正常な場合は血液中のα-シヌクレインが腎臓で処理されるのに対し、腎機能が低下していると血液中に残ったままになり、それが腎臓を通じる神経経路(腎神経)を介して、脊髄や延髄などの中枢神経にまで到達する可能性があることがわかりました。

さらに研究チームは、腎臓の神経(腎神経)を切断すると、脳へのα-シヌクレインの拡散が防げることも確認したのです。

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