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Credit: canva/ナゾロジー編集部
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「男の娘で美人局⁉」蛍の求愛信号を利用したクモの恐るべき採餌戦略

2024.08.21 Wednesday

ゾッとするような罠をしかけるクモが見つかったようです。

中国・華中農業大学(HAU)はこのほど、東アジアに生息する「オニグモ」が巣にかかったオス蛍をハッキングして、メスの発光シグナルを強制させ、さらなるオス蛍の獲物を誘き寄せている証拠を発見しました。

オス蛍からしてみれば、「おっ、あそこにメスがいる!」と思って近づいてみると、その正体は捕食者のクモだったという、これ以上ない悪夢でしょう。

研究の詳細は2024年8月19日付で科学雑誌『Current Biology』に掲載されています。

 

Spider Species Uses Male Fireflies as Ghastly Puppets to Seduce Its Prey https://www.sciencealert.com/spider-species-uses-male-fireflies-as-ghastly-puppets-to-seduce-its-prey Spider exploits firefly’s flashing signals to lure more prey https://www.eurekalert.org/news-releases/1054078
Spiders manipulate and exploit bioluminescent signals of fireflies https://doi.org/10.1016/j.cub.2024.07.011

巣にかかったオス蛍が「メスの光信号」を放っていた?

研究主任のフー・シンファ(Fu Xinhua)氏は、蛍の生物発光による求愛シグナルを調査している昆虫学者です。

同氏はある日の野外調査中、オニグモの巣に引っかかっている蛍の奇妙なパターンに気づきました。

オニグモ(学名:Araneus ventricosus)はコガネグモ科の一種で、日本国内の北海道〜琉球列島まで、国外では中国・台湾・韓国の東アジア圏に分布しています。

体長は2〜3センチ程度で、円形の巣を張って獲物を待ち伏せするのが特徴です。

シンファ氏はオニグモの巣に蛍の一種(学名:Abscondita terminalis)がかかっているのを度々確認しましたが、不思議なことに、そのほとんどすべてがオス蛍だったのです。

同氏はその後も何度か野外調査を重ねたものの、オニグモの巣にメス蛍が引っかかっている例はめったにありませんでした。

「これは何かある… 」と直感したシンファ氏はオニグモの巣を詳しく観察することにします。

オニグモの巣に引っかかったオス蛍
オニグモの巣に引っかかったオス蛍 / Credit: Xinhua Fu et al., Current Biology(2024)

するとさらに奇妙な現象が発見されました。

オニグモの巣に引っかかったオス蛍がなぜかメス蛍に特有の光信号を発していたのです。

蛍のオスとメスは一般に、繁殖パートナーを探す上で互いに光信号で合図を送り合うのですが、このとき、光信号は性別に固有のパターンで発光します。

例えば、今回の蛍(学名:Abscondita terminalis)の場合ですと、オスは腹部にある2つの発光器官を使って、複数の光パルスを連鎖させます。

他方でメスは1つの発光器官を使って単発の光パルスを発することが知られています。

そして蛍の繁殖行動は、オスの方が空中を飛び回って、草むらや葉っぱの上でジッとしているメスの光信号を探す形が基本的です。

これを踏まえると、巣にかかったオス蛍がメスの光信号を放っていたのは明らかに奇妙なことでした。

シンファ氏は「これはオニグモの採餌戦略かもしれない」と考えて、本格的な調査を行いました。

次ページオニグモがオス蛍の発光を「ハッキング」していた!

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