先天性疾患は治る時代になりつつある
遺伝子治療とは、病気や障害の原因となる遺伝子の異常を修正するために、患者の体に新しい遺伝子を導入し、その遺伝子を通じて治療を行う技術です。
具体的には、遺伝子の異常によって引き起こされる病気や疾患を修正するために、欠損している遺伝子を補ったり、誤った遺伝子を修正したりします。
遺伝子治療が注目を集める理由は、そのアプローチが病気の根治につながる可能性があるからです。
従来の薬物療法や手術では、病気の症状を一時的に抑えたり、悪化を防ぐことが目的でしたが、遺伝子治療は病気の根本的な原因にアプローチし、文字通り患者の遺伝子レベルでの治療を目指します。
新たな研究では、幼児期に失明をもたらすレーベル先天性黒内障に対しての遺伝子治療の臨床試験(フェーズ1および2)が試みられました。
レーベル先天性黒内障(Leber’s Congenital Amaurosis, LCA)は、網膜の光を感じる細胞(視細胞)の機能不全や変性が原因であり、光を視覚信号に変換する過程に障害が生じます。
またこれまでの研究により20以上の遺伝子がレーベル先天性黒内障に関わる原因遺伝子として特定されています。
その中でも代表的なレーベル先天性黒内障 1 (LCA1) はGUCY2Dと呼ばれる遺伝子に起こる変異であり、この遺伝子に問題が起こると、視細胞が光を感知する能力が低下してしまいます。
そこで今回、ペンシルバニア大学の研究者たちは、患者のGUCY2D遺伝子を書き換える遺伝子治療試験を行うことにしました。