成果バイアスとは? どうして危険なのか?
ビジネスやスポーツ、日常生活まで、私たちはよく「うまくいったから良い判断」「失敗したから悪い判断」と考えてしまいがちです。
たとえば、大胆な決断で成功した経営者の話は、ニュースや本で繰り返し語られます。そんな「成功者の言葉」は、なんとなく正しそうに感じてしまいます。
でも、ここにある心理現象による落とし穴があります。
成果バイアス(Outcome bias)とは、人の判断や決断の良し悪しを、その結果だけで評価してしまう心理のクセです。
しかしこれは非常に危険です。
たとえば、こんなサイコロの賭けを考えてみてください。
「サイコロを振って6が出れば10万円もらえる。ただし参加料は5万円。他の目なら何ももらえない」
冷静に計算すれば6分の1しか勝てず、ほとんどの人が損をする「割の悪い賭け」です。
では、たまたま6を出して勝った人が「この賭けは最高だった!」と語れば、 まわりの人も「やっぱり思い切った行動が大事なんだ」と信じてしまうでしょうか。
「そんなことはない」と感じる人がほとんどでしょう。
しかし、状況がより複雑なビジネスの世界では、成果バイアスに抗うのは簡単ではありません。
たとえば、600人もの経営者が、深く調べもせずに大胆な事業投資をしたとします。
500人は失敗しその会社は倒産してしまいますが、100人は運よく成功し、その会社は一時的に大儲けしました。
そしてそれらの経営者だけがメディアに取り上げられ、彼らの手法がさも良かったように語られます。
この「成功した経営者」の言葉の影響を受けないようにすることは、簡単ではりません。
では、私たちがメディアでいつも見ている成功者たちは、本当の成功者でしょうか。
それともたまたま成功した人たちでしょうか。
このように、運よくうまくいった例ばかりに目を向けると、 「本当に良い決断」や「再現性のある考え方」が見えにくくなってしまいます。
こうした成果バイアスの影響は、実際の研究でも確かめられています。