不安体質は「生まれる前」に脳の中で芽生えていた
今回の研究で使われたのは、妊娠中に「炎症」や「ストレス」を受けた母マウスと、その子どもたちです。
研究チームはまず、妊娠した母マウスに“感染やストレスに似た状態”を人工的に作り出しました。
すると、生まれてきた子マウスは成長後に「不安を感じやすい」傾向が明確に現れました。
たとえば、「安全な場所」から「少し危険な場所」へ移動することを強く避けるなど、人間でいう「緊張しやすい」「心配性」な性質が顕著に見られたのです。
さらに調査を進めると、子マウスの脳――特に「腹側歯状回(vDG)」という脳領域――に注目すべき変化が起きていることがわかりました。
この部分は「周囲の環境にどれくらい脅威があるか」を判断する役割をもつ重要な場所です。
チームが脳細胞を詳しく調べた結果、胎児期にストレス刺激を経験した子マウスの脳細胞は、ごく一部が「危険」を感じやすく、過剰に反応するようになっていたことが明らかになりました。
つまり「生まれる前」に受けた母体の影響が、子どもの脳に“見えない印”として刻まれていたのです。