あなたの「不安体質」は、あなたのせいじゃない?
さらに注目すべきなのは、脳全体ではなく、特定の細胞だけが強く影響を受けるという点です。
脳の腹側歯状回には、数十万個の神経細胞がありますが、実際に変化を強く受けて「不安を感じやすくなる」細胞は、全体のうち10〜30%ほどにとどまっていました。
しかし、この限られた細胞群が、将来的に「危険を察知すると過剰に反応し、不安を感じやすくなる」回路の中核となることが示されています。
研究では、「安全な場所」から「危険な場所」へ移動するとき、こうした細胞が先回りして強く活動し、「まだ危険が現実化していない段階で、不安や回避行動を引き起こす」ことが明らかになりました。
この仕組みは、人間の「過剰な心配」や「極端な警戒心」にも通じるものがあると考えられています。
つまり、不安体質の人は「目の前に危険がなくても、脳の一部が先回りして警報を鳴らしてしまう」状態になっているかもしれないのです。

今回の研究は、不安体質の“根っこ”が想像以上に深く、「生まれる前」にまで遡る可能性があることを示しました。
私たちが感じる「不安」や「心配性」は、単なる性格や経験だけではなく、胎児期のほんのわずかな環境の違いによっても形作られているのかもしれません。
今後はこの仕組みがヒトにも応用できるか、さらなる研究が期待されています。
そして健康な妊娠環境が、心の健康にどれほど大きな影響を持つかを社会全体で見直す時期が来ているのかもしれません。