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Credit: canva
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クマとの「遭遇リスク」を予測するAIモデルを開発

2025.10.01 17:00:11 Wednesday

最近、山林に棲むクマが人里や市街地に姿を現すニュースが日本各地で相次いでいます。

かつては「山奥の話」と思われていたクマの出没ですが、今や多くの地域で「明日は我が身」と感じられるほど、身近な問題となっています。

そんな中、上智大学の研究チームが開発したのは、クマと人との“危険な遭遇”を予測するAIモデル

自然の摂理と社会の変化が絡み合うクマ出没の謎に、最新のデータサイエンスが挑みます。

研究の詳細は2025年7月22日付で科学雑誌『International Journal of Data Science and Analytics』に掲載されています。

クマとの遭遇リスクをAIで予測するモデルを開発 https://www.sophia.ac.jp/jpn/article/news/release/250930_bear/
Bear warning: predicting encounters using temporal, environmental, and demographic features https://doi.org/10.1007/s41060-025-00866-0

クマ出没急増の背景と、AIによる予測への挑戦

2023年、秋田県ではクマの出没件数が年間平均800件から、わずか1年で3900件以上にまで急増しました。

その要因の一つとされるのが、クマの主食であるブナの実の凶作です。

ブナの実が不作になると、クマは食料を求めて山を下り、人里へと姿を現すリスクが高まります。

また、過疎化や高齢化が進む中山間地域では、耕作放棄地が増え、クマが人の生活圏に近づきやすい環境も広がっています。

こうした自然的・社会的な複合要因が、クマ出没の「新常態」を生み出しているのです。

しかし「今年は出没が多いらしい」と噂されても、実際にどこで、いつクマに遭遇する危険が高いのか――その予測は非常に困難でした。

クマの行動は季節や天候、食料事情など多くの要因が絡み合い、一筋縄ではいかないからです。

この難題に、研究チームは膨大なデータとAI技術で挑みました。

過去の出没記録や日時はもちろん、土地の利用状況(例えば水田や竹林、人口構造物の分布)、高齢者人口、道路の有無、標高、さらにはブナの実の豊凶や気象情報まで――ありとあらゆる「クマにまつわるデータ」を1km四方ごとに細かく集積。

それらをAIに学習させ、日ごとに「出没リスク」を地図として描き出すことに成功したのです。

次ページAIが明かした「クマ出没」のカギと社会へのインパクト

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