クマ出没急増の背景と、AIによる予測への挑戦
2023年、秋田県ではクマの出没件数が年間平均800件から、わずか1年で3900件以上にまで急増しました。
その要因の一つとされるのが、クマの主食であるブナの実の凶作です。
ブナの実が不作になると、クマは食料を求めて山を下り、人里へと姿を現すリスクが高まります。
また、過疎化や高齢化が進む中山間地域では、耕作放棄地が増え、クマが人の生活圏に近づきやすい環境も広がっています。
こうした自然的・社会的な複合要因が、クマ出没の「新常態」を生み出しているのです。
しかし「今年は出没が多いらしい」と噂されても、実際にどこで、いつクマに遭遇する危険が高いのか――その予測は非常に困難でした。
クマの行動は季節や天候、食料事情など多くの要因が絡み合い、一筋縄ではいかないからです。
この難題に、研究チームは膨大なデータとAI技術で挑みました。
過去の出没記録や日時はもちろん、土地の利用状況(例えば水田や竹林、人口構造物の分布)、高齢者人口、道路の有無、標高、さらにはブナの実の豊凶や気象情報まで――ありとあらゆる「クマにまつわるデータ」を1km四方ごとに細かく集積。
それらをAIに学習させ、日ごとに「出没リスク」を地図として描き出すことに成功したのです。