「DNAはお手本を見ながら作る」という生物の大前提が、細菌の中で破られていた――アミノ酸が文字代わりに
「DNAはお手本を見ながら作る」という生物の大前提が、細菌の中で破られていた――アミノ酸が文字代わりに / Credit:Canva
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「DNAはお手本を見ながら作る」という生物の大前提が、細菌の中で破られていた――アミノ酸が文字代わりに

2026.04.21 19:30:32 Tuesday

アメリカのスタンフォード大学(Stanford University)で行われた研究によって、ある細菌が、お手本となるDNAもRNAも一切使わずに、自分の体の一部を”文字の代役”にしてDNAを紡ぎ出していたことが明らかになりました。

これは70年近く、生物の教科書の中心にあり続けた「DNAを作るにはお手本となる核酸が必要」という基本ルールに、強い例外を突きつける発見です。

数千文字に及ぶ長いDNAを、タンパク質の形だけを頼りに正確に紡ぎ出す仕組みが見つかったのは、今回が初めてです。

研究を率いたアレックス・ガオ博士は「タンパク質そのものが、DNA配列の設計図として働いていたのです」「生命がDNAを作る、根本的に新しい方法です」と述べています。

なぜ細菌はそんな離れ業を身につけたのでしょうか。

その答えは、目に見えない世界で繰り広げられている、壮絶な戦いの中にありました。

研究内容の詳細は2026年4月16日に『Science』にて発表されました。

Protein-templated synthesis of dinucleotide repeat DNA by an antiphage reverse transcriptase https://doi.org/10.1126/science.aed1656

DNAは「お手本をなぞって」作る、というのが常識だった

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Credit:Canva

生物の授業を思い出してみてください。

DNAの複製について、先生はだいたいこんなふうに説明したはずです。

「はしご状のDNAが、真ん中でパカッと割れて2本になる。そのそれぞれがお手本になって、相手をコピーしていくんだよ」

そして必ずセットで教わるのが、「AにはT、GにはCしかくっつかない」という鍵と鍵穴のような絶対ルール。

お手本の文字列を、1文字ずつ相方に翻訳していく――これがDNAの作り方の大原則でした。

この仕組みが解明されてから半世紀以上、教科書はずっとこう書いてきました。「長いDNAを規則正しく作るには、お手本となる核酸(DNAかRNA)が必要である」と。

これは生命の情報伝達を支える、ほとんど揺らいだことのないルールでした。

ところがスタンフォード大学のアレックス・ガオ博士のチームは、細の中に、このルールを堂々と破っている酵素を見つけてしまったのです。

その酵素は、お手本を一切使わずに、自分自身の体の形だけを頼りに、正確なDNA配列を作り出していました。

ガオ博士は素直に驚きを口にしています。

「これは本当に驚きでした。生命がDNAを作る、根本的に新しい方法です」と。

次ページお手本なしで、正確な繰り返しを作る酵素

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