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psychology

「着る服がない」悩みは、深い心理不安のサインである可能性

2026.07.02 07:00:51 Thursday

クローゼットに十分な衣服はあるのに「着る服がない」「自分に合うものがない」と感じたことはありませんか。

一見すると、それは単なる優柔不断やファッションの悩みに見えるかもしれません。

しかしこの感覚は、もっと深い心理的な不安と関係している可能性があります。

中年期の女性を対象とした新しい研究では、服の選択肢に満足している人ほど、幸福感が高い傾向にあることが判明。

反対に、「着る服がない」と感じている女性は、人前に出ることを避ける「社会的回避」が高くなっていました。

つまり「着る服がない」という悩みは、クローゼットの中身の問題ではなく、「今の自分が社会に出ていくための姿」を見つけられないというアイデンティティの問題なのかもしれません。

研究の詳細は、ロンドン芸術大学(UAL)により、2026年3月24日付で学術誌『Journal of Macromarketing』にオンライン掲載されています。

Having ‘Nothing to Wear’ Means More Than You Think https://www.psychologytoday.com/us/blog/the-clarity/202606/having-nothing-to-wear-means-more-than-you-think
Invisible Women: The Relationship Between Satisfaction with Fashion Clothing Choices and Well-Being in Middle-Aged Women https://doi.org/10.1177/02761467261429834

「着る服がない」は、アイデンティティの不安と関係?

「着る服がない」という言葉は、しばしば軽く扱われます。

なぜなら、実際にはクローゼットの中に服が何枚も入っていることが多いからです。

しかし、この言葉が意味しているのは、必ずしも「服が一枚もない」ということではありません。

むしろ、「今の自分にしっくりくる服がない」という感覚に近いものです。

若い頃は自然に着られていた服が、ある時期から急に似合わないと感じられることがあります。

少し派手すぎる、若すぎる、地味すぎる、体の線が出すぎる、逆に形がぼやけすぎると感じることもあります。

この違和感は、単なる服選びの迷いではありません。

それは、年齢、体型、仕事、家庭環境、社会的な立場が変わっていく中で、「今の自分をどう見せればいいのか」がわからなくなる感覚でもあります。

研究チームは今回、英国在住の中年女性252人を対象に、服の選択肢への満足度、幸福感、加齢不安、外見不安、社会的回避などを調査。

その結果、服の選択肢への満足度は、幸福感を有意に予測する要因であることが示されました。

また、この関係の一部は、社会的回避によって説明されました。

つまり、服に満足できない女性ほど、人前に出る場面を避けやすく、その回避が幸福感の低さと結びついていたのです。

このモデルは、中年女性の幸福感のばらつきの約19%を説明していました。

これは「おしゃれをすれば幸せになる」という単純な話ではありません。

服は、外見を飾るためだけのものではなく、私たちが社会に出ていくときの心理的な足場にもなっているということです。

たとえば、服が体に合わないと感じると、人は自然と自分の見た目を意識し始めます。

服を直したり、体型を気にしたり、人からどう見られているのかを考えたりします。

その意識が強くなると、本来なら会話や仕事や楽しみに向かうはずだった注意が、自分の外見に向かってしまいます。

そして、その不快感が強くなると、「今日は行かなくてもいいか」と外出そのものを避けるようになる可能性があります。

この意味で、「着る服がない」という悩みは、ただの衣服の問題ではなく、社会参加のしやすさに関わる問題なのです。

次ページファッション市場から見放されている感覚も問題に

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