日本はもう「世界屈指の長時間労働国」ではない
OECDが公表している2024年の「就業者1人当たり年間実労働時間」を見ると、日本は1617時間でした。
同じ指標ではOECD平均が1741時間、米国が1796時間、韓国が1865時間で、日本よりかなり長くなっています。
| 国 | 2024年の年間実労働時間 |
|---|---|
| メキシコ | 2215時間 |
| 韓国 | 1865時間 |
| 米国 | 1796時間 |
| OECD平均 | 1741時間 |
| イタリア | 1715時間 |
| 日本 | 1617時間 |
| 英国 | 1538時間 |
| フランス | 1509時間 |
| ドイツ | 1334時間 |
つまり日本の労働時間は、韓国や米国より短く、OECD平均も下回る一方、フランスやドイツよりは長いという位置にあります。
少なくとも「日本人は世界のどの国よりも長時間働いている」というイメージは、現在の平均労働時間には当てはまりません。
ただし、この数字をそのまま使って「日本の労働時間は世界第○位」と順位付けするのは適切ではありません。
OECD自身、年間実労働時間については、各国で統計資料や算出方法が異なるため、同じ年の絶対値を厳密に国同士で比較する用途には向かず、主として各国内の長期的な変化を見るのに適していると述べています。
では日本国内に限定して、この指標の変化を見ていくとどうなるでしょうか?
1990年の日本の年間実労働時間は2031時間でしたが、2024年には1617時間まで減っています。
日本の労働時間は、約35年間で年間400時間以上も減っている計算になるのです。
「日本人は長時間働く」というイメージは、過去にはかなり現実を反映していましたが、このデータを見ると現在もその状態が継続しているとは言えない状況のようです。
とはいえ、平均時間が短くなったからといって、日本の長時間労働問題が解決したと考えることもできません。
OECDは、日本の平均労働時間が大きく下がった背景の1つとして、比較的労働時間の短い非正規雇用者が増えたことを指摘しています。
極端な例を挙げれば、週60時間働く人と週20時間働く人が同数いれば、平均は週40時間になります。
平均値が正常に見えても、長時間労働をしている人がいなくなったわけではありません。非正規雇用が増えたことで、負担の増えた正規雇用の社員も大勢いるはずです。
そのため日本の状況は平均労働時間はかなり短くなった一方で、一部の職種や労働者には依然として長時間労働が集中していると考えた方が実態に近いでしょう。
ドイツはなぜ労働時間が短いのか?
こうしてみるとドイツが極端に労働時間が短く見えます。
この理由については、ドイツでは、フルタイムではなく短時間で働く雇用形態(正規雇用)が社会に広く普及しており、その割合が大きいため、就業者1人あたりの平均労働時間が強く押し下げられていると考えられてます。
またドイツは病欠の多さも特徴的だといいます。
ドイツでは、もともと病欠が多い傾向がありましたが、コロナ禍以降は具合が悪い人はきっちり休ませる企業が増えており、病欠で最長6週間、給与の100%が支払われます。そのため体調不良で無理に出勤する必要が小さいのです。
病欠が多いというのは問題に思えますが、体調の悪い人をきっちり休ませることは、感染症拡大による潜在的なコストを抑える可能性があり、復帰後の生産性も良くなると言われています。
こうしたデータから見るとドイツは労働時間の割にGDPが高いので、かなり理想的な環境に思えます。
しかしドイツでは就業者数そのものは多い一方、短時間勤務が多く、1人当たり労働時間は減っている一方で、企業は深刻な人手不足を訴えており、特に医療・介護、建設、再生可能エネルギー、宿泊・飲食、運輸などでは必要な技能を持つ人が不足しているといわれています。
ドイツでは平均労働時間は短いけれど、負担は均等ではなく、一部の労働者に長時間労働・残業・高い仕事密度が集中しているという調査報告もあります。
そのためOECDは、ドイツは“効率化に成功”しているわけではなく、むしろ短時間勤務の偏重や労働力不足を改善すべき課題だと述べています。
逆にメキシコは極端に平均労働時間が長いですが、経済的にあまり豊かでない国の場合、20~59歳の働き盛り以外の世代の労働時間が伸びることが原因になると考えられています。
若者の労働時間が短くなる大きな理由は学校教育が普及しているためで、高齢者の労働時間が短くなる大きな理由は年金制度が整っているためだと考えられています。そのためこれらの制度が整っていない国では、平均労働時間が伸びる傾向があるのです。

































