脳の信号には「上り」と「下り」がある

これまでの研究から、幻覚剤は脳の「デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)」に影響することが分かっていました。
DMNは、内省や空想、考えが凝り固まることにかかわる脳の領域の集まりです。
いわば「自分を考える脳」とも呼べる回路です。
多くの精神疾患ではこのネットワークの活動に異常が見られるため、新しい治療の主な標的とされています。
DMNは、脳の情報処理の階層のてっぺんに位置しています。
脳の活動は、脳の外側の層である大脳皮質の表面を絶えず動き回っています。
以前ナゾロジーではこういう記事も紹介しています(「ボッチプレイ」が長い10代ほど大脳皮質の表面積が小さい傾向)
情報は、感覚を担う低い階層の領域から、DMNのような高い階層の領域へと上っていきます。
この上りの流れを「ボトムアップ処理」、反対に高い領域から感覚の領域へ下る流れを「トップダウン処理」と呼びます。
健康な脳では、ボトムアップ処理が、外の世界から届いた新しい情報で頭の中のモデルを更新しています。
一方のトップダウン処理は、過去の経験や予想を使って、届いた感覚の情報を読み解きます。
この2つの向きの釣り合いが崩れると、心の苦しさや知覚のまちがいにつながることがあります。
ところがこれまでの脳画像の研究の多くは、脳を決まった場所の集まりとして扱い、活動を止まったものとして測ってきました。
これは、天気レーダーで雨雲の動きを追わずに、ひとつの地域の雨量だけを測るようなものです。
このやり方では、信号が上っているのか下っているのかという「向き」が見えません。
そこでアダム・パインズ氏、リアン・ウィリアムズ氏らのチームは、動画の画素がコマごとにどう動くかを追う「オプティカルフロー」という手法を応用しました。
これを使って、大脳皮質の上を動く活動の波の向きと大きさを追いかけたのです。





















