水素で発射する超音速の「インパルスランチャー」
現在、いくつかの企業が従来のロケット噴射に代わる方法を探しています。
例えば、アメリカのロケット開発企業「SpinLaunch」は、ハンマー投げのように回転させて上空へと投げ飛ばす新しいロケット発射システムを開発中です。
この方法であれば、燃料を削減しつつ、マッハ6以上の速度で発射体を放出できるようです。
しかし、Green Launch社が開発するロケット発射システムは、この速度をはるかに凌駕します。
Green Launch社の打ち上げシステムは「水素インパルスランチャー」と呼ばれています。
その仕組みを簡単に言うと、「長いチューブに水素、ヘリウム、酸素を充満させた後、その爆発によって発射体を押し出す」というもの。
以下の動画は、水平発射実験の映像をスローモーションにしたものです。
また以下は実際の速度バージョンです。
水素インパルスランチャーの威力と発射体の速度の大きさを十分に体感できますね。
Green Launch社は発射体の速度について次のように説明しています。
「現在の発射体の速度は11.2km/s(マッハ32.7)です。
とはいえ、バレルの消耗を防ぎ、再利用性を高めるため、打ち上げ速度を6km/s(マッハ17.5)にまで制限する予定です」
制限したとしても、SpinLaunch社の3倍の速度を出すことができるのですね。
ちなみに人工衛星を打ち上げる場合、搭載された電子機器が、この超音速のGに耐える必要があるでしょう。
Green Launch社は実際に加わるGのピークを約3万Gだと想定しており、既に簡単なテストも行われています。
また「水素インパルスランチャー」を利用するなら、コストが最小限に抑えられるだけでなく環境にも配慮できます。
発射で発生するのは大きな音と水だけであり、CO2が発生することはないのです。
そして2021年12月、同社は、アメリカ・アリゾナ州の実験場で初の垂直発射実験を行いました。
ここではマッハ3を超える速度を達成しており、発射体を成層圏まで届けることに成功しています。
2022年の後半には、上空100kmのライン(地球と宇宙の境界線とみなされることが多い)への到達を目標としています。
超音速のインパルスランチャーが、人工衛星を飛ばす日は近いのかもしれません。