渡来初期のニワトリは「食用」でなく「崇拝」されていた
研究チームは、ユーラシア大陸西部とアフリカ北西部にある16カ所の遺跡で見つかった計23羽のニワトリの骨を調査。
その結果、これまでの予想に大きく反し、ニワトリは紀元前800年頃までヨーロッパやアフリカには渡来していなかったことが示されました。
チームの指摘によると、ニワトリの渡来は、東南アジアから南アジア、中国、中東を経て、ギリシア、エトルリア、フェニキアなどの海上交易ルートを介し、地中海全域に広まったようです。
また、地中海からスコットランド、アイルランド、スカンジナビア、アイスランドなど、北の寒冷地にニワトリが定着するには、さらに約1000年ほどかかったといいます。
加えて、興味深いのは、地中海やヨーロッパに伝来した初期のニワトリが、食用ではなかったという点です。
その証拠に、ニワトリの骨に屠殺された跡がなく、単独で埋葬されたり、また人と一緒に埋葬されているケースが多く見られました。
しかも、男性は雄鶏(おんどり)、女性は雌鶏(めんどり)と一緒に埋葬される傾向にあったのです。
これは、初期のニワトリが一般に食用とは見なされておらず、崇拝の対象であったり、文化的な意味を持たされていたことを示唆します。
ニワトリが食用に供されるには、伝来からさらに数百年を要したようです。
研究主任の一人で、英オックスフォード大学(University of Oxford)のグレガー・ラーソン(Greger Larson)氏は、今回の成果について、「ニワトリの家畜化の時期とその場所に関するこれまでの理解が、いかに間違っていたかを証明するもの」と話します。
また、フランス国立科学研究センター(CNRS)のオフェリア・ルブラスール(Ophélie Lebrasseur)氏は、こう言います。
「これほどまでに身近で人気のある動物でありながら、ニワトリが比較的最近になって家畜化されたという事実には驚かされるばかりです。
私たちの研究は、しっかりとした骨学的比較、厳密な年代測定、およびこれらの発見をより広い文化的・環境的文脈の中に位置づけることの重要性を強調しています」