家畜化のきっかけは「稲作」だった?
2020年の遺伝子研究で、ニワトリの誕生は、東南アジアのジャングルに生息するキジの一種「セキショクヤケイ(Red Junglefowl)」が家畜化された結果であることが示されています。
しかし一方で、その家畜化の時期については諸説あり正確に特定されていません。
そこで研究チームは今回、世界の89カ国にある600カ所以上の遺跡から発見されたニワトリの遺骨を収集し、再分析。
ニワトリの骨格から埋葬場所、骨が見つかった地域の社会・文化といった歴史的背景なども綿密に調査しました。
その結果、最も古いニワトリの骨は、タイ中部にあるバン・ノン・ワット(Ban Non Wat)遺跡のもので、年代は紀元前1650年〜1250年頃と判明したのです。
これは、文献に記された記録などを根拠に先行研究が示してきた年代よりはるかに最近のことです。
チームはまた、家畜化の原動力となったのは、東南アジアに伝来した「稲作」であると指摘します。
バン・ノン・ワット遺跡ではかつて、陸稲(りくとう、畑で栽培される稲)の耕作が行われていました。
陸稲は、水田で栽培される水稲(すいとう)とは違い、季節雨の浸み込んだ高地の土壌に稲を植えます。
そこで出来た米粒は、周囲の森にいたセキショクヤケイの格好の餌となったでしょう。
こうして、ヤケイ(野鶏)と人との接触が次第に緊密なものとなり、家畜化への道を切り拓いたと考えられるのです。
そして、約3600年ほど前に家畜化されたニワトリが誕生したと推測されます。
その後、東南アジアから南アジア、中国、そして現在のイランやイラクへとニワトリが伝わったのは、約3000年前と見られています。
では、ヨーロッパやアフリカへは、いつ頃ニワトリが伝わったのでしょうか?