マタタビ反応は蚊よけのためだった?!
ネコがマタタビを好むことは江戸時代から言及されています。
また、これまで紹介した研究によって、何がネコのマタタビ反応をもたらすのかも明らかとなりました。
しかし、そもそもなぜ完全肉食であるネコ科の生き物に植物であるマタタビに反応する本能が備わったのでしょうか。
同研究グループでは、ネコがマタタビに反応するようになった理由についても調査を進め、意外な理由が関係していることを突き止めました。
ネコのマタタビ反応は「蚊よけ」のためだったというのです。
ネコのマタタビの成分を体に擦りつけている
マタタビ踊りと言われるネコのマタタビ反応、地面にごろごろ転がるような動作を思い浮かべる方が多いと思います。
しかしそれは、ネコにマタタビを与えるときにマタタビを地面に置くためだったのかもしれません。
同研究ではマタタビ反応を引き起こすネペタラクトールを壁や天井に設置するという実験が行われました。
すると、ネコはネペタラクトールに体を擦りつける動作を見せたものの、地面に転がる動作は見せませんでした。
つまり、ネコはマタタビに気持ちよくなって寝転がっているわけではなく、マタタビに含まれるネペタラクトールを体に擦りつけることが目的だったのです。
ネペタラクトールには「蚊よけ」の成分が含まれていた
それではネコは何のためにネペタラクトールに体を擦りつけているのでしょうか。
そこで注目されたのがネコがマタタビ反応と同様の反応を示すキャットニップです。
キャットニップは蚊よけのハーブとして知られており、キャットニップに含まれるネペタラクタンには蚊の忌避効果が認められています。
そこで、ネペタラクタンによく似た成分であるネペタラクトールについて蚊への効果を調べたところ、蚊に対する忌避効果と殺虫効果が認められました。
マタタビの葉を噛むことで効果UP!
また、ネコはマタタビ反応の最中、マタタビの枝や葉を噛むことでも知られています。
わが家の飼いネコも寝転がったりするよりマタタビの枝を嚙み砕いてしまうことが多く、なぜこのようなことをするのか不思議に思っていました。
「食べてしまうのでは」といつもハラハラしながら見守っていますが、本当に齧って傷をつけるだけで、飲み込んだりすることは全くないのです。
実は、この行動にもマタタビの「蚊よけ」を促す理由がありました。
ネコに噛まれて傷ついたマタタビの葉は傷ついていない葉とは蚊に対する有効成分の組成が異なるのだと言います。
傷ついたマタタビの葉から得られた有効成分は、傷ついていない葉の有効成分と比べると、蚊の忌避効果の即効性が高くなっていたとのこと。
つまり、ネコは自らマタタビを傷つけて体に擦りつけることで「蚊よけ」の効果を高めていたことが明らかになりました。
ネコと蚊の関係
ここまで読んで「なぜネコはそんなに蚊を嫌がっているの?」と疑問に思う方もいるかもしれません。
しかし実はネコは蚊に刺されることで命を失う危険性すらあります。
問題となるのは蚊が媒介する寄生虫「フィラリア」です。
イヌに寄生することがよく知られているフィラリアですが、ネコにも寄生することがわかっており、呼吸困難などで死に至ることもあるのだそうです。
飼いネコの10匹に1匹がフィラリア幼虫に感染していたというデータもあります。
ネコにとってマタタビ反応が命に関わるフィラリア感染を防ぐ手立てと考えるなら、ネコ自らが本能的に行うようになったのも頷けますね。
とはいえ、ネコのマタタビ反応にはまだまだ謎が多くあります。