腸呼吸はどんな仕組み?
一部のカメは確かに、お尻の穴を使って呼吸できますが、厳密にはカメのお尻の穴は「総排泄腔(そうはいせつこう、cloaca)」と呼びます。
これは鳥類などでも同様ですが、生殖や産卵、排泄を一手に担う開口部のことです。彼らはうんちもおしっこも、性殖も全部同じ1つの穴を使っているのです。
なのでカメの行う腸呼吸は、「総排泄腔呼吸(cloacal respiration)」とも呼ばれます。
腸呼吸の基本的な仕組みは、次の通りです。
まず、カメは水中にいながら、総排泄腔を通して水を取り込み、内部にある一対2つの袋状の器官(bursae:嚢)に送り込みます。
袋の内部には、小さな突起状の乳頭(papillae)が生えており、これらが水に含まれる酸素を吸収して、体中の血流に拡散するのです。
こうしてカメは、水中にいながら酸素を体内に回すことができます。
そして、腸呼吸ができるのは、主に河川域に生息するカワガメです。
腸呼吸をするカワガメは、世界に十数種類が確認されており、その半数はオーストラリアに分布しています。
カクレガメ(Elusor macrurus)やノドジロカブトガメ(Elseya albagula)が、その代表です。
どういうメリットがあるのか?
腸呼吸の最大のメリットは、もうお分かりの通り、通常の呼吸方法では酸素を取り込めない環境でも酸素が吸収できることです。
例えば泥の中に潜るドジョウなども、腸呼吸を用いることが知られています。
あらゆるカメは肺呼吸を基本とし、空気を吸うために定期的に水面に顔を出さなければなりません。
しかし、水面に顔を出すのは、場所や環境によっては危険な行為となります。
たとえば、流れの急な河川ですと、水面に顔を出そうと浮上するだけで流される危険性があります。
また、水面に姿を見せることで、天敵であるワニや鳥類、大型の魚類に見つかりやすくなります。
そのため、水底にいながら酸素を取り込める腸呼吸は、カメにとって非常に有効なのです。
とくに、こうしたリスクは産まれたばかりの子ガメで最も大きくなります。
ですから一般的に、子ガメは親ガメより腸呼吸に優れており、水面に頻繁に出てこれるようになるまで、腸呼吸に頼りながら、水底で多くの時間を過ごします。
中には、子ガメのときには腸呼吸ができて、成熟するとその能力を失う種もいるそうです。
では反対に、腸呼吸のデメリットとしては何が挙げられるでしょうか?