巨大ジェットの初の3Dマッピングに成功!
巨大ジェットは、過去20年にわたり研究されてきましたが、専用の観測システムがあまりないため、検出自体が困難になっています。
そもそも厚い雷雲の上で発生する放電現象のため、普通の稲妻のようには簡単に地上から観測できません。
しかし、本研究主任のレヴィ・ボッグス(Levi Boggs)氏は、同僚の研究者から、2018年5月14日に米中西部オクラホマ州で市民科学者が撮影した巨大ジェットについて教えられ、その調査を開始しました。
幸運なことに、観測されたオクラホマの巨大ジェットはさまざまな観測施設の近くで発生していて、超短波(VHF)雷マッピングシステム、2基の次世代気象レーダー(NEXRAD)、静止気象衛星(GOES)ネットワークの利用範囲内でした。
そこで、これらの利用可能なデータを組み合わせることで、史上初めて、巨大なジェットの3次元的なマッピングに成功したのです。
データ解析の結果、オクラホマの巨大ジェットは、雲の頂上から高度80キロの電離層(宇宙の下端)まで伸びており、両者の間を電気的に直接睦びつけていました。
その間に伝搬した電荷は、約300クーロン(coulomb、電荷の単位)に達すると推定され、これは一般的な稲妻が約5クーロン以下の電荷しか流さないことを考えると、きわめて強大です。
(クーロン:電荷量のことで、1 アンペアの電流が1 秒間に運ぶ電荷量が1 クーロン。雷は夏より冬のほうがこの電荷量は大きい)
また、巨大ジェットの構造的には、比較的低温(摂氏204度)のプラズマストリーマーと、非常に高温(摂氏4426度)のリーダーと呼ばれる部分から成っていました。
プラズマストリーマーは、高度22~45キロ付近で検出され、VHF(超短波)帯の電波を放っており、より強い電流であるリーダーは、高度15~20キロの雲頂付近に留まっていました。
巨大ジェットがここまで詳細なレベルで観測されたことは、過去に例がありません。
VHF(超短波)が巨大ジェットのどの位置で発生するかを特定したのも、今回が初めてです。
その一方で、巨大ジェットについて、まだ多くの疑問が残されています。
たとえば、一般的な雷が、雲から地上に向かう下向きや、あるいは雲の中で横向きに発生するのに対し、なぜ巨大ジェットが上向きに発生するのかは解明されていません。
ボッグス氏は、これについて、「何らかの要因で電荷が地上に向かうのが妨害されていたり、雲の中での横向きの流れがブロックされているのではないか」と推測しています。
それを支持するデータとして、オクラホマの巨大ジェットの観測時には、下向きの通常の落雷がほぼ発生していませんでした。
これは、雲から地面へと向かう放電が抑制される何らかの条件が整っていたことを示唆します。
今回、3次元マッピングに成功した巨大ジェットが、その発生メカニズムの謎を解く鍵となるかもしれません。